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山崎 良兵(やまざき・りょうへい)

日経ビジネス副編集長

山崎 良兵

1996年、日経BP入社。日経ビジネス編集部、ニューヨーク支局、日本経済新聞編集局証券部などを経て、2017年1月から日経ビジネス副編集長。自動車、電機、流通などの担当が長く、国内外の企業を多数取材している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

甦れ!ニッポンの品質

繰り返すな品質不正 製造業が今やるべきこと

2018年1月9日(火)

 日経ビジネスは1月8日号の特集「甦れ!ニッポンの品質」で、日産自動車、神戸製鋼所、SUBARU、三菱マテリアル、東レなど日本の製造業で相次ぐ、品質関連の不正を取り上げた。どこに問題の本質があるのか。課題を克服するためにはどのような対応を急ぐべきなのかなどを、不祥事を起こしたメーカーの関係者、専門家、品質に力を入れる企業の事例から迫った。日経BP社の技術者向け専門誌「日経ものづくり」などの協力も得た。オンライン連動企画の第1回では不正の背景と、日本の製造業が何をすべきなのかを探る。

 どうして品質関連の不正がここまで相次ぐのか──。日産自動車やSUBARU(スバル)の完成検査の不正、神戸製鋼所、三菱マテアリル子会社、東レ子会社の品質データ改ざんなど、昨秋以降、問題が続々と発覚している。

 今回の特集のために、さまざまな企業の関係者や専門家を取材する中で、筆者がとりわけ気になったのが企業の倫理観だ。

 「法律に違反しても品質には問題がない」「ちょっとくらいの不正なら大丈夫だろう」「契約で定められた基準を下回る製品を出荷しても、安全性には余裕を持って設計されているのでトラブルは起きない」。このような意識が強く感じられた。

 日産自動車やSUBARUの完成検査の不正では「資格を持った検査員による完成検査を義務付けるのは時代遅れ。無資格者が検査してもクルマの品質には全く問題がない」と語る関係者がいた。

 完成検査は自動車メーカーが国家資格取得者による車検を代行する仕組みである以上、有資格者による検査が法律で定められている。品質に問題がなかったとしても、両社は明らかにコンプライアンス意識が欠如していた。

EV(電気自動車)「リーフ」などを生産する日産自動車の追浜工場の検査ライン(神奈川県横須賀市)

 素材メーカーによる品質データの不正も同じ構図が当てはまる。

 神戸製鋼の調査報告書は「クレームを受けなければ、顧客仕様は守らず、数値を書き換えても問題ない」という意識が社内にあったとする。三菱マテリアル子会社の三菱電線工業の調査報告書も、不合格品が出た際に、「これくらい(の不適合)であったら合格としようか」と相談したり、開発担当者から「機能上問題ない」という意見があれば、顧客に無断で合格させたりしていたと指摘する。

 素材メーカーの不正の背景には、日本メーカー同士のあいまいな取引慣習がある。それが「特採(特別採用)」だ。いったん不合格とされた製品を、顧客の承認を得るなどして、使用可能にすることを指す。

 データ偽装に走った各社はこの制度を悪用。顧客向けには品質データを基準に達しているかのように改ざんした上で、社内では特採扱いにしていた。

 「少しなら品質基準を下回っても大丈夫」とメーカーが考えるのは、なぜなのか。メーカー同士が契約する際に決めた品質は、設計上、製品安全に必要な水準を大幅に上回るケースが一般的だ。産業機械などの場合、繰り返し負荷がかかる部品などは、必要とされる強度の3~10倍程度で設計されている場合が多い。

 「安全率」と呼ばれるこの基準は業界によって異なっており、例えば、自動車では1.6倍を目安に設計されてきたとされる。

 余裕を持った設計になっているという前提があるからこそ、神戸製鋼などの素材メーカーは、「少しくらい品質基準を満たさなくても問題ないと考えてデータを書き換えた可能性がある」(品質管理に詳しいコンサルタント)。

 “過剰品質”ともいえる高い安全率は、メーカーの甘えにもつながる。納期が迫る中、ちょっとデータを改ざんしても問題は起きないだろうと製造現場は考え、不正に手を染める。一度始めると歯止めが利かなくなり、データの修正を繰り返す中、偽装は常態化していった。

 「ある一線を一度でも越えてしまうと、罪、問題意識の敷居が非常に低くなる。それが個人であっても、部署であっても判断するのは人間だ。低くなった敷居は時間と共に無いに等しくなる」。一連の品質問題を受けて、日経BP社の技術者向け専門誌「日経ものづくり」などが実施したアンケートではこんな回答があった。

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