「遙 洋子の「男の勘違い、女のすれ違い」」

売れない、の正体は「価格不信」

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2009年10月9日(金)

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 景気は、人が何を買うかに如実に反映するという。それを実感するのは私の場合、家具だ。

 かつてバブリーな時代、ヨーロッパ輸入家具店に足を運び、夢を買うかのように革張りソファーやイタリアモダンのカラフルなキッチンに目を奪われた。ひとつ100万円もする椅子を自慢げに友達が自慢していたのもその頃だ。

 その後、国内ブランドの上質な家具や、あるいはオーダーメイドの家具など、どちらも数十万単位での買い物になった。バブリーな時代よりゼロがひとつ減ったことになる。当時はその価格でも「手堅い」と自分では思っていた。

 そして今。イケアというスウェーデンからやってきた家具販売店が話題だ。行ってみると休日だったせいか駐車場から店内に入るまでにすでに入店人員規制がかかり、巨大な倉庫を思わせるビルに入るための長蛇の列ができていた。

 入店してびっくり。その安さだ。多くの見栄えのする家具が数万円単位で揃う。ここでまたゼロがひとつ消えた。

 もちろん既製サイズなのでオーダーメイドのような間取りのジャストフィットはない。

 オーダーメイドの気持ちよさを知る私は参考までにインテリア業者に見積もりを出してみてもらった。壁一面の本棚で60万円と言われた。イケアでは壁一面揃えて本棚に扉までつけても価格はその4分の1で済んだ。

 「そりゃ混むワケだ」と実感した。

 ここ数十年を振り返ると、私自身の買い方も百万単位から数万単位まで転がり落ちた。

 景気が悪いから人は安い家具に走るのだろうか。私はそうは思わない。私はイケアにたどりつくまでにいくつもの業者にそれぞれ見積りを出してもらった。

 クローゼットの中の棚を作るのに20万円!の見積もりだったり、私が購入した1500円の鏡を壁に取付けるのに取付料2万円だったり、絵画をぶら下げるためのピクチャーレールを作るのにある業者は30万円といい、別の業者は半額の15万円だった。

 ちなみにホームセンターでピクチャーレールの価格を見ると1本3000円ほどだ。洗面所のカーペットを頼むと、ある業者は15万円だといい、ある業者では3万円だった。まったく同じメーカーの同じ商品なのに!である。

 バブリーの時代や、上質な家具とオーダーメイド家具の価格がそう変わらない時代だとその見積りに驚かなかったかもしれない。だが、数万円で見栄えのいい家具が登場した現在では、その価格設定の統一のなさはとてつもなく“ぼったくり”に映る。シロウトがフラッと買い物をするには危険な市場だ。

 もちろん人件費は家具がどれほど安かろうが別枠で必要だ。だが、あまりに極端な価格差が「それなら自分で作ろう」と人をイケアに走らせる。

 そこでは家具を倉庫から搬出するところから組立てまで客の仕事だ。そうすることで1500円の鏡は1500円として存在し、客は納得するのだと我が身を振り返り思った。

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著者プロフィール

遙 洋子(はるか・ようこ)

遙 洋子

大阪府出身。タレント・エッセイスト。関西を中心にタレント活動を行う。東京大学大学院の上野千鶴子ゼミでフェミニズム・社会学を学び、その体験を綴った著書『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』(ちくま文庫)を執筆。これを機に、女性の視点で社会を読み解く記事執筆、講演などを行う。近著に『主婦たちのオーレ!』(筑摩書房)、『女ともだち』(法研)など。公式ウェブサイトはこちら



このコラムについて

遙 洋子の「男の勘違い、女のすれ違い」

時事問題を独自の視点で切り込むタレントでエッセイストの遙洋子氏が、男と女が食い違うワケをユニークな視点で解説していく。

【編集部から】
2010年4月から、遙洋子さんの新コラム「遙なるコンシェルジュ『男の悩み 女の嘆き』」が始まりました。こちらもご覧ください。

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