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小黒 一正(おぐろ・かずまさ)

法政大学経済学部教授

小黒 一正

1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。経済産業研究所コンサルティングフェロー。専門は公共経済学。現在は、世代間衡平や財政・社会保障を中心に研究している。

◇主な著書
アベノミクスでも消費税は25%を超える』(PHP研究所) 2013
2020年、日本が破綻する日 - 危機脱却の再生プラン -』(日本経済新聞出版社) 2010
日本破綻を防ぐ2つのプラン』(日本経済新聞出版社) 2011

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

最近のトピックス

 最近は『昭和財政史(終戦から講和まで)』を徐々に読み始めています。少子高齢化が急速に進む日本で、消費税率を10%に引き上げても、財政赤字の継続は明らかであり、財政破綻が容易に防げるとは思えない状況です。日本の過去の先人達が歴史の狭間で何を考えて、何を決断してきたのか、改めて概観してみたいと思ったからです。

 日本には、1868年の明治維新から、40年毎に上り坂・下り坂のサイクルを辿っていくという「40年周期説」があります。つまり、(1)明治維新から日露戦争までの上り坂、(2)日露戦争から第二次世界大戦の敗戦までの下り坂、(3)戦後からバブル景気までの上り坂、そして、(4)バブル崩壊から現在までの下り坂です。この「40年周期説」が妥当な場合、最後(4)の下り坂は2028年頃まで続く可能性があります。

 また、国際政治では、かつての欧米中心の世界秩序は変貌し、中国・インドが急速に台頭しつつあります。このような状況の中、日本が生き残っていくためには、政治・経済の仕組みを人口減少・グローバル経済に適合した姿に改めていく必要があると思われます。そのためのヒントは何か、日々探し求めている今日この頃です。

子供たちにツケを残さないために、いまの僕たちにできること

道州制を含む地方分権と「地方庁」構想

2017年8月31日(木)

 本コラムの目的は、(広域地方計画を含む)国土形成計画やその基盤となる「地方庁」(仮称)の創設を提言することにある。人口減少や少子高齢化が進み、政治の役割は「負の分配」に転換した。にもかかわらず、政治はこれに対応できず、機能不全に陥りつつあり、閉塞感に包まれている。道州制を含む地方分権が政治的な調整コストの分散化や改革の原動力となるとの仮説に基づき、やや大胆な試みだが、論じていく。

 まず、経済のグローバル化や人口減少・少子高齢化が進む中、日本が直面している課題を簡潔に整理してみよう。そもそも、日本が抱える大きな課題は3つある。

人口減少、地方消滅、そして…

 第1は、急速に進む「人口減少」である。人口減少は「静かな有事」といっても過言ではない。国立社会保障人口問題研究所の「将来人口推計」(平成29年版、出生中位・死亡中位)によると、人口減少のスピードは今後勢いを増していく。2017年の人口減少率は年率0.24%に過ぎないが、2025年は0.50%、40年は0.79%、60年には1%となる。

 「減少率」で見ると大きな減少に見えないものの、「減少数」で把握すると印象が異なる。2025年の人口減少数は62万人、40年は88万人、60年は94万人という予測である。62万人という減少数は、現在の東京都江戸川区の人口に近く、94万人は現在の千葉県千葉市の人口(約96万人)や東京都世田谷区(約90万人)に近い。時間の経過に伴い、人口減少や労働人口減少の影響は大きくなる。なお、第3次ベビー・ブームは起こらなかったという現実も直視する必要がある。

 第2は、空間的な側面での「地方消滅」である。国土交通省が2014年7月に公表した「国土のグランドデザイン2050~対流促進型国土の形成~」は、2050年の人口が2010年と比較して半分以下となる地点(全国を「1km2毎の地点」で見る)が、現在の居住地域の約6割を占めること(うち約2割が誰も住まない地域となる可能性がある)を明らかにした(図表1)。

 これを「市区町村の人口規模別」に見ると、人口規模が小さい地域ほど人口減少率が大きく、現在の人口が1 万人未満の市区町村は人口が約半分に減少する。その結果、人口規模が小さい地方ほど財政基盤が危機に直面する可能性が高い。この関係では、増田寛也元総務相が座長を務める日本創成会議・人口減少問題検討分科会が、地方から都市への人口移動が継続する場合、市区町村の49.8%が「消滅する可能性がある」との試算を公表している。

 第3は、「財政問題」である。高齢化の進展で社会保障費は膨張し、日本の財政赤字は拡大する傾向にある。2003 年度の社会保障給付費は約84 兆円であったが、高齢化の進展により、2013 年度は約110 兆円となった。これはGDP の約2 割に相当する金額である。2016年度の社会保障給付費(予算ベース)は約118兆円であるものの、2003年度から13年度における10 年間において、年平均の社会保障給付費は2.6 兆円程度のスピードで膨張してきている。

 団塊の世代がすべて75 歳以上となる2025 年に向けて、社会保障費増の圧力が一層強まる可能性が高い。増税を含む財政再建や社会保障の抜本改革を行う必要があるが、その政治的な調整コストが大きく、なかなか改革は進まない。

図表1:
(出所)国土交通省(2014)「国土のグランドデザイン2050」から抜粋

政治・行政は「効率性」が不得意

 このような状況の中で、政治の役割も大きく転換している。そもそも、「政治」と「経済」は「対」をなすもので、その根幹的な概念である「民主主義」と「資本主義」は車の両輪である。すなわち、経済(資本主義)は「成長」を促進し、政治(民主主義)は「分配」を担う。

 資本主義(経済)は、富が富を生む形で格差を生み出す。民主主義(政治)は成長を促進するために一定程度の格差拡大を許容するものの、それが行き過ぎるならば、格差を是正する役割を担うのが一般的な姿であろう。このため、従来型の政治の役割は、格差に配慮しつつ、成長と分配の狭間で、その「重心」を探すことにあった。

 人口が増加し高成長の時代には、政治は、成長で増えた富の配分を担うことで大きな力を発揮した。人口減少で低成長の時代に突入して以降、政治の役割は「正の分配から負の分配」に急速に変わりつつあるものの、それに対応できす機能不全に陥りつつある。

 この理由は何か。まず、経済の中核を担う市場が「効率性」を得意な領域とする一方で、政治や行政は「公平性」を得意な領域とする。例えば、人口増の経済では、都市が過密となってスプロール化しても、新たに発生した課題や利害調整を地域経済の果実で局所的に対応することができる。ところが人口減の経済では、低成長のため、分配する原資も枯渇しつつあり、そのような部分最適のアプローチで解決することは難しい。

 また、人口が増加し高成長の時代は、効率性の視点から、国民所得倍増計画で太平洋ベルト地帯構想を中心とする産業の適正配置を促進する。その一方、成長で増えた富の一部を分配の原資とし、公平性の視点から、全国総合開発計画で後進地域に対する投資を重視する政治的な姿勢を示すことができた。こうした措置も人口が減少し低成長の現状では難しい。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師