「強いドルは米国にとって良いことだ」
米国で為替政策を所管するルー米財務長官は、記者団の質問に対してこのように述べ、市場で燻るドル高への不安を一蹴してみせた。クリントン政権時代の財務長官であるロバート・ルービンが提唱した「強いドル政策」が、今も為替政策の基本であることを示すエピソードだ。
揺らぐ「強いドル政策」
ただこうした見方が、政権内で必ずしも共有されているわけではない。
ファーマン米大統領経済諮問委員会委員長は、今年3月、「強いドルが輸出への逆風になっている」として、ドル高への警戒感をあらわにした。かつて輸出倍増計画をぶち上げたことからも明らかなように、輸出を1つの成長エンジンと位置づけるオバマ政権にとって、行き過ぎたドル高が不都合な面を有しているのは事実である。しかも、輸出下押しの効果は既にジワリと表れ始めている。
先日発表された5月のISM製造業指数は7カ月ぶりに改善したものの、海外からの受注動向を示す輸出受注指数はむしろ低下した。西海岸における港湾労働者ストライキの影響剥落(はくらく)が指摘されていただけに、製造業の海外受注が足元で伸び悩んでいることを示す内容といえる。回答企業の中には「ドル高でアジアでの販売が打撃を受けている」との指摘もあり、輸出企業がドル高で厳しい競争に晒されていることは間違いなさそうだ。