篠原 匡

篠原 匡

ニューヨーク支局長

最近のトピックス

 記者時代は出張三昧でしたが、今は締め切りやら入稿やらで会社を出ることもできません。雑誌やムックを作る作業は極めて楽しいのですが、出張にいけないのがストレスな今日この頃。気分転換は家庭菜園と競艇とEテレ。このまま髪を巻き続けるかどうかが最近の悩み。

ニュースを斬る FBはトランプとロシアにどう使われたか?

言論プラットフォームが民主主義を毀損する皮肉

  • 2017年11月08日(水)
議会の公聴会では大統領選へのロシアの介入についてテック大手の法律顧問に厳しい質問が浴びせられた(写真:AP/アフロ)

 10月8日に放送されたCBSの人気ドキュメンタリー番組「60ミニッツ」に、2016年の米大統領選でトランプ陣営のデジタル戦略を率いたブラッド・パースカルが登場した。その話を聞くと、フェイスブック(FB)がトランプ勝利にいかに重要な役割を果たしたかが一目瞭然だ。

 「勝利に導いたのはトランプ自身だが、FBはそのメソッド。FBはトランプが運転する車のハイウェイだった」

 パースカルが活用したのはFBのターゲット広告だった。

 例えば、製造業が衰退した「ラストベルト」に住む有権者は道路や高速道路、橋の老朽化を懸念していた。そんな彼らに、橋が崩れ落ちる広告映像を送る。インフラ投資を求める有権者は民主党支持者であることが多い。だが、自身の不安を可視化した映像で見せられれば、インフラ投資を訴える候補者に票を投じる可能性は上がる。

 その広告は、極めて細かくカスタマイズされていた。「今ではフロリダ州パンハンドルに住む15人を見つけ出すことができる」。そうパースカルが説明したように、FBを使えば従来のテレビ広告では絶対に買うことのできなかったようなローカルの小グループにリーチすることが可能だ。

リベラルが生み出したツールがトランプ勝利に寄与

 ユーザーが赤色のクリックボタンを好めば赤色に、寄付や募金という言葉に反応しやすい人であればそういうキーワードを埋め込んでいく。カスタマイズされた広告は自動生成で、1日平均で5万~6万の広告を作っていたという。

 ターゲット広告に関する技術の活用方法を教え込むため、選挙期間中、パースカルのオフィスに共和党支持の社員が常駐するなど、この作業にはFBも協力している。膨大な広告マネーが飛び交う米大統領選。FBはそこに商機を見いだし、積極的に関わっていたわけだ。

 「ソーシャルメディアは西海岸や東海岸のリベラルが作りあげた。われわれは保守の価値観を後押しするために、その活用法を見つけ出した。そんなことは想定していなかったと思う」

 リベラルなシリコンバレーの生み出したツールがトランプ大統領の勝利に寄与したとすれば、これほど皮肉な話もない。

 ワシントンDCを揺るがしているロシア政府による選挙介入も構図としては基本的に同じだ。

 昨年の米大統領選で、ロシア政府につながりのあるメディアや機関がFBで広告やコンテンツを投稿、米国の民意をゆがめたと批判されている。

    著者プロフィール

    篠原 匡

    篠原 匡(しのはら・ただし)

    ニューヨーク支局長

    1975年生まれ。1999年慶応大学商学部卒業、日経BP社に入社。日経ビジネス記者や日経ビジネスオンライン記者を経て、2012年10月から日経ビジネスクロスメディア編集長。建設・不動産、コミュニティビジネス、地域作り、人物ルポなどが得意分野。現在は別冊やムック、書籍などを作っている。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

    アクセスランキング