「遙 洋子の「男の勘違い、女のすれ違い」」

企業や消費も「気持ち」で動く

支えてくれた人たちへ感謝を込めて〜次回から新企画

バックナンバー

2010年3月26日(金)

1/2ページ

印刷ページ

【編集部から】

2010年4月から、遙洋子さんの新コラム「遙なるコンシェルジュ『男の悩み 女の嘆き』」が始まりました。こちらもご覧ください。

 最近私は2冊の新刊本を出した。『死にゆく者の礼儀』と『気難しい女性との上手な接し方』というエッセイだ。前者は老いと死を直視する生き方を提言したもので、後者はこの日経ビジネスオンラインのエッセイをヒントに、職場での管理職の悩み解決を願って書き下ろしたものだ。

 私が趣味で続けているクラッシックバレエスタジオでのこと。

 「近々本を出します」
 「あらそう」

 という先生と私との会話の直後からそれは始まった。

 「遙さんが本を出します。買う人!」という掛声がレッスンの始まる度にスタジオに飛んだ。それは発売日まで毎週続いた。

 「はーい」と手をあげながら皆で笑い合う光景に、愉快な会話以上のものを私は感じなかった。

 ところが、実際発売されると、小学生から年配までの生徒たちがこぞって本を購入してくれ、私にサインを求めてくれた。

 私の本が読みたくて購入した人はごく少数のはずだ。なんせテーマは「老い」と「職場」だ。小学生が手にするにはあまりに無理があった。また、対象も若干ずれている。「死を意識する人」や「現役ビジネスマン」が、クラッシックバレエレッスンに来られるだろうか。

 ターゲットも、テーマも、あまりにも異なる人たちが、なぜ、本を購入してくれたのか。なぜ毎週のように掛声がかかったのか。その理由はひとつだ。

 “気持ち”だ。

 ああ応援してやりたい、という気持ちが掛声と購入を後押ししたのだ。不景気だ、消費しない若者が増えたとマスコミは騒ぐが、そこに“気持ち”があれば、人は買い物をしてくれる。小学生が、「『死にゆく者の礼儀』ください」と言う声を、私は感慨深く聞き入った。

 こんな子供でも、人間社会の付き合い、というものをこうやって努めてくれている。申し訳なさと有難さをしみじみと味わった瞬間だった。

 昔、私は自分が購入した物件の不良個所が気に入らず、販売担当者に苦情を言ったことがある。不良個所の修繕費用を私は求めたのだった。もちろん企業が容易に“不良”だと認めたり費用を出すとは私も思っていない。だが、だからといって泣き寝入りも嫌だった。

 担当者は、予想した通りの回答を企業から持ってきた。当然私はそれを却下するということが繰り返された。私はその都度、「なぜ私が辛いかというと」という説明をした。

 話す度に、私の気持ちがじんわりと担当者に届く感触はあった。だが、いくら担当者が感じ入ってくれても、企業が下す判断は別モノであることも理解できていた。

 ところが数カ月後のある日、その担当者が自社企業に対してブチ切れた。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。


関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

著者プロフィール

遙 洋子(はるか・ようこ)

遙 洋子

大阪府出身。タレント・エッセイスト。関西を中心にタレント活動を行う。東京大学大学院の上野千鶴子ゼミでフェミニズム・社会学を学び、その体験を綴った著書『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』(ちくま文庫)を執筆。これを機に、女性の視点で社会を読み解く記事執筆、講演などを行う。近著に『主婦たちのオーレ!』(筑摩書房)、『女ともだち』(法研)など。公式ウェブサイトはこちら



このコラムについて

遙 洋子の「男の勘違い、女のすれ違い」

時事問題を独自の視点で切り込むタレントでエッセイストの遙洋子氏が、男と女が食い違うワケをユニークな視点で解説していく。

【編集部から】
2010年4月から、遙洋子さんの新コラム「遙なるコンシェルジュ『男の悩み 女の嘆き』」が始まりました。こちらもご覧ください。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン