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井上 達彦(いのうえ・たつひこ)

早稲田大学商学学術院教授

井上 達彦

1997年神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了、博士号(経営学)を取得。広島大学社会人大学院マネジメント専攻助教授、早稲田大学商学部助教授などを経て、2008年から早稲田大学商学学術院教授。2003年経営情報学会論文賞受賞。2012年4月から2014年3月まで米ペンシルベニア大学ウォートン経営大学院のシニアフェローを兼務する。

◇主な著書
ブラックスワンの経営学 通説をくつがえした世界最優秀ケーススタディ』(日経BP) 2014
模倣の経営学―偉大なる会社はマネから生まれる』(日経BP) 2012
事業システム戦略―事業の仕組みと競争優位(共著)』(有斐閣) 2004

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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 2014年3月まで2年間、ペンシルベニア大学のウォートンスクールで過ごしました。大学でも子どもの学校でも、日本とアメリカの教育の違いを感じましたが、特に感心したのは、子どもが通ったテニスアカデミーの教え方です。日本の選手育成は集団指導を軸としているのに対し、アメリカのアカデミーは、プライベートレッスンを軸に成り立っています。個々の技術向上はカスタマイズすべきで、プライベートレッスンでなければうまく指導できない、というスタンスを感じます。基礎から応用まで、個人向けにカリキュラムが準備される。それは見事なものです。

 そして体系的に知識を伝えるのが上手です。アメリカでは、よいコーチほど体系的に知識を伝えます。つまり言語化が上手なのです。短い時間で修正すべきポイントを見極め、その癖を直すために、体系的なメニューとともに知識を伝えます。すると1時間のレッスンの間に(少なくともその時には)、癖が直るわけです。選手としては、最初まずかった部分を自己認識できて、それが1時間後には治るわけですから、何をすればよいのかを体感できます。

 それから、基本的にポジティブシンキングです。日本の選手育成は、「いいとろころ伸ばす」と口では言いますが、指導内容を見ると、悪いところを直そうとします。アメリカのコーチも、技術的に直すべきところは徹底的に直します。優れたコーチが本気で取り組む時は日本のコーチよりも徹底的に直します。しかし、基本的にその選手のいいところを受け入れて、よいところを伸ばします。

 これらの特徴は、人間や世界をみるときの基本的な前提にかかわると思います。アメリカは多様な文化が混在しているというのが前提なので、知識というのは、「言葉」を最大限に駆使して明確に伝えるしかないと考えているようです。また、人間の気質(テンパー)というのは、変えられるわけではないので、それを前提に良いところを伸ばすべきだという認識も感じ取れます。

ケーススタディは経営学の最強スキルである

すぐれた会社はケーススタディの方法論を持っている

2014年8月21日(木)

 もともと経営学(Business Administration)は、アメリカの実務家が唱えた理論から出発した。現在、学術研究とビジネス実務は、どのような関係にあるのか。日本とアメリカでは両者の関係に違いがあるのか。ペンシルベニア大学ウォートン・スクールのシニアフェローを兼務しながら、新刊『ブラックスワンの経営学 通説をくつがえした世界最優秀ケーススタディ』の執筆を進めてきた井上達彦・早稲田大学商学学術院教授に聞いた。

ケーススタディをしない会社に良い会社はない

井上 達彦(いのうえ・たつひこ)
早稲田大学商学学術院教授。1997年神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了、博士号(経営学)を取得。広島大学社会人大学院マネジメント専攻助教授、早稲田大学商学部助教授などを経て、2008年から早稲田大学商学学術院教授。2003年経営情報学会論文賞受賞。2012年4月から2014年3月まで米ペンシルベニア大学ウォートン経営大学院のシニアフェローを兼務する(写真:陶山 勉)

すぐれた企業は、すぐれたケーススタディの方法論を持っているのでしょうね。たとえば、トヨタの「なぜを5回繰り返せ」というのは、ケーススタディの方法論と見ることができます。

井上:その通りです。トヨタはもちろんそうですし、セブン-イレブンも事例研究の方法論を持っています。セブン-イレブンはデータ活用が得意な会社ですが、その数字の示すことを読み取るために事例研究を徹底する。「なぜ、こういうデータになるのか」を解明するために、脈絡を拾って、原因を抽出して、横展開できることは横展開する。それを繰り返しているのが、セブン-イレブンの仮説実証経営です。

 ケーススタディをしない会社に、良い会社はない。すぐれた会社になるための「必要条件」の1つは、ケーススタディに組織的に取り組んでいるかどうか。そう言えるのではないかと思います。

 今回の本では、事例研究に組織的に取り組んでいる会社として、公文教育研究会(KUMON)を取り上げました。その活動は、アカデミックな学会も顔負けの盛り上がりです。たとえば、KUMONは子供を育てることをミッションとして掲げているので、子ども1人ひとりを「事例」として注目して、「この問題で鉛筆が止まった」というようなことを指導者が共有して、指導方法の改善につなげています。

事例研究に組織的に取り組んでいる会社の作法

その一方で、過去の経験に頼りすぎることにも危険がありますね。

井上:ニトリも事例研究に組織的に取り組んでいる会社として知られています。模倣やベンチマーキングを徹底的にやって伸びてきました。経営トップが「私はよその会社を模倣している」「よそにいいものがあったら全部飲み込め」と公言して、そのスタイルと学び方と作法を現場に浸透させています。だから末端の社員でも、観察の仕方やベンチマークの方法がわかっています。「調査とはかくあるべし」なんていう難しいことは言いませんが、偉大な経営者がそれを会得していて、それを組織でやるにはどうしたらいいかということを追求しているのです。

 社員がすみずみまで事例研究の作法を修得している秘訣の1つは人事ローテーションにあると考えられます。ニトリでは、人事ローテーションが活発で、店舗で働いていた人が本部に行ったら、それで上がりというわけではなくて、また現場に戻します。現場に戻って活躍するのが基本なので「本部に出向する」と言い表すそうです。「出向」することで、全体の状況やデータがわかった上で現場の観察や事例分析ができるようになります。

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