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海部 美知(かいふ・みち)

エノテック・コンサルティングCEO

海部 美知

ホンダを経て1989年NTT入社。米国の現地法人で事業開発を担当。96年米ベンチャー企業のネクストウエーブで携帯電話事業に携わる。98年に独立し、コンサルティング業務を開始。米国と日本の通信・IT(情報技術)・新技術に関する調査・戦略提案・提携斡旋などを手がける。シリコンバレー在住。子育て中の主婦でもある。

◇主な著書
ビッグデータの覇者たち』(講談社) 2013
パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本』(アスキー) 2008

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

最近のトピックス

 高校生の息子の部活、ロボコンのシーズンが終了しました。残念ながら全国大会までは行けませんでしたが、スペック発表から期日までの2ヶ月ほどにわたるロボット製作期間中の「デスマ」状態には驚愕。最後のほうは徹夜までしていました。シリコンバレー地区予選というと、大会スポンサーはグーグル、優勝チームはNASAがバックアップした高校、という豪華なラインアップ。勝ち抜くのは大変です。

 大会といっても、単なる体育会的勝ち負けではないのが面白いところ。まずロボット製作期間中は、自チームの技術力を見極めて、出された課題のうちどこにフォーカスしたロボットを作り、どういう戦略で戦うかをチーム内で意思決定して、設計・開発・製造のプロセスを管理しなければなりません。

 また、試合では3チーム一組で対戦するのですが、どのチームとアライアンスを組むかはシードチームが好きに選べる、つまり自分がシードにはいれなくても強いチームにパートナーに選んでもらえばよいのです。試合会場の「表」であるコート側と幕で仕切られた「裏」側のピット・エリアでは、チーム名入りのグッズを配ったり他のチームに営業トークを繰り広げたり、私には見慣れたテック展示会のような光景です。こりゃー立派なビジネス・ワールド、とすっかり恐れいってしまいました。

Tech MomのNew Wave from Silicon Valley

「オンデマンド労働」はどこまで広がるか

2015年12月8日(火)

先月に開催されたカンファレンス「Next: Economy」の一場面。左から順にウーバーテクノロジーズ、リフト、そしてタクシー会社のドライバー。この3人が壇上で激論を交わした(写真:海部 美知)

 「ウーバーのドライバーはド素人ばっかりで、ウロウロしやがって迷惑極まりない」

 「タクシー会社に振り回されるのは嫌だ」

 「時給35ドルという広告につられてウーバー・ドライバーになったが、その後競争で料金がどんどん下がり、とてもそんなに稼げない」

 「でも、ウーバーのドライバー向けサービスをいろいろ使ってしまっており、いまさら辞められない」

 「タクシーでは、キャブ・スクールで乗客の危険行為に対する訓練もちゃんとやっている、リフトの素人ドライバーは知らんだろう」

 「俺はキャブ・スクールで教えていたこともあるが、今はフレキシブルなリフトの方がよい」

 これは、「米配車アプリ大手のウーバーテクノロジーズを辞めてタクシー会社に行った人」、「タクシー会社を辞めてウーバーと同業のリフトに行った人」、「運送会社を辞めてウーバーに行った人」という3人の運転手の大混戦現場激論パネルの一幕である。

 シリコンバレーのオピニオン・リーダーとして知られるティム・オライリーが今年新しく立ち上げた「Next: Economy」というカンファレンスのパネルディスカッションでのことだ(11月12~13日にサンフランシスコで開催)。そこでは、こうした具体的な問題事例から、長期的な世界の人口推移や、AI(人工知能)は本当に仕事を奪うのかといった議論まで、幅広く「シリコンバレーから見た仕事と経済の未来」についての議論が披露された。

 あまりに幅広くてすべてをカバーできないので、ここでは「オンデマンド労働」の問題に絞ってまとめてみたい。

ウーバーだけではない多様なオンデマンド労働

 「働き方」がシリコンバレーで問題とされるようになったきっかけは、ウーバーの成功による「オンデマンド労働」の広がりだ。誰でもドライバーになってお小遣いを稼げる仕組みであるウーバーと、その同業ライバルであるリフトの人気は引き続き爆発中である。

 特に発祥の地であるサンフランシスコは、もともとタクシーの数が圧倒的に足りず、ウーバーとリフト両方の本拠地でもあるため、サービスの人気に合わせてドライバーの数も急増。従来の「正社員」とも「パート・アルバイト」とも異なる、より流動的な「オンデマンド」的働き方をするドライバーが急激に増え、タクシー運転手とのあつれきも激化している。

 働く側から見ると、オンデマンド労働の最大の魅力は「敷居が低い」、つまり「面接で落ちない」ことだ。通常の求人の場合、「空きポジション」の数が決まっているので、探すのも手間がかかり、たとえ自分が資格十分であってもタイミングが合わなければ落とされてしまう。

 しかしウーバーでは、「空席」数は決まっていない。事前に犯罪歴などのチェックはあるものの、よほど悪くなければ、誰でもいつでも、ドライバーになれる。ドライバーになった後に、乗客からの評価が低いと仕事が来なくなるが、そこは自分の努力でなんとかなる。

 「自分の裁量でいつ働くかを決められる」というフレキシビリティーも大きな魅力だ。通常のタクシー運転手なら、シフトを決めるのは会社であり、運転手側は、それを受けるか断るかしか選択肢がない。断れば次にシフトに入れてもらえないかもしれないので、そう簡単に断ることはできない。これに対しオンデマンド労働では、自分が働ける時間にアプリをONにすればよいだけだ。

 一方、彼らを雇う企業側にとっては、需要に応じてニア・リアルタイムに人を増やしたり減らしたりできる利点が大きい。

 ウーバーとリフトだけでなく、同様のオンデマンド労働の仕組みを活用したベンチャーが、シリコンバレーでは大流行している。家具の組み立て、草むしり、ホームパーティーの準備などといった、家での雑用仕事もろもろを仲介するタスク・ラビットは、ウーバーとほぼ同時期の2008年に創業した老舗である。

 ほかにも、レストランでテイクアウトの食事を買って家まで届けるドア・ダッシュ、スーパーで食料品を買って届けるインスタカート、衣類の洗濯を出前するワシオなど実に多種多様。

 働く人のことを、タスク・ラビットは「タスカー」、ドア・ダッシュは「ダッシャー」、インスタカートは「ショッパー」、ワシオは「ニンジャ」と、それぞれカラフルな名称で呼んでいる。また、アマゾン・ドット・コムも、自社の配送ドライバーを「オンデマンド」方式で集めるという試みを開始している。

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