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小野 浩(おの・ひろし)

米テキサスA&M大学准教授

小野 浩

米テキサスA&M大学社会学大学院准教授。米シカゴ大学社会学大学院博士課程修了、Ph.D.取得。ノーベル賞経済学者であるゲーリー・ベッカー教授に師事。ストックホルム商科大学准教授を経て2007年米テキサスA&M大学助教授、2010年から現職。専門は計量社会学,労働経済学。『American Sociological Review』『 Economics of Education Review』『 Journal of the Japanese and International Economies』などに論文掲載多数。



※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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経済学を人の行動に応用した先駆者、ベッカー教授を悼む

2014年5月7日(水)

 米シカゴ大学のゲイリー・ベッカー教授が、2014年5月3日(米国時間)にシカゴ市内の病院で亡くなった。83歳だった。ベッカー教授は1992年にノーベル経済学賞を受賞したのを始め、計り知れないほど数多くの業績を残してこの世を去った。

 従来、経済学や金融の分野に限られていた市場原理と価格理論を人間行動にまで適用した、シカゴ学派を代表する経済学者だった。教育、労働、差別、結婚、出産など、日常生活の範疇までにも頑なに適用した「ベッカー理論」は、政策にも幅広く影響を与えた。

 以下は私的な追悼になるが、筆者の知っていた「ベッカー先生」について触れてみたい。

合理的選択理論の第一人者

 筆者は1990年代に米シカゴ大学大学院で社会学を専攻した。大学時代は機械工学を専攻したこともあり、社会学とはそれまで全く縁がなかった。

 一方で筆者を受け入れてくれた社会学部側では、工学部出身だったら数学ができるだろうと判断したらしく、アドバイザーには同じく工学部出身で社会学に転進されたジェームス・コールマン先生(故人)をつけてくれた。コールマン先生は数理社会学の権威であり、同時に社会科学を通貫する「合理的選択理論」の研究でも大活躍をされた方だった。

 当時、合理的選択理論では、「社会学ではコールマン、経済学ではベッカーが第一人者」といわれていた。この2人の巨匠は、定期的に「ベッカー・コールマン・セミナー」を開催された。

 このセミナーは経済学、社会学、政治学など幅広い分野から合理的選択理論の最先端の研究が発表される場として有名になった。そしてコールマン先生を通じて、筆者はベッカー先生と出会った。

 シカゴ大学の経済学といえば、ノーベル賞受賞者が勢ぞろいしている場として有名だ。これだけ凄まじいブレーンが揃っている教授陣は、学生から見れば実に恐るべき存在である。極めて競争が激しい風土の中、経済学の教官はノーベル賞を受賞されてから「良い人」になると言われている。筆者がベッカー先生と知り合ったのはノーベル賞を受賞された後になる。受賞で和らいだのかどうかは分からないが、筆者の知っている範囲では、ベッカー先生は実に「良い人」だった。

 筆者の博士論文は、日本の受験戦争という現象に注目し、「受験戦争はペイするか」という問題をベッカー理論の中枢になる人的資本理論を使って分析した(詳しくは2013年2月15日掲載何年も浪人して難関大学を目指すのは、割に合うのか?を参照)。ベッカー先生には博士論文の指導教官として、大学院の最後の3年間にわたり大変お世話になった。

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