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社員に赤字を怖がらせない。だから売れるCDを出せるんです。

~河野章宏の音楽ビジネス革命・B面~

  • 和田 一成

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2011年1月24日(月)

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 ツイッターを中心に反響を呼んでいる、日経ビジネスアソシエ1月18日・2月1日合併号掲載の河野章宏・残響社長インタビュー。2004年、資金10万円でスタートした音楽ビジネスが、この逆風の中昨年(2010年)に5億円の年商を稼ぎ出すまでの、その方法論というか、思想を熱~く語っていただきました。

 おかげさまで普段はあまりアソシエを読んでいないと見受けられるお客さまにまで、お買い上げいただいているようです。実はこの日のインタビュー、2時間を超える長丁場でした。誌面の都合で泣く泣くカットした部分が7割近くもあったのです。そこで、ご愛読いただいた読者の皆さまへの感謝の気持ちを込めて、お送りいたします。「河野章宏の音楽ビジネス革命・B面」。

(聞き手・高橋智樹=音楽ライター、写真・大槻純一、編集・構成 和田一成:日経ビジネスアソシエ編集部)

高橋智樹
1973年生まれ。女性週刊誌、洋邦音楽誌の編集部を経てフリーに。邦楽ロック誌『ROCKIN'ON JAPAN』はじめ紙媒体/Web問わず執筆中。

「やってもいいけど、売れるとは保証できない」。それでどうして手を組める?

河野章宏(こうの・あきひろ)
1974年生まれ。岡山県倉敷市出身。20代はミュージシャンをやりながらフリーター時代を過ごし、2004年に自主レーベル「残響レコード」を立ち上げる。
 10万円の資金からスタートし、2010年の決算ではグループ年商5億を売り上げる。ロックバンド「te'」のギタリストとしても活躍中。著書に『音楽ビジネス革命』(ヤマハミュージックメディア)。

――初めての著書『音楽ビジネス革命』の反響は?

 いやあ、すごい反響ですよ。音楽業界の人はもちろん、全然関係ない人からも結構リアクションが届きます。「やる気が出ました」とか「自分でもやれることをやろうと思います」とか。あと、「講演会やりませんか?」とか「学校で講義やってください」とか。まさか自分が専門学校で先生やると思わなかった(笑)。アップルストア銀座でやった講演会も、アップルストアの方がたまたま僕の本を読んだらしくて、連絡を取ってきてくれたんです。

――でも実際、レーベルの運営方針にしても何にしても、あの本に書かれていたことは、突拍子もないことでも何でもないですよね。

 そうですね。結局、「当たり前のことを当たり前にやろうよ」っていうことしか書いてないですよね、本当は。

――河野さん自身、今のバンド(te')を始めるまではインディー・レーベルを渡り歩いていたわけで。インディー・レーベルって、出版界で言うところの自費出版に近いもの。自費出版って残念ながら、書き手の利益になるようなものではないことがほとんどなんですが…。

 インディー・レーベルも、ほとんどそうです。よっぽど売れなければ儲からないですよ。まあ、バンドマンって、基本的には僕も含めて頭が良くないんです(笑)。世の中で真っ当に生きていくことのできないやつが「バンドで喰っていこう」ってことを考えるんです。基本的に社会常識もないし、何をして生きていけばわからない、っていう人間がすごく多くて。みんな意外と単純で、ちょっと美味しい話があるとすぐそこ(のレーベル)でリリースしたがる、みたいなのがあって。

 特に僕らの若い頃はそんなにインディー・レーベル自体も盛んじゃなかったので、ちょっとでもCDが出せる機会があればすぐ飛びついちゃう、みたいな感じがあったんですよ。でも、今思えば「アホだな」と思って(笑)。ちゃんと一歩引いて考えればいいのに。

 制作費は基本的にはバンド持ちで、CDの流通をやってくれるだけですから。制作費として在庫を買い取り、みたいなところもあるんですけど、それって単純にレーベルが儲かるだけなんです。僕がいたレーベルは今も続いているんですけど、なかには2ちゃんねるを見ると「詐欺で有名なレーベル」みたいな扱いになっているところもありますよ(笑)。

――リスナーとしての問題意識と、そういうバンドマンとしての体験を通した問題意識とが河野さんの中で一体になって、「作る側と買う側の間はどうあるべきか」から、すべてが始まっていくわけですね。

 おっしゃる通りですね。

――で、新たにte'というバンドを組んで、10万円を元手にレーベルを自分で立ち上げてCDを出すわけですけど。その時はもう「どこかのレーベルから」ということは考えなかった?

 いや、考えてはいたんですよ。いろんなコネクションもあって、いろんなレーベル
から話も来たんですけど、基本的には前向きじゃないんです。「やってもいいけど、売れる保証はできない」とか。所詮は「他人の音楽」と思ってる人ばっかりで。「そういう感じだったら絶対に広がらないだろうな」と思って。

 それで、この際だから思い切って自分でやろう、みたいな感じで始めたんですよね。2003年から2004年にかけてぐらいのことです。それでバイトで貯めた10万円でte'のCDをリリースしたら、それがすごい売れて、50万円ぐらいになったのかな? そうしたら友達のバンドが「うちのも出してよ」みたいな感じになった。

会社の売上のために作られた音楽を買いたいですか

――10万円で、CDって何枚ぐらい作れたんですか?

 500枚ぐらいですね。ディスクユニオン(注1)の下北沢店のインディーズ・コーナーで友達が働いていたので、そこに置いてくれたんです。最初は20~30枚ぐらい置いてたら、飛ぶように売れて。結局、ディスクユニオンのチャートで何週連続かで1位になって。

 そしたら、たまたまそれを見たタワーレコードのバイヤーの人が、僕らのCDを買って聴いてくれて、直接連絡くれたんですよ。「タワー全店に置きませんか?」って。で、タワー全店に置かれたら、一気に500枚ぐらい売れちゃって。本当は300枚ぐらいしか在庫なくて、「500枚納品してください」「いや、そんなにないですから」「いやいや、500枚作ってください」みたいなやりとりをして、結局追加プレスかけて500枚作りました(笑)。「すごいなあ!」みたいな。

(注1)ディスクユニオン:首都圏でチェーン展開しているCDショップ。世間の売れ筋よりは、ややマニアックな品揃えでロック好きな音楽ファンから支持を集めている。

――で、そのお金を元手に友達のバンドのCDをリリースして?

 そうですね。それもまた売れて。それはもう500枚しか作らないって決めてたから、すぐに在庫がなくなって…っていう話を以前に働いていたDTPデザインの会社にいたときの社長に話してたら、「お前、ちゃんと会社としてやれば、意外とうまくいくんじゃないか?」と。よくわからないんですけど、「お前には経営のセンスがあるから」って言われて。最初、1年くらい僕は断ってたんですけど「1千万なくなってもいいよ」って言われたので「じゃあやろうかな」って(笑)。

――著書の中の言葉で「音楽業界を理解しようと思わない」というのが印象的だったんですが、それは後付けでも何でもなくて、レーベル設立の時から貫いてたっていうことですよね。

 そうですね。本当に「音楽業界に入りたい」とかも思ってないし。今は「革命児だ」みたいなことを言われてますけど、そんなつもりもさらさらないし。「単なる音楽好き」でありたかっただけなんですよね。ビジネス的に言うと、ミュージシャンとお客さんの関係性だけが大事で。

 基本的には、「間にいる人は、いい意味でどうでもいい」と思ってます。

 音楽業界の宣伝媒体だったりレコード会社だったりっていうのはどうでもいい。だけど、僕たちの音楽を現状伝えていくには、その辺の方たちとうまくつき合うと広がりやすい、っていうことがだんだんわかってきて一緒に仕事し始めました。その中にも、少数だけど心から同じ考えでいてくれている人もいるんだって言うのはわかってきました。

 レコード会社や宣伝媒体で働く方って、1つのミュージシャンが売れなくても他の売れているアーティストや取引のあるアーティストがいれば食べていけるじゃないですか。でも、ミュージシャンは1枚の作品が売れなければ次回はない。つまり、レコード会社や宣伝媒体は1つのアーティストに対して責任がないじゃないですか。1つのアーティストを一生懸命売って、売れなければ仕事をやめるって選択肢は基本的に考えてないですよね? そこに大きなモチベーションの差を感じるんです。

 ミュージシャンは1枚売れなければ終わる可能性が高いのが、音楽業界の構造ですからね。ミュージシャンは使い捨てじゃないんですよ。一人ひとりそれぞれ、人生があるんです。音楽業界の構造自体が、ミュージシャンの気持ちが理解されるようなものになっていないこともだんだんわかってきました。

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