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倉都 康行(くらつ・やすゆき)

RPテック代表/マネタリー・アフェアーズ誌編集人

倉都 康行

1955年生まれ。1979年東京大学経済学部卒業後、東京銀行入行。東京、香港、ロンドンで為替、証券、新商品開発、リスク管理業務などに従事。バンカース・トラスト、チェース・マンハッタン銀行のマネージングディレクターを経て2001年4月にRPテック株式会社を設立、代表取締役。日本金融学会会員。産業ファンド投資法人執行役員、セントラル短資FX監査役、マネタリー・アフェアーズ誌編集人、国際経済研究所客員シニアフェロー、立教大学経済学部兼任講師。

◇主な著書
地政学リスク――歴史をつくり相場と経済を攪乱する震源の正体』(ダイヤモンド社) 2016
金融史の真実: 資本システムの一〇〇〇年』(筑摩書房) 2014
予見された経済危機 ルービニ教授が「読む」世界史の転換』(日経BP) 2009

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

倉都康行の世界金融時評

新興国化し始めた先進国

2017年3月22日(水)

 2012年3月から開始したこのコラムもまる5年が経過し、今回の寄稿をもって終了させて頂くことにした。思い起こせば当時はまだ金融危機の爪痕が残り、主要国で徐々に感じられ始めた景気回復ムードに対しても「偽りの夜明け」といった警戒感が指摘されていた時期である。本当に世界経済が危機から立ち直ったのか誰も確信が持てず、日本ではその年末から「アベノミクス」が投入されることになった。

 その後、紆余曲折はあったが、今では世界経済は順調な成長軌道を取り戻しており、日本の昨年第4四半期GDP成長率も年率1.6%と健闘している。懸念された新興国においても、トルコのように拙い状況に陥っている一部を除けば、おおむね経済は安定状態にある。

 そうした景況感の下で米国FRBは既に3回の利上げを行うなど「金利正常化」を進めており、トランプ大統領のリフレ政策への期待感も手伝って株価は上昇を続けている。日欧ではまだ大幅な緩和政策が続いているが、日銀やECBの次の一手は「緩和の修正」という方向がコンセンサスとなっている。

 こうした全体感からすれば、現在の世界経済は危機を克服し、金利も異常な状況から脱出して健全化に向かっている途上だ、と見るのが常識的な診断だろう。格付け会社のフィッチに拠れば、昨年6月に11.7兆ドルまで拡大したマイナス利回り債券残高は既に8兆ドル台にまで減少しており、ECBは秋にもマイナス金利幅を縮小とするのではないか、との観測すら浮上している。

 経済が安定を取り戻しているのは何よりの朗報であり、非伝統的な金融政策が解除されていくのも、どこか3.11の悲劇から徐々に普通の生活を取り戻してきた生活体験と似ているような気もする。その意味では、今後の金融市場動向に対してもいたずらに悲観的になる必要はない。だが逆に、原発だけでなく金融においても、世界を震撼させた危機に対する記憶の風化があまりに早いようにも感じられる。

 今回、最後の原稿としての機会に、現在の市場がやや甘く見過ぎていると感じられる諸点について、老婆心ながら警鐘を鳴らしておくことにしよう。

世界経済は「長期不況説」を振り払ったのか

 まず金利の正常化が進む米国に関し、物価が上向いているという最近のFRBの診断に関して一言私見を述べておきたい。正直言って、米国の物価やインフレ期待が上昇して目標に近々達して2%前後で安定するという確証は、昨今の経済指標からは得られない。

 FRBが注視するコアPCEデフレーターの伸び率は、2016年1月から今年の1月までの13カ月間、1.6%と1.7%の間を行ったり来たりである。賃金上昇率は3%に近づいているが、物価を刺激するには至っていない。ニューヨーク連銀による2月消費者調査では1年先インフレ期待中央値は3.0%と横ばいで、債券市場の期待インフレ率を示すブレーク・イーブン・レートは5年で1.88%と年初の1.98%から低下、10年でも2%を割り込んでいる。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が利上げに反対したのも頷けるような気がする。

 FRBとしては、やや過熱気味の株式市場を意識しながら、トランプ大統領に拠るFRBへの政治的圧力がかかる前に、そして4~5月のフランス大統領選挙に邪魔されないように、とやや政治的な判断で早めの利上げ時期を選択した、ということだろう。

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