篠原 匡

篠原 匡

ニューヨーク支局長

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 記者時代は出張三昧でしたが、今は締め切りやら入稿やらで会社を出ることもできません。雑誌やムックを作る作業は極めて楽しいのですが、出張にいけないのがストレスな今日この頃。気分転換は家庭菜園と競艇とEテレ。このまま髪を巻き続けるかどうかが最近の悩み。

トランプのアメリカ~超大国はどこへ行く 米貧民街の公立校はこうして立ち直った

ハーレム発、教育格差を克服する物語

  • 2017年07月21日(金)

 米ニューヨークの有名な貧民街「ハーレム」。その123ストリートとモーニングサイド・アベニューの角にある市営公園では、毎朝8時になると子供たちの声が響き渡る。ある子供は滑り台やモンキーバー(雲梯)などの遊具で遊び、別の子供は大人とバスケットボールに興じている。授業が始まるにはだいぶ早く、公園の外では職場に向かう人々が行き交う。(以下の動画をご覧ください)

 なぜこんな早い時間に子供たちが遊んでいるのか。実は体育の授業の一環だ。校舎の中の体育館が自由に使えないため、授業が始まる前の時間を利用して体を動かしている。

 公園の隣に、「P.S.125 Ralph Bunche」という名の公立小学校がある。コロンビア大学のある高級住宅街、アッパーウェストの北隣にあたるが、周囲には低所得者向けの公営住宅「プロジェクト」が林立している。ここに通っている生徒は貧困層の子供が多く、ランチ無料プログラムを受けている子供が全体の7割に達する。全校生徒267人の内訳を見ても、アフリカ系米国人(黒人)が40%、ラティーノが35%とマイノリティが大半だ。世界中の富が集まるニューヨーク・マンハッタン。その中にあって、貧困層が多く住む地域である。

 この学校の生徒が自由に使えないのは体育館だけではない。子供たちがランチを食べるカフェテリアは使える時間が限られている。図書館がなく、特別なケアが必要な子供のための教室もないため、廊下の片隅でカウンセリングを実施することもしばしばだ。日本の公立小学校に当然のように存在する設備が、この学校にはない。

図書館を高校に取られたため、壁の空いたスペースを使って保護者が図書館を作った(写真:Retsu Motoyoshi)
特別なケアが必要な子供のための教室もない(写真:Retsu Motoyoshi)

 原因は、校舎を他の2つの学校とシェアしていることにある。米国で生徒数を伸ばしているチャータースクールと、コロンビア大学の付属高校が同じ建物を使用していて、その2校に施設の一部を奪われた形となっている。P.S.125とチャータースクールは入り口が別だが、高校とは入り口も共有しているため、小学生と高校生が行き交う。

 「6年前に赴任した時は、とても不公平に感じた。体育館や図書館はもともとこの学校の施設だったのに、別の学校が入ってきたことで使えなくなった。他の学校との兼ね合いで、ランチの時間帯も変わってしまう。リソースをどんどん失っているという感覚だった」

 P.S.125の校長、レジナルド・ヒギンズは初めて学校に赴任した2011年のことを振り返る。

6年前にヒギンズ氏が校長として赴任した時、学校は崩壊の危機に瀕していた(写真:Retsu Motoyoshi)

    著者プロフィール

    篠原 匡

    篠原 匡(しのはら・ただし)

    ニューヨーク支局長

    1975年生まれ。1999年慶応大学商学部卒業、日経BP社に入社。日経ビジネス記者や日経ビジネスオンライン記者を経て、2012年10月から日経ビジネスクロスメディア編集長。建設・不動産、コミュニティビジネス、地域作り、人物ルポなどが得意分野。現在は別冊やムック、書籍などを作っている。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

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