「遙 洋子の「男の勘違い、女のすれ違い」」

企業が腐る時ってそんなもんだ

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2009年12月11日(金)

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 最近引っ越しが続く。年末を慌ただしく過ごしている中、この秋から冬への短期間で2度の引っ越しを体験することで、引っ越し業の事情が見えてきた。

 まず新築マンションの場合、一斉に居住者の引っ越しが重なるため、一業者が一手に請け負うことが多い。その場合もちろん大手業者だ。引っ越し業の営業スタッフほど個人の腕がモノを言うものはないといつも感じてきたが、今回もそうだった。

 「うちに任せてくださいますと当日なにかありましても融通がつけやすいんです。なんせ混み合う引っ越しですので。ぜひ」と懸命に私に訴えるのだった。

 この“懸命”というのに私は弱い。私も昔、アルバイトで営業をしたことがあるが、どれほど頼んでもなかなか商品は売れるものでもない。それをクスッと笑って買ってくださるお客様がどれほど嬉しかったことか。その“クスッ”の意味とは、「別にいらないけど、君がそこまで頼むから買ってあげる」というクスッなのだった。

 「じゃあ、お願いします」と頼むと、その営業はさらに喋った。

 「エアコンいりませんか? うちエアコンも売っているんです」

 なぜ引っ越し屋がエアコンを売ることになったのかの事情を営業はまた懸命に喋った。

 「ノルマがあるんですか?」
 「はい」

 彼はエアコンを買ってもらうために、配管パイプを隠す化粧カバーをサービスすると訴えた。

 「いずれ買うものだけど、私が後に大型電気店でその商品の値段を見たときに、騙されたと思わずに済む価格なら購入します」

 「安くします。化粧カバーもつけます」と彼はまた言った。

 私はエアコン2台と引っ越しをその業者に頼むことにした。

 しかし引っ越し当日、私は現場で順番を待つはめになった。「融通とは他人に融通をつけることなのですか」と聞くと、やれ予約係のミスだとか管理人のミスだとか大きい組織ゆえに責任は曖昧になった。

 やがてエアコンを取り付ける電気工事スタッフが来て言った。

 「パイプのカバーは1本だけサービスと発注書に書かれています」

 エアコン2台だと、ベランダ側に2本、部屋側に2本の合計4本が必要だった。

 「たった1本のサービスでじゃあとばかりにエアコンを2台購入すると思いますか?」

 怒る私にスタッフは「そりゃそうですよね」と納得し、パイプをつけてくれることになった。いぶかしんだ私は大型電気店に行き、エアコンの値段を見て思った。

 「騙された」

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著者プロフィール

遙 洋子(はるか・ようこ)

遙 洋子

大阪府出身。タレント・エッセイスト。関西を中心にタレント活動を行う。東京大学大学院の上野千鶴子ゼミでフェミニズム・社会学を学び、その体験を綴った著書『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』(ちくま文庫)を執筆。これを機に、女性の視点で社会を読み解く記事執筆、講演などを行う。近著に『主婦たちのオーレ!』(筑摩書房)、『女ともだち』(法研)など。公式ウェブサイトはこちら



このコラムについて

遙 洋子の「男の勘違い、女のすれ違い」

時事問題を独自の視点で切り込むタレントでエッセイストの遙洋子氏が、男と女が食い違うワケをユニークな視点で解説していく。

【編集部から】
2010年4月から、遙洋子さんの新コラム「遙なるコンシェルジュ『男の悩み 女の嘆き』」が始まりました。こちらもご覧ください。

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