• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

中能 泉(なかの・いずみ)

フリー編集者・ライター

中能 泉

出版社勤務を経て、フリーの編集者及びライターに。女性の健康・美容を主なフィールドとするが、男女問わず健康・医療・美容全般が得意分野。『日経ヘルス』を中心に、『日経ヘルス プルミエ』や『日経ヘルスforMEN』の立ち上げに参加し、エディトリアル・ディレクターを務める。その他の雑誌や書籍の企画・編集も多数。WEBマガジン「なかよく通信 」では女性のための耳よりな健康・美容情報をゆるりと発信中。2009年、株式会社なかよくオフィスを設立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

急発進した夢の治療~再生医療の「いまココ!」

“心筋シート”使う心臓病治療が始まった!

2017年2月27日(月)

再生医療についての連載の第3回は、「心臓」のお話。現在、再生医療の研究は、目、歯、皮膚、脳、心臓、肝臓、腎臓など、ありとあらゆる臓器で行われているが、既に実際に受けられる治療がある。心臓病もそのひとつだ。世界で初めて、筋肉の細胞を培養してシート状に加工した「筋芽細胞シート」による心臓病の治療を行い、さらにiPS細胞を用いたシートの研究に力を注いでいる大阪大学医学部の澤芳樹教授に話を伺い、2回にわたり、心臓の再生医療の最先端(←いまココ)をじっくりお届けする。

毎回、冒頭で、京都大学iPS細胞研究所制作の「幹細胞かるた」をご紹介。 最後で解説しています。

 他人由来のiPS細胞を使った世界初の臨床研究が、厚生労働省によって2月1日に了承され話題になった。他人の細胞からつくったiPS細胞で網膜の細胞を作製し、患者に移植する、加齢黄斑変性という眼の病気の臨床研究だ。そして、心臓の分野でも、他人由来のiPS細胞を使った臨床研究が年内に実施されるのではないかといわれている。それを行うのが、大阪大学医学部の澤芳樹教授を中心としたグループだ。

 澤教授は既に、患者自身の脚の筋肉の細胞を培養して、シート状にして心臓の筋肉(心筋)に貼り付ける「筋芽細胞シート」移植の臨床研究を成功させ、2016年、心不全治療用の再生医療製品「ハートシート」として条件付き承認された(*1)。健康保険(公的医療保険)の適用も得て、「実際に受けられる治療」として歩み始めた。それ自体、世界初の画期的なことだ。

澤 芳樹(さわ・よしき) 大阪大学大学院心臓血管外科教授。1980年大阪大学医学部卒業後、同大第一外科入局。フンボルト財団奨学生としてドイツMax-Planck研究所心臓生理学部門へ留学。大阪大学医学部第一外科講師、助教授を経て、2006年より現職。専門は心筋シートによる再生医療、心臓血管外科、心臓移植、人工臓器など。同大医学部 附属病院未来医療センター、大阪大学臨床医工学融合研究教育(MEI)センターなどのセンター長を兼務。日本再生医療学会理事長。医療制度の改革にも精力的に取り組んでいる。
注釈
*1 条件付き承認:再生医療等製品について、有効性が推定され、安全性が確認されれば、条件・期限付きで承認するという制度。「ハートシート」による治療を受けた患者60人以上と対照者120人のデータを市販後調査としてレジストリー化(患者情報のデータ化)し、5年以内に提出して有効性を実証するのが条件。その後、再申請を行い、本承認が得られれば、本格的な市販化となる。

心臓の細胞は死ぬともとに戻らず、機能は衰える

 わたしたちは心臓が動くことで生きている。心臓の大部分は心筋という筋肉細胞でできていて、体に必要な酸素と栄養分を含んだ血液をポンプのように絶えず全身に送り出している。心不全とは、心臓が動かなくなることではなく、このポンプ機能が低下した状態のことだ。

 さまざまな原因があるが、心筋症(*2)や弁膜症(*3)などの心臓の病気だけでなく、高血圧や心筋梗塞などの生活習慣病も大きな要因だ。例えば、心筋梗塞を起こすと、血管が詰まり、一時的に心筋への血液が途絶える。すると、心筋細胞は壊死の状態になり、血液を全身に送り出すポンプ機能が低下し、心不全の状態になる。

 心臓のポンプ機能が低下すると、息切れや動悸がしたり、疲れやすいといった症状が表れるが、軽度の場合は自覚症状がないことも多いという。一度、壊死した心筋細胞は元に戻らず、ポンプ機能は低下したままなので、症状の軽減や進行を遅らせるための薬の投与や、生活習慣の改善が主な治療法になる。重症になると薬が効かなくなり、人工心臓や心臓移植に頼らざるを得ないのが現状だ。

注釈
*2 心筋症:心筋の異常により、心臓の機能に障害が起きる病気。拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症などがある。
*3 弁膜症:心臓にある弁に障害が起き、心筋の機能が衰える病気。高齢化に伴い増加傾向にある。

続きを読む

著者記事一覧

もっと見る

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧