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高濱 賛(たかはま・たとう)

米パシフィック・リサーチ・インスティチュート所長/在米ジャーナリスト

高濱 賛

1969年米カリフォルニア大学バークレー校ジャーナリズム学部卒業、読売新聞社に入社。71年から6年間、ワシントン特派員として沖縄返還交渉、ウォーターゲイト事件、ロッキード事件などを取材報道。76年以降は政治部記者として中曽根派担当、自民党幹事長番、官邸・外務省・野党各キャップを経て、政治部デスク(次長)。92年社長直属シンクタンク、調査研究本部主任研究員(部長待遇)として主に日米関係を担当。下田会議、日韓フォーラムなどに日本側代表として参加し国際的な人脈を広げた。95年以降、母校カリフォルニア大学バークレー校に客員教授として招聘され、「日米報道比較論」を教える。98年から上級研究員(テーチング・フェロー)。同年から現職。「日米双方を見渡せる西海岸」を拠点に日米問題、米国の政治・経済・社会情勢を日本メディアに発信している。

◇主な著書
英語は8歳までにはじめなさい』(アスコム) 2007
マイティ・ハート 邦訳』(潮出版社) 2005
アメリカの内戦 邦訳』(アスコム) 2004

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

最近のトピックス

 昨夏2匹の子犬を飼い始めた。キューバ産のハバニーズ。兄弟の名前はモンテとクリスト。高級キューバ産の葉巻、「モンテクリスト」からとった。朝昼晩と3回、散歩させるのが日課になっている。その結果、私も歩くことになり、健康上極めてありがたいことなのだが、毎日となると億劫なときもある。

 日本の四季のようにはっきりと区切りがついているわけではないが、カリフォルニアにも四季はある。秋には樹木が紅葉し、葉が散り、1月下旬頃には新芽が出てくる様をこれほど実感できるのも子犬クンのおかげだ。3月上旬、今は梅と桃と桜の花が同時に開花している。3つの花を同時に愛でられるのもこの地での特権である。

アメリカ現代政治研究所

北朝鮮ミサイル爆発はトランプの妨害工作!?

2017年4月20日(木)

金日成の生誕150周年を祝う軍事パレードにはSLBM(潜水艦発射型の弾道ミサイル)が初登場した(写真:ロイター/アフロ)

4月30日で、トランプ政権が誕生して100日になります。

 ドナルド・トランプ大統領は、「100日計画」を掲げて就任しました。そのうち、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱やオバマケア(健康保険改正)見直しなどは就任初日に発表しました。経済・外交面では「米国第一主義」を掲げ、保護主義的・孤立主義的傾向を打ち出すそぶりを見せています。100日を振り返ってみて、トランプ政権の現状をどう評価しますか。

高濱:米議会の承認を必要としない大統領令を発令してTPPからの離脱や北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉・脱退を宣言しました。TPPは議会の承認なしに離脱できますが、NAFTAのほうはカナダ、メキシコとの再交渉が待っています。脱退するにはまだいくつものハードルがありそうです。

 オバマケア見直しは共和党の一部から反発を受けて挫折しました。メキシコとの国境に壁を建設する案も、関連予算がつかず宙ぶらりんの状態です。

 中間層を対象とする減税や課税簡素化、エネルギー・インフラ法改正など、立法を必要とする公約は全く手が付けられない状況です。

就任100日、内政の失敗を外交で挽回狙う

 内政がうまくいっていない中で飛び出したのが、シリア政府軍の空軍基地に対する電撃的なミサイル攻撃作戦でした。

 シリア政府軍が一般市民に対して化学兵器を使用したことに対して、なぜ、ミサイル攻撃で応じたのか。トランプ大統領自身はこう説明しています。「化学兵器の使用と拡散を防止、抑制することは死活的かつ重要な米国の国家安全保障上の利害に関わるからだ」

 しかもこの攻撃は、米中首脳会談の最中に行われました。折から朝鮮半島は緊張の度合いを高めています。4月15日に金日成生誕105周年記念日を控えて、北朝鮮は弾道ミサイルか、核の実験をやるのではないかと予測されていました。

 米国は韓国と合同軍事演習を実施する一方で、原子力空母カール・ビンソンやその警護にあたる巡洋艦などからなる空母打撃群(Carrier Strike Group)を朝鮮半島近海に転進させました。米国はそうした中でシリアの政府軍基地に巡航ミサイル59発を撃ち込んだのです。その映像は全世界に流れました。

 さらにトランプ大統領は4月14日、アフガニスタン東部でIS(イスラム国)の地下基地を狙って「大規模爆風爆弾」(MOAB)の投下を命じました。MOABは「通常兵器の中で最も破壊力のある爆弾」とされるものです。

 マイク・ペンス副大統領は17日に韓国で、シリア攻撃やアフガニスタンでのMOAB投下に言及して、こう述べています。「北朝鮮はトランプ大統領の決意や米軍の力を試すべきではない」。

 「向こう見ずなことをすると同じ目に遭うぞ」と金正恩委員長への最大限の脅しであることは言うまでもありません。

「孤立主義」から早くも軍事介入に踏み切った理由

トランプ政権は就任からこれまで、「米国第一主義」をスローガンにしてきました。対外介入は極力避ける方針だったのではないですか。

 シリアを攻撃したあと、「ビューティフルな赤ちゃんを含む一般市民を殺りくして…」と言っています。「人道主義」的なニュアンスがありますね。トランプ氏はこれまで「人道主義」に言及したことなどなかったように思います。

高濱:ポイントはまさにそこです。ジェームズ・マティス米国防長官は4月11日の記者会見で記者からこう質問されました。「化学兵器よりも、『たる爆弾』*(barrel bombs)による空爆の方が多くの一般市民を殺戮している。たる爆弾には報復攻撃していないのになぜ『化学兵器』に対しては報復したのか」

*「たる爆弾」は、円筒状の容器に石油類を詰めた焼夷弾。広範囲に被害を及ぼすので、標的が絞りにくい場合に使用する。ベトナム戦争で使用されたナパーム弾に似ている。シリア政府軍も頻繁に使用し、一般住民に被害をもたらしている。

 マティス長官はこう答えています。「化学兵器への攻撃はトランプ政権の『政策決定』(Policy decision)だ。米国が国外で実行できる攻撃には制限がある。米国は(シリア政府軍による)化学兵器使用について手をこまぬいて見ているわけにはいかない。シリア政府軍は、化学兵器を一般市民に対して使用してはならないという第一次大戦時代後の合意*に違反した。またロシアはシリア国内の化学兵器をすべて撤去すると約束した経緯がある。これらを考えると、今回の攻撃は『暴力行為のサイクル』を断ち切ることにある」

*1925年の「ジュネーブ議定書」は化学兵器の使用禁止を謳った。ただし、その開発・生産・保有は禁止していないことから、米国、ソ連、日本は大量に生産した。その後、1997年発効した化学兵器禁止条約は化学兵器の開発・生産・保有を包括的に禁じている。
"Reporter to Mattis: Why Would U.S. Strike Syria for Chemical Attack, but Not Barrel Bombs?" Shepard Smith, Insider, Fox News, 4/11/2017

 マティス長官の発言を聞く限り、シリア攻撃はしっかりした予測を立てた「戦略目標」(Strategic target)ではなかった。つまり巡航ミサイルによる攻撃がシリア内戦解決のプロセスにどう影響するかについてを考えていない。中長期的な戦略に基づいた決定ではなかったんですね。

 米主要紙のホワイトハウス担当記者が筆者にこう解説しました。「トランプ大統領は、就任から100日も経たぬうちに内政面で躓きを見せている。その結果、早くも政権運営に陰りが出てきた。そこに、シリア政府軍による化学兵器使用というもってこいの状況が訪れた。強硬派のスティーブ・バノン首席戦略官だけでなく、常識派のジェームズ・マティス国防長官やH・R・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)らも賛同せざるを得なかったのだろう」

習近平は沈黙の後、「攻撃は問題ない」とコメントした

トランプ大統領は、習近平国家主席との昼食の前にシリア攻撃を決定しました。そのこと自体、ミサイルや核の実験を続ける北朝鮮への強烈なメッセージと受け止めるべきでしょうね。

高濱:トランプ大統領はシリア攻撃を公式に発表する前に、隣に座っている習主席にそのことを明らかにしました。トランプ大統領によると、習主席は10秒間沈黙し、「子どもたちに毒ガスを使うような相手には(攻撃は)問題ない」と答えました。

 米中首脳会談はかなり早い段階で決定していました。ですからこれに合わせてシリア攻撃を意図的に行ったわけではありません。たまたま時期が重なっただけでしょうが、トランプ大統領としてはシリア攻撃の時期をずらすことはできたかもしれません。

 ずらさなかったのは、シリア攻撃で米中首脳会談がすっ飛んでしまうとは見ていなかったからです。さらに一歩進めて、習主席との昼食の際にシリア攻撃を敢行することで、「北朝鮮がミサイル・核実験を続けるのであれば、同じようにミサイルをぶち込んでやってもいいんだぞ」という脅しをより効果的にしようとしたことも十分考えられます。

トランプの脅しは本当に金正恩に効いているのか

その脅しは、金正恩委員長にはどうも効かないように見えます。どうでしょう。

高濱:確かに、北朝鮮は軍事パレードにさまざまなミサイルを登場させました。新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)と推定されるもの。昨年8月、試射に成功したとされる潜水艦発射型の弾道ミサイル(SLBMの「北極星」。「北極星」を地対地型に改造して射程を延長した「北極星2型」。そして中距離弾道ミサイル「ムスダン」を改良した「KN08」や「KN14」と推定されるもの。

 トランプ政権を牽制し、力で対抗する姿勢を強調しました。さらに、失敗はしましたが中距離弾ミサイルの発射を試みました。

 一見したところ、金正恩委員長に対するトランプ大統領の脅しは「糠に釘」のように思えます。事実、米国の外交専門家の中には、ここ1週間を「朝鮮危機」と見た人もいます。ウドロー・ウィルソン学術国際センターのロバート・リトワック博士は、北朝鮮の一連の言動を見て、「1962年のキューバ危機*がスローモーションで再現された感じだ」と指摘しています。

"A 'Cuban Missile Crisis in Slow Motion' in North Korea," David Sanger and William J. Broad, New York Times, 4/16/2017
*1962年10~11月にかけて、ソ連がキューバに核ミサイル基地を建設した。米国はカリブ海を海上封鎖。米ソ間で緊張が高まり、一時は米ソの全面核戦争寸前にまで達した。

首脳会談以後、変化がみられる米中関係

トランプ大統領は首脳会談の後、習主席を褒める発言をしました。その5日後、トランプ大統領は習主席と電話で話をしています。首脳会談で、米中関係になにか変化が生じたのでしょうか。

高濱:トランプ氏はさすがビジネスマンです。会った人の悪口は言いません。苦労して国家のトップにまで上り詰めたリーダー同士という感覚があるのかもしれません。

 それはそうとして、習主席との関係は尋常ではないようですね。ウマが合ったのかもしれません。

 トランプ大統領によると、自分が「なぜもっと北朝鮮に圧力をかけられないのか」と問い詰めたのに対し習主席は、中国と朝鮮との数千年に及ぶ対立の歴史について切々と説いて、北朝鮮との付き合いの難しさを説明したようです。

 首脳会談を受けて注意すべき動きがいくつかあります。一つは、ペンス副大統領のアジア歴訪です。韓国、日本などを訪れました。北朝鮮は、ペンス副大統領がソウルに到着する直前に中距離弾ミサイルの発射実験を敢行しました。米韓軍事当局によると、発射のあと4〜5秒で爆発してしまったようですが。

 金正恩委員長が「まともな政治家」なら、米国の副大統領が朝鮮半島入りする直前にミサイルを発射することが軍事的・政治的にどのような意味を持つかわかるはずです。米国は北朝鮮がミサイル発射実験することを予見していたのでしょう。

 それでもペンス副大統領は予定通りソウル入りしました。幸か不幸か、北朝鮮の中距離弾道ミサイル実験は失敗に終わりました。金正恩委員長にとっては屈辱だったでしょうね。

 この失敗についてこんな未確認情報があります。米ABCテレビが「北朝鮮のミサイル発射は米国からサイバー攻撃を受けて失敗した」という説を流しているのです。著名な軍事専門家でもある元英外相のサー・マルコム・リフキンド氏*の発言を引用したものです。
*:サー・マルコム・リフキンド氏は、国防、国務各大臣を経て英下院情報安全保障委員会委員長を務めた英元保守党議員。

 また英タイムズは、「米国防総省は北朝鮮のような敵国の武器システムや秘密の核計画を攪乱する十分な能力を備えている。失敗した北朝鮮のミサイル発射のうち、一部は性能の欠陥が原因だが、米国防総省が最先端のコンピューターウイルスを利用して発射を撹乱したものもあるとみられる」と報じています。

 さらに英ガーディアン紙によると、米政府当局者は米中首脳会談に先立ち、北朝鮮がICBMや地対艦ミサイルの発射実験を実施した場合、何らかの方法で撃墜することを検討していたそうです。

("V.P. Pence in South Korea," ABC News, 4/17/2017)
北の弾道ミサイル発射失敗、原因は米国のサイバー作戦か」 朝鮮日報、4/18/2017
("US Military considers shooting down North Korea missile tests, sources say," Spencer Ackerman, The Guardian, 4/18/2017 )

北朝鮮との接触を計る武大偉特別代表に要注意

 米中首脳会談後の動きでもう一つ注目すべきは、北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議の議長を務める中国の武大偉・朝鮮半島問題特別代表の言動です。

 10日に訪韓して韓国首席代表の金※均(※火ヘンに共)平和交渉本部長と会談しています。両者は、もし北朝鮮が挑発行為に出た場合、国連安保理決議に基づき「強力な追加措置」を取ることで合意しました。

 武大偉・特別代表は金杉憲治・外務省アジア太平洋局長とも電話協議しています。韓国メディア*によると、同特別代表はピョンヤンを訪問し、北朝鮮外務省の当局者と協議しようと打診しましたが北朝鮮に拒否されたと言われています。極秘に訪問しているかもしれません。訪朝しなくても電話会談はできるはずです。

*「中国からの高官訪朝提案、北朝鮮が拒否」朝鮮日報、4/15/2017

 かって米朝協議を経験した米国の元高官は筆者に以下の説を示しています。「ここに来て武大偉・特別代表が動き出したのは、トランプ・習会談を受けた習主席の意向によるものだ」。

 「今、金正恩委員長が何を考えているかを代弁できる者は一人としていない。金正日総書記には趙明禄国防委員会副委員長という側近がいた。趙氏はワシントンも訪問している。ワシントンは、金正恩委員長の代弁者は、叔父の張成沢国防委員会副委員長と見ていた。ところが同副委員長は13年12月に処刑されてしまった。それ以降、金正恩委員長を代弁する者はいない」

 「金正恩委員長との直接のパイプが全くない中、6カ国協議はいわば唯一の場。6カ国協議は07年の第6回会合を最後に休眠状態にはあるが、それでも米朝間をつなぐ唯一の公式ルートだ」

 「習主席としては、このルートを使って、トランプ大統領が『レッドゾーン』(超えてはならない一線)をどこに置いているのかを金正恩委員長に伝えているのではないか。新たな核実験か、米本土にまで届くICBMミサイル発射実験か」

 確かに18日現在、金正恩委員長は核実験を行っていません。しかし、きたる25日には朝鮮人民軍創設85年記念日を迎えます。その時に核実験を敢行する可能性は残っています。「朝鮮危機」はまだ完全に去ったわけではありません。

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