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広岡 延隆(ひろおか・のぶたか)

日経ビジネス記者

広岡 延隆

2000年IT企業に入社。2002年日経BPに入社。日経コンピュータ編集部、日本経済新聞産業部出向を経て2010年4月から日経ビジネス編集部。現在は自動車など製造業を担当。過去にIT、電機、音楽・ゲーム、自動車、製薬産業などを担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

記者の眼

「投資は自己責任」はプロの責任放棄

2017年10月16日(月)

家計資産の3割を占める金融資産で進む「顧客本位」を目指した改革。一方で、7割を占める不動産などの実物資産については、業者側の「顧客の資産価値を最大化する」という意識が必ずしも高くないのが現状だ。売り手と買い手の「情報格差」につけ込むようなビジネスから脱却する必要がある。
豪腕ぶりが話題を集める金融庁の森信親長官(写真:竹井 俊晴)

 「もう長官が怒っただけではニュースとはいえないね」。金融業界を取材する記者仲間と話す中でこんな冗談が出るほど、金融庁の森信親長官の豪腕ぶりは際立っている。「顧客本位の業務運営ができているのか」という、シンプルだが厳しい問いを長官就任以来、銀行や証券会社、資産運用会社など金融業界に向けて投げかけ続けてきた。

 顧客本位の業務運営とは、英語で受託者責任という概念を示す「フィデューシャリー・デューティー」を金融庁が意訳したもの。例えば資産運用を受託した金融機関は、資産を預けた人の利益を最大化することに努める義務があり、顧客の利益に反するような行動は取ってはならないということだ。

 当たり前、と思われるかもしれないが、以前からずっと顧客本位の業務運営ができてきたと胸を張れる金融機関はそれほど多くないはずだ。むしろ、顧客に株式や投信を次々と買い換えさせることで、手数料収入を最大化するビジネスモデルすらまかり通っていた。顧客の資産を増やすとの観点がなかったとまではいわないが、優先順位としては低かったと言わざるをえない。

 なぜ、こんなことが通用してきたのか。それは金融商品において、売り手と顧客の情報格差があまりにも大きいからだ。

 「毎月確実に一定金額が受け取れる分配型投信はいかがでしょう?」。「これからは電気自動車。部品を作っている会社の株は有望ですよ」。「仕組預金の方が金利が高くなっています」。金融のプロが丁寧に好条件を示しながら金融商品について説明すれば、普段は自分の仕事で忙しい消費者がどれだけ疑ってかかっても不都合な真実を見抜くのは難しい。そして契約を結んでしまえば、あとは業界にとって便利な言葉がある。

 「投資は自己責任」。確かに消費者は、リスクを伴う商品を購入する際に知識を身につけて判断し、その結果を受け入れるべきだ。だが、それは金融のプロが「顧客本位の業務運営」を実施している、すなわち顧客の資産を最大化してくれるために金融商品を提案してくれているという前提があってのこと。法律で定められた最低限の告知事項を守っていても、金融機関が本心では手数料収入最大化を優先して行動しているなら、到底フェアな取引といえない。

 消費者も馬鹿ではない。「銀行よさようなら、証券よこんにちは」という言葉が流行語になったのは1960年代。それから半世紀以上たってなお、日本の個人金融資産1800兆円の5割が現預金であるという事実は、金融業界が中長期的にメリットのある選択肢を提供できてこなかったことの、しっぺ返しといえそうだ。

 今、金融業界で「顧客本位」を目指した改革は進み始めた。金融庁を恐れる以上に、少子高齢化と経済成熟化の中で、売買手数料に頼るビジネスモデルそのものが通用しなくなることが明らかだからだ。メガバンクや証券、保険、資産運用会社などがそれぞれ「フィデューシャリー・デューティー宣言」を明確に掲げる。顧客の資産を増やすことに正面から取り組むことで、顧客から預かる資産総額を増やそうとする方向性に異を唱える人はいないだろう。

 だが実は、それでも資産運用の「本丸」は手付かずのままだ。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官