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尾崎 弘之(おざき・ひろゆき)

東京工科大学教授

尾崎 弘之

1984年東京大学法学部を卒業。90年米ニューヨーク大学でMBA(経営学修士号)を取得、2005年早稲田大学大学院博士後期課程を修了、博士(学術)。野村証券、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス投信執行役員、ディナベックCFO(最高財務責任者)などを経て、2005年から東京工科大学教授。環境省委員、研究・技術計画学会理事。TBS系テレビ「みのもんた朝ズバッ!」に毎週金曜日出演中。

◇主な著書
社会変革期の事業戦略:グリーンラッシュで生まれる新市場を狙え』(日経BP) 2012
次世代環境ビジネス:成長を導きだす7つの戦略』(日本経済新聞出版社) 2009
環境ビジネス5つの誤解』(日経プレミアシリーズ) 2011

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

最近のトピックス

 今年は初めて電子書籍を出しました。「君は本当に出世したくないのか?」というやや刺激的なタイトルです。3年前に出した人材育成に関する本の電子版です。どの程度売れるかNo ideaでしたが、4月22日現在でアマゾンの電子書籍ベストセラー総合第4位につけています。電子書籍の読者層にマッチしたのでしょう。内容はもちろん面白いですよ。

 昨年が実質電子書籍元年でした。電子書籍が普及すると困る業界がありますが、彼らも手をこまねいているわけではありません。例えば、大日本印刷は美術品の「3D印刷」に力を入れていますし、米国の大手書店チェーンであるバーンズ&ノーブルズは、電子書籍リーダー端末やコンテンツの宣伝を店舗内の特設コーナーで行っています。これから本を読む習慣、情報を集める方法がどのように変わるのか興味がそそられます。

戦略論で読み解くグリーンラッシュの焦点

電気料金値上げにいかに歯止めをかけるか

2013年5月8日(水)

電気料金値上げが避けられなくなった

 原子力発電所の停止により火力発電用の燃料費が大幅に増加しているため、5月1日から関西電力と九州電力は、電気料金を各々平均9.75%、6.23%値上げした。ほかの電力会社も同様の状況で、東京電力が昨年9月に値上げしたほか、北海道電力、東北電力、四国電力も政府に値上げを申請している。また、4月30日に発表された電力10社の業績を見ると、北陸電力、沖縄電力を除く8社が最終赤字となった。

 電力会社の業績が好転する兆しは残念ながら見られない。原発の再稼働のメドが立たず、円安によって天然ガスの輸入価格が上昇傾向にあるためである。ただ、電力業界の赤字を埋めるために電気料金を際限なく上げることも政治的に許されない。原子力・安全保安院の改組と同時に政府の電気料金値上げ査定が厳しくなったため、電力会社は必死に燃料費の削減努力を行っている。

 ただ、燃料費削減など電力供給側のコスト削減努力にも限界がある。そうであれば、電力の供給側と需要側が協力して従来までの発想と異なる省エネ努力をするしかない。ここで重要なことは、両者が協力して「新しい市場価値」を創造することと、「商品のパッケージ化」である。

 これら2つの概念は、マイケル・ポーター米ハーバード大学教授が唱えた「バリュー・チェーン」と関連している。この概念は、企業活動のうち、購買物流、製造、物流、マーケティング、販売、サービスなどの各プロセスにおいて付加価値を積み上げていく状況を分析するものである。バリユー・チェーンはもともと1つの企業内部の効率性向上と競合他社との差別化を実現するために利用される理論であったが、スマートグリッド分析の場合、一企業で完結するのではなく、パートナー企業と提携した形でのバリュー・チェーンを作ることが重要となる。

「スマートグリッド」が電力の供給と需要の距離を縮める

 電力の供給側と需要側を効率的に結び付けるのは、新しいビジネスである。米国人はまだ形がないビジネスをコンセプト化することが得意で、新ビジネスを「スマートグリッド」と名付けている。

 スマートグリッドとは、電力ネットワークを、インターネットの通信方式をヒントにして電力の需給関係を効率的にマネジメントする仕組みである。電力は送電中に熱が出てエネルギー・ロスが出るし、停電を出さないよう真夏のピーク時に対応できる余分な発電能力を備えておかなければならない。どうしても非効率になってしまうのだ。

 この非効率性の改善が期待されるスマートグリッドの「グリッド」とは送配電網を意味し、「電力版インターネット」と呼ぶことができる。インターネットは情報の出し手と受け手を即時につなぎ合わせ、情報の流れを効率的にする。網の目状のネットワークを相互接続する通信機器としてルーターがあるが、この仕組みがエネルギーの供給と需要の接続に応用されるのだ。

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