• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

武藤 謙次郎(むとう・けんじろう)

イノベーションリサーチ執行役員 知財情報活用統括部長/AIPE認定 知的財産アナリスト

武藤 謙次郎

システムメーカーでの知財情報解析手法の開発・実践等を経て、現職。ビジネスに効く知財情報の活用法を日々探求し、主に、知的財産が重要となる製造業へ各種戦略提言を行う。
群馬県出身。中央大学法学部法律学科卒業。東京工業大学大学院キャリアアップMOT知的財産戦略コース修了。知的財産アナリスト有志優秀答案発表会 初代グランプリ。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

知財情報から見える企業イノベーション

サムスンに多くの転職者を出した日本メーカーは?

2013年6月5日(水)

 日本のメーカーは、ここ数カ月間でアベノミクスの潮流に乗り、全体としてはやや回復基調をたどってきている。しかし個別に見れば、その多くの企業はいまだに苦境から脱したとは言い難い状況であろう。また、2010年にはGDPが世界第三位へ転落、2011年には世界の特許出願件数も第三位となるなど、近年の日本の相対的地位の低下は顕著である《注》。この傾向は、新興国の目ざましい成長や国内の人口減少予測に鑑みれば、打開するのは至難の業と言える。

《注》一般論として、特許出願は数から質の時代に移行しており、今や出願件数と企業競争力との間には、必ずしも強い相関関係があるとは言えない。しかし、2008年のリーマンショックを受けて、日本特許庁への特許出願総件数が2009年以降大幅に減少したように、日本企業の近年の出願件数減少とその競争力低下について限って言えば、そこには一定の関係があると言ってよい。

競争力の源は人財、しかし流出が絶えない

 ただ、確実に言えることがある。それは、強い競争力を持つには優秀な人財の育成、確保に、もっと真剣に取り組まなければならないということである。武田信玄の「人は城、人は石垣…」という言葉があるように、組織にとって、人財は何よりも重要である。その質を一定以上に保たない限り、その組織に未来はない。

 思えば、かつて日本には、明治維新や昭和の戦後復興といった、驚異的な成長を遂げた時代があったが、それらを成し得たのも、多くの優れた人財があったからこそと言える。江戸時代の寺子屋から連綿と続く教育水準の高さは、識字率の高さなどに表れているとおりで、今更論を俟たないところである。当時の日本人の勤勉さは、物質面で恵まれて育った現代人とは比較にならないほど優れたものだったろう。

 このように人財とは、組織にとって何よりまして重要なものと言える。実は近年、これに関して大変深刻な問題がある。それは、日本人技術者の海外流出問題だ。日本のメーカーに所属していた技術者が、リストラやヘッドハンティングなどを契機に、韓国、台湾、中国を中心とした海外の企業に籍を移し、そこで業務をすることにより、それまで蓄積してきた様々な技術ノウハウを流出させているというのである。これでは、せっかく育成した人財を失うどころか、競争相手に利用されてしまう事態となり、状況としてはかなり深刻だ。しかし、この流出がどの程度のものなのかについて、調べられたデータは今まであまりなかった。

 そこで今回は、今までベールに包まれてきた日本人技術者の流出問題に着目する。実際どのような状況になっているのか、韓国サムスングループを例にとって、特許情報を活用しつつ分析していくこととする。

 検討にあたっては、解析対象を日本の特許情報(日本特許庁に出願された情報)に限定した。特定の技術者(特許情報では、発明者という)を調査するにあたり、どうしても同姓同名の別人が浮かび上がってくるが、他国の特許情報の場合、それを排除する手がかりが、日本のものと比べると圧倒的に不足しているため、データの正確性を十分に確保できないのである。従って今回の解析は、外国企業が本国で行うすべての発明について、網羅的に調査したものではない。その一部にあたる、日本へ出願しているもの(全発明のうち、重要なものと推定)を対象としている。そのため、実際の人財流出の規模は、今回のデータより大きいものと推測される。

 なお特許情報は、直近1年半を除いて原則的にすべて公開されており、それらが解析対象となる。ただし、1年半より前の出願でも、国際出願に関しては、各国に移行が済んでいないものは各当該国では公開されていない。

 本データは、特許検索サービス「SRPARTNER」(日立システムズ製)を利用し、抽出されたもの(平成25年5月1日現在)である。また、解析にあたっては、「Excel」(マイクロソフト製)、「INNOVATION NAVI」(コスモテック特許情報システム製)を利用した。

続きを読む

著者記事一覧

もっと見る

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

トランプ政権のここまでの動きはスロー。

ジョセフ・ナイ 米ハーバード大学特別功労教授