• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

伏見 香名子(ふしみ・かなこ)

フリーテレビディレクター(ロンドン在住)

伏見 香名子

東京出身、旧西ベルリン育ち。未だに東西国境検問所「チェックポイント・チャーリー」での車両検査の記憶が残る。国際基督教大学在学中、米CNN東京支局でインターン実習。卒業後、国際映像通信社・英WTNの取材業務に従事。その後、米ABCニュース東京支局員、英国放送協会・BBC東京支局プロデューサーなどを経て、英シェフィールド大学・大学院新聞ジャーナリズム学科修了後の2006年からテレビ東京・ロンドン支局ディレクター兼レポーターとして、主に「ワールドビジネスサテライト」の企画を欧州地域などで担当。2013年からフリーに。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

最近のトピックス

 先日、取材でスペインに行きました。債務危機で4人に1人、若者に至っては半数以上が失業中という未曽有の事態。スペイン発の企画を作るのは去年の10月以来3度目です。いつも一緒に仕事をしてくれるのは、地元スペインのフリーランススタッフですが、早朝から深夜まで、時に彼らの寝食の時間を削ってしまうほど長時間になることもある、ハードなテレビ取材の現場で、一言の不満も言いません。しかも、現地人ならではの視点で、私の思いつかなかった取材要素を次々と提案してくれたり、軌道修正してくれたり、積極的に仕事をこなしてくれる優秀なスタッフぞろいです。

 この2年ほど、ユーロ危機関連の企画でイタリア、キプロス、ギリシャとポルトガルでも取材しましたが、南欧諸国のどの国でも、これまで一緒に働いた全員がそんな姿勢でした。「自分たちの現状を知ってほしい」という切実な思いもあるのかもしれませんが、彼らの仕事に対する真摯な姿にはいつも頭の下がる思いです。「今の南欧の危機はゆったりした国民性ゆえ」などという論調を見かけると、腹立たしささえ覚えます。今回のロケでは、長いトンネルの中で光を見出した2社を取材しましたが、私の現地スタッフ同様、皆さん生き生き働いていました。スペイン経済は今、本当に大変ですが、こうした人々の手で必ず再生するのではないかと言う希望と共に、いかに誤った固定観念を流さないようにするか、それもメディアの責任だと改めて実感した道中でした。

ロンドン発 世界の鼓動・胎動

「難民キッチン」で考える社会の分断と寛容

2017年4月6日(木)

 難民・移民、同性愛者、障害者などを“口撃”してきたトランプ氏の米大統領就任から2カ月あまりが過ぎたが、抗議活動は米国のみならず欧州など各地で続いている。そして、トランプ氏の言動に触発されたかのように、異なる思想を持つ者同士の過激な非難合戦が、社会やコミュニティに深刻な分断をもたらしている。ここ英国でも、昨年6月に行われた欧州連合(EU)離脱を問う国民投票の際、特に離脱派が注力した移民・難民排斥のネガティブキャンペーンによって、分断の爪痕が各地に残る。

 一方で「違い」や「憎悪の構図」を乗り越え、社会の分断に立ち向かい、奮闘する草の根の活動も活発化している。今日から始める新シリーズ「『憎悪』と戦う市民たち」では、英国を始め、欧州各地で「今、自分にできること」を実践している人たちと、その試みを追う。

 1回目は、英国中部の都市リーズで昨年末にオープンしたカフェ「シリアン・キッチン」を取り上げる。

 3月22日、白昼堂々、首都ロンドンの政治の中枢でテロ事件が起きた。事件当日、筆者はたまたまある放送局スタッフとの打ち合わせで、テロの現場となったウェストミンスター近辺で昼食を取っていた。事件発生の1時間ほど前のことで、襲撃時には既に帰宅しており、交通規制のかけられた混乱に巻き込まれずに済んだ。ウェストミンスター周辺の建物の中には外出禁止となったところもあり、一時、厳戒態勢が敷かれたということだった。

 ロンドンで起きた大規模な襲撃事件は、2005年7月7日の朝、ラッシュアワーの交通網を狙った同時爆破テロ以来のこと。英国はこの数年、国内の警戒レベルが5段階のうち「襲撃の可能性が極めて高い」を意味する上から2番目に設定されている。ロンドン市民はいつテロが起きてもおかしくない環境下で生活している。

 筆者は事件当夜、犯人がおそらく単独犯であることなど、警察発表で事件の概要が大体わかった段階で、予定されていた私用で街に出た。出先は現場から地下鉄で2駅ほどの比較的近い場所であり、主要道路が閉鎖されたことで裏道でも渋滞が発生し、上空にはヘリが2機飛んでいた。それでも、いつも利用する道路には通常通り人々が行き交っていた。

 テロに遭遇するリスクを可能な限り避けることは当然である。だが、市民がこの様な襲撃の後も、日常の生活を営み続ける意義は大きい。その理由の一つは、テロを計画する者たちに、襲撃に街が屈しないことを見せつけること。そしてもう一つは、過激派の狙う「社会の分断」の罠にはまらないためだ。

恐怖が憎悪を助長する

 前者に関して言えば、テロの翌日、事件現場からそう遠くない市の中心部で数千人の市民が追悼集会に参加し、イスラム教徒であるカーン市長が、多民族都市・ロンドンがテロに屈することなく、なお一層団結していく意思を表明した。また3日後には8万人(主催者発表)近くが、EU離脱反対のデモに予定通り参加した。

 もう一つ、テロリストの目論む「社会の分断」を阻むためにも、市民は恐怖に飲み込まれることなく、日常生活を続けなければならない。自称イスラム国(IS)が犯行声明を出し、犯人がイスラム過激派であると発表されることが、何の関係もないイスラム教徒の市民に対する憎悪を助長する構図は、これまで欧州各地や米国での「テロ事件」で嫌という程見せつけられてきた。

 「恐怖は疑念を生み、疑念は憎悪を招く」--。この図式を徹底的に排除していくことは、テロと暮らす市民の責務であるとも言える。

 しかし、憎悪の連鎖を断ち切るには、地道で息の長い活動が必要だ。この数年、欧州大陸で大規模なテロが起こるたび、憎悪の矛先に立ってきたのは、主に長引く内戦を逃れ欧州にやってきたシリア難民である。

 彼らは、戦火を逃れやってきた英国で、地元民と共存できているのだろうか。その実態を取材しに、英国の地方都市・リーズで昨年末オープンしたカフェを訪れた。その名も「シリアン・キッチン」である。

続きを読む

著者記事一覧

もっと見る

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧