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山根 一眞(やまね・かずま)

ノンフィクション作家/獨協大学経済学部特任教授

山根 一眞

1972年獨協大学外国語学部卒業。情報の仕事術、先端科学技術、地球環境問題、生物多様性、災害・防災などの分野で取材・執筆活動を継続。ベストセラー『小惑星探査機はやぶさの大冒険』は渡辺謙主演で映画化(東映)された。NHKの外部キャスターのほか、北九州市博覧祭、愛知万博、国民文化祭福井などでプロデューサーもつとめた。
東日本大震災後、大指復興アクションを立ち上げ、被災漁村(宮城県北上町)に夢の施設「大指十三浜こどもハウス」を竣工させた。
JAXA嘱託、宇宙科学研究所宇宙探査委員、理化学研究所相談役、計算科学研究機構(スパコン「京」)運営諮問委員、福井県文化顧問、日本生態系協会理事、KU-MA(子ども・宇宙・未来の会)理事。日本文藝家協会会員。

◇主な著書
小惑星探査機はやぶさの大冒険』(マガジンハウス) 2011年
メタルカラー烈伝 温暖化クライシス』(小学館) 2006
メタルカラー烈伝 鉄』(小学館) 2008

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

最近のトピックス

 ノンフィクションの執筆に入ると、毎日見る夢に原稿にすべき文章が出てきます。脳の興奮状態が寝ても覚めても続くという感じです。ノンフィクション作品は、まず事実を取材や文献調査で徹底して集めながら、それらの断片をつなぎ合わせストーリーを描くのですが、調べれば調べるほど謎の暗黒部分が見えてきます。執筆を始めると、その暗黒部分に突然、光がさす物語が突然みえてきます。その時の感動や興奮は、生きていてよかったと思うほどすばらしいのです。

 ノンフィクションは徹底して「事実」を探し出さねばならないため取材や調査、執筆に時間がかかるのが悩みではありますが。

 こういう「事実」を徹底して探る仕事の方法、それら事実の断片をどう構成して「真実」を見出すのかは、ひとつの「技術」です。

 獨協大学では特任教授として年間、およそ60の講義を行っていますが、学生たちには取材で得た最新情報を自ら撮影した映像と写真で報告、同時にノンフィクションの「技術」も伝授しています。こういう取材・調査の方法、得た情報の整理と構成、それらからの真実や課題の発見、そしてレポートの作成は、企業人、社会人としても必須の技術です。しかし、こういう技術を学ぶ機会がないまま社会人となっている若い世代も多いという印象です。

 「日経ビジネスオンライン」では、「ポスト3.11日本の力」に加えて新コラム「山根一眞の『よろず反射鏡』も加わり2連載となりました。今後は、「ポスト3.11日本の力」では東日本大震災に関するテーマをコアに災害復興のありようや巨大災害の科学や技術を中心にとりあげ、「よろず反射鏡」はそれ以外の幅広いテーマを書き記していきます。どうぞ、よろしくお願いいたします。

山根一眞の「よろず反射鏡」

震える指で公開ボタンを押したあの日

2017年8月2日(水)

 取材・執筆に予想以上の時間がかかってしまった拙著『スーパー望遠鏡「アルマ」の創造者たち』(日経BPコンサルティング刊)が、やっと発売にこぎつけました。

日本製の7メートルアンテナ群。日本はこの7メートルアンテナ12台と12メートルアンテナ4台からなる干渉計のセット「モリタアレイ」を建造した。2014年3月に標高5000m に上がった時には異常気象による降雪がまだ残っていた。iPhoneの高度計アプリの表示は5040m。酸素不足で倒れそうだった。写真・山根一眞

真実は、想像より奇なり!

 前回紹介した、2014年11月6日に国立天文台が発表した電波望遠鏡「アルマ」がとらえた原始惑星系円盤の画像は、世界を代表する科学誌『サイエンス』や『ネイチャー』の表紙を飾れるほどの成果だったが、日・米・欧の「アルマ」チームは、あえてそれをしなった。

 「アルマ」の日本側のプロジェクト代表者である井口聖さん(国際アルマ計画・アルマ東アジア・プロジェクトマネージャ、国立天文台教授)は、その理由をこう説明した。

 「あの絵一枚、プレス発表しなければ、世界を代表する科学誌『サイエンス』や『ネイチャー』の表紙を飾ったことは間違いない。しかし、我々はそういう科学論文発表をあえて捨てました。アルマの成果や価値はメディアではなかなかとりあげていただけないんですが、今回の成果はきわめて大きなニュースバリューがあるため、『ニューヨークタイムズ』や『BBC』、『CBS』などで大きくとりあげてもらうことを選びました」

 あの、原始惑星系円盤の画像は、科学の分野を超える高い価値があったからなのだ。

 今から9年前の2008年6月6日、私は東京・三鷹市の国立天文台を訪ね、井口さんと立松健一さん(現・国立天文台野辺山宇宙電波観測所長、国立天文台教授)に「アルマ」の進捗状態を取材した。
 その時に渡された資料には、アルマ計画の科学目標が3つ記してあった。

  • 科学目標1:太陽系以外の惑星系とその形成を解明
  • 科学目標2:銀河形成と諸天体の歴史を解明
  • 科学目標3:膨張宇宙史と宇宙物質進化を解明

 これらの目標の達成を可能にするアルマ望遠鏡の3つの特徴として、

  • 高い解像度で天体を細かく観測:ハッブル宇宙望遠鏡の10倍
  • 高い感度で遠くの天体を観測:これまでの電波望遠鏡の100倍
  • 高い分光能力で存在する物質を観測:これまでの相関器の10倍

 と記してあった。

 「ハッブル宇宙望遠鏡の10倍の解像度」というが、ハッブルの見事な宇宙観測画像を思い浮かべ、「ホントかいな?」と思った。
 だが、「科学目標1」の横には、ハッブル宇宙望遠鏡とアルマの観測の想定比較図が印刷されていて、ハッブルの観測画像はただの「点」だが、「アルマ」の観測ではダイナミックな原始太陽と原始惑星系のリングが描かれていた(シミュレーション例だが)。
 とても美しい図なので、これまで「アルマ」を語る時に多く引用されてきた図だが、2014年、まさに、この図を彷彿とさせる実際の観測画像が得られたのである。

2000年に描かれた原始惑星系円盤の想像図、画像:G. Bryden et al. ApJ, 540, 1091 (2000); see also G. Bryden et al. ApJ, 514, 344 (1999)

 立松健一さんも自らのウェブで、2014年11月の「アルマ」の画像と、惑星系形成の理論シミュレーション図を並べて、

 アルマ望遠鏡の建設前に我々が目指していたもの。真実は、想像より奇なり!

 と記している。

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中谷 巌 「不識塾」塾長、一橋大学名誉教授