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中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

◇主な著書
自由の哲学者カント カント哲学入門「連続講義」』(光文社) 2013
ハンナ・アレント<世界への愛>:その思想と生涯』(新曜社) 2013
考える力をつける哲学問題集』(筑摩書房) 2010

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

中山元の哲学カフェ

娘の母親コンプレックスの類型

2015年1月8日(木)

母性の肥大

 娘の母親コンプレックスは、四つの形をとることが多いのでした。第一は母性が肥大するものです。娘は母親に支配されていたので、それを自分の子供に反復しようとするのです。彼女は母親になることを何よりも重視します。子供が彼女の存在理由となります。夫は自分が子供を生むために必要な手段であり、その他の点では世話すべきものとして、「子供、貧しい親戚、猫、鶏、家具と同列に見られる。彼女自身の人格も添え物である」[1]とユングは指摘しています。

 子供が生まれると、こうした女性は子供を支配するようになります。やがては「子供の独自の人格や固有の生を破壊するに至る。こうした母親が自分の人格に無意識であればあるほど、彼女の無意識的な支配欲はますます巨大に、暴力的になる」[2]のです。前にご紹介した男性の夢に現れた巨大なクモのように、息子の生活のすべてを監視し、支配しようとさえするでしょう。

 こうした母親に支配された息子は、母親という名のクモの網から逃れるために、かなり暴力的な手段を取らざるをえなくなるでしょう。そしてそれが母親にたいして行使された暴力であるために、息子は自分の行為にたいする罪の意識から逃れることができないでしょう。ギリシア悲劇で母親を殺したオレステスを、復讐の女神たちが贖いの血を求め、「お前は、生きながら、その手足から、まっかなおじやを、その償いにたっぷり飲ませてくれなきゃならない」[3]と言いながら追い詰めたことは、アイスキュロスの『恵みの女神たち』が語るとおりです。

エロスの過剰

 第二のタイプは、娘が父親と心的に近親相関的に関係に入り、父親に愛されるようとして、母親に嫉妬し、自分の女性らしさを誇示するようになるものです。娘は母親を否定するので、自分のうちの母性を完全に消滅させてしまいます。娘は母親の支配から逃れるために母親になるのではなく、自分のうちの母性を消してしまうのです。そのときに娘のうちのエロスが強まり、男性にたいする関心が非常に強くなります。

 いわゆる悪女型の女性がこうして生まれます。男性にとっては、自分も母親からの抑圧と過剰な負担を負っているだけに、母親の絆から完全に解放されているようにみえるこうした女性はとても魅力的にみえます。この女性とともに生きることで、自分も母親から解放されるような気分になるのでしょう。

 しかしこうした女性は、自分のエロスの力だけに頼っていて、善き妻になるつもりはまったくありませんし、ましてや母親になるつもりもありません。既婚者の男性をみると、こうした女性は誘惑してみたくなるものだとユングは指摘しています。こうした女性は男性の無意識に働きかけて、母親というものへの憎しみを実現するのです。それには二つの意味があります。一つはすでに妻帯している男性を誘惑することで、自分のエロスの力を実感することができることです。第二は、男性の家庭を破壊することで、相手の男性の妻が母親となることを阻止することができることです。

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