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考え方を教える「総合医」が経済を元気にする

普通の人のための経済学:姉歯暁×飯田泰之【後】

2009年11月11日(水)

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 今回、駒澤大学経済学部の設立60周年を記念して、東京大学名誉教授の宇沢弘文氏が「経済学と人間の心」をテーマに講演を行います。また、NBOの皆さんにはおなじみ「シノドス」の芹沢一也さん、荻上チキさん、飯田泰之さん(駒澤大学経済学部准教授)が、関西学院大学助教の鈴木謙介さんと「不思議の国ニッポンの経済・文化・社会」と題してシンポジウムを開きます(11月14日、入場無料、詳しくはこちら)。

 ジョセフ・E・スティグリッツの師としても知られ、数理的な面から経済理論の研究によって世界的な権威となりながら、公害などの社会問題の解決を目指し、一転、公共経済学へ進まれた宇沢氏。連載「経済学っぽく行こう!」でもご存じの通り、「知」の公共化を旗印に掲げてきたシノドス。目的ではなく道具としての「経済学」を語る、興味深いイベントになりそうです。仕掛け人の、姉歯暁(あねは あき)・駒澤大学経済学部教授、そして飯田泰之さんに「普通の(あまり経済学を知らない)人」を代表するかたちで、お話をうかがいに行きました。(Y)

姉歯 暁(あねは あき)
駒澤大学経済学部教授

東京都世田谷区生まれ。國學院大學大学院博士後期課程満期退学。長野大学、駒沢大学非常勤講師、文部省特別研究員、県立新潟女子短期大学生活科学科講師・助教授、イギリス・Essex大学社会学部客員研究員、大妻女子大学社会情報学部助教授を経て2007年より現職。専門は経済学(信用論・消費経済論)。著書は『コルチェスター日記-イギリスのひと、暮らし、福祉』(野島出版)『現代サービス論』(創風社)『現代の労働・生活と統計』(北大図書出版社)他。翻訳書は『グローバリゼーションとはなにか』(こぶし書房)、『クレジット・クランチ』(昭和堂)が2009年12月ごろ出版予定。「なお、例の姉歯元一級建築士とは、ルーツをたどれば重なるでしょうが、親戚関係でもなく面識もないので、あしからず」。

飯田泰之(いいだ やすゆき)
駒澤大学准教授

1975年東京生まれ。東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。現在,内閣府経済社会総合研究所、財務省財務総合研究所客員研究員を兼務。専門はマクロ経済学・経済政策。主な著作は『経済学思考の技術 ― 論理・経済理論・データを使って考える』(ダイヤモンド社)など。近著は『脱貧困の経済学-日本はまだ変えられる』(雨宮処凛氏と共著、自由国民社)

姉歯 「普通の人のための経済学」といえば、私の母はですね、80代なんですが、同世代や60代、70代のお友達が集まって、今、経済学の勉強会をしているんです。

Y 素晴らしい・・・!

姉歯 私は時々呼ばれて、タダでいろいろな説明をやらされるんですけどね(笑)。勉強するためのきっかけは、言い方が悪く聞こえますが、非常に単純なんですよ。何で介護保険が問題なのか。何で年寄りの後期高齢者の医療制度が、何でホームレスが、と。自分の身近にある切実な問題なのに、何でそうなるのかが分からない。ならば、それを知るためには経済学を勉強しなきゃというふうに、おばあちゃまたちが。

Y すごいですね。

まさしく「無料の昼食はない」

姉歯 すごいんです。最初2人ぐらいだったのが、今10人ぐらいになって、もう私抜きでもどんどん勉強しているんですけど。

Y 自分の問題だ、と考え、そのための道具として自ら経済学を学ぼうとしていらっしゃる。テーブルに料理が運ばれてくるのを、お皿叩きながら待つんじゃなくて。

姉歯 これこそ「無料の昼飯はない」ですね。自分で考えることが、ダマされないための基本ですが、そのためには、知識を、時間やお金を使って手に入れる必要がある。

飯田 いま、題材はほんといくらでもありますよね。おばあちゃんつながりで、昨日、ちょっとうちのおふくろとしゃべっていた話なんですが、近所のお店で結構悪くないキュウリが5本99円で売っていまして、しかも国産なんですよ。これはやばいだろうと。これで農業の再生とか言っても、もう不可能だと思うんです。

 じゃあ、何で国産のキュウリが99円にならなきゃならないかといったら、そうじゃなきゃ売れないからなんです。すごく近視眼で的には「中国産が入ってきて云々」という話に落ち着きがちですが、余裕があればわざわざ海外産冷凍野菜なんて買わないわけです。ニンニク、タマネギなどだともっとはっきりしてきますけれど、低価格品とちゃんとした国産品は別の野菜だと思えるくらい違う。つまりこれは、まったく経済の問題なんです。

 効率的ならば誰も効率は気にしない。懐に余裕があれば誰も最近みたいに細かいことは言わないでしょう。もっと言うと経済学の機能が十全に働いている状態とは、経済学を誰もが「どうでもいいよ」と思っているときなんです(笑)。

Y そうか、経済学は「みんなが欲しいけれど行き渡らない、貴重なものをどう分配するか」を考える学問ですものね。行き渡っていたら用がない。

飯田 姉歯さんのお母様が「経済学を学びたい」とおっしゃるのは、やはり厳しい時代なんだと。

姉歯 人間、実際に我が身に起こっているのに、気がつかないことは多いんです。なんだか息苦しいとか、なんだか不安だとか、ぼやっとは感じるんだけど、そのぼやっとしたカスミの向こうに何があるのか、あるいは自分が何でこういう意識を持つのかを理解するためには、いろいろな経験や学習が必要なんですね。私は、その時に、やっぱり経済学が軸となるべく役目を果たさなきゃいけないと思うんです。

 でも、経済学は一本立ちしたがるクセがあって、総合的にいろいろなもの、例えば社会学や政治学などと連携・統合して、ビジョンを示すというのが苦手な側面もありますよね。でも、経済学を使って、「自分が今持っている意識はどこから来たか」という説明はできるし、それは経済学をやる身にとっても、大変に面白いはずなんですよね。

 戦争が起こる理由だって、民族間の対立とか宗教戦争なんていわれているけど、その根底にあるのは経済ですからね。そういう問題を扱うのも経済学なんだって分かってもらうためには、「経済学というのは、お金の計算だけじゃないんだ」と。お金の計算なんていうことをやるのも、実際には人間関係を明らかにするためにそれを使うっていう話なのであって。経済学って、本当は血が通った最も人間的な学問だと思っています。

先端医療から、総合医へ

Y だからこそ専門性の中に一番閉じ込めちゃいけないというお話になるのかもしれないですね。そうなると、考え方を正しくやさしく、普通の人に伝える仕事が大事になる。

姉歯 そうです。で、普通の人のために経済学を分かりやすく伝え、実際の生活に使うには、経済学を修めた「総合医」が出てきませんと。そのためには、少なくとも、経済学者はもっと外を見ないといけない。今回、講演をお願いする宇沢先生は、経済学をベースにどんどん外に足を踏み出して、「総合医」のフロントランナーとして走ってこられた方ですね。

飯田 自分自身もそういうところがあるので本当は偉そうに言えないんですけれど、主流派経済学の問題点として、経済モデルの新規性とか、理論の新規性というのを、過度に重視してしまうきらいがありますね。その一方で、ごく一般的な治療法の確立に精力を注ぐ人がだんだん減ってきてしまったと。

Y 先端医療のほうが町のお医者さんよりやりがいが大きい、みたいな。

飯田 そうです。100%確実な処方箋を待っている間に死んでしまっては何にもならない。現時点で確度の高い理論,そして経験則があればまずは試してみないといけません。

 これは私の持ちネタになりますが、日本では経済学の政策利用はめったにされません。そういう状況では,いわゆる総合診断なんて必要ないんですよね。クライアントから要望されてない。その環境下で、日本の経済学は極めて変わった発展を遂げた。それはそれで面白いのですけれど、「いよいよ経済学で、日常のさまざまな問題の治療に力を発揮してもらわねばなりませんよ」というときに、何も提供できてこなかったわけですよね。

 ただ、これは日本における人文・社会科学共通の問題です。そして、ここまではいつも私がしている話です。その中でこれからの経済学がやらなければならないことは何なのか。

コメント2件コメント/レビュー

これから経済学を勉強しようかなと思っている素人ですが、5本99円の国産きゅうりを危ないと言い切ってしまうことって、「明るい場所で落し物を探す」行為と変わらないんじゃないですか?日本は世界最大の農薬消費国だったりもしますし。夏にアジアのとある途上国(といってもBRICSと同レベル)に旅行しましたが、食の豊かさは感動的でした。しかも安いこと安いこと。日本じゃ高級オーガニックとしてしか買えない様な食材が庶民の日々の食卓にふんだんに並ぶ国と、農薬まみれの味の薄いきゅうりしか手に入らない国と、どちらが豊かといえるのか?そんなことも経済学的に説明していただけると楽しいかもしれませんが・・・。(2009/11/11)

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「考え方を教える「総合医」が経済を元気にする」の著者

山中 浩之

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス副編集長

ビジネス誌、パソコン誌などを経て2012年3月から現職。仕事のモットーは「面白くって、ためになり、(ちょっと)くだらない」“オタク”記事を書くことと、記事のタイトルを捻ること。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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これから経済学を勉強しようかなと思っている素人ですが、5本99円の国産きゅうりを危ないと言い切ってしまうことって、「明るい場所で落し物を探す」行為と変わらないんじゃないですか?日本は世界最大の農薬消費国だったりもしますし。夏にアジアのとある途上国(といってもBRICSと同レベル)に旅行しましたが、食の豊かさは感動的でした。しかも安いこと安いこと。日本じゃ高級オーガニックとしてしか買えない様な食材が庶民の日々の食卓にふんだんに並ぶ国と、農薬まみれの味の薄いきゅうりしか手に入らない国と、どちらが豊かといえるのか?そんなことも経済学的に説明していただけると楽しいかもしれませんが・・・。(2009/11/11)

経済学よりも深い経験のほうが、いまでも現実の役に立つ。複雑系の経済学が今後の進展方向だと思う。新古典派などニュートン力学である。複雑系は量子化学にたとえればよいか。(2009/11/11)

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川野 幸夫 ヤオコー会長