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上野 泰也(うえの・やすなり)

みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト

上野 泰也

1985年上智大学文学部史学科卒業、法学部法律学科に学士入学後、国家公務員I種(行政職)にトップ合格したため中退。86年会計検査院に入庁。88年富士銀行(現みずほ銀行)に転じ、資金為替部にて為替ディーラー。90年から為替、資金、債券の各セクションでマーケットエコノミスト。94年富士証券チーフマーケットエコノミスト。2000年10月からみずほ証券チーフマーケットエコノミスト。
早朝から内外経済・マーケット関連の調査レポートを執筆。スピーディーな情報発信、的確な問題把握と軸のぶれない主張、日銀ウオッチなどに定評がある。
2018年3月、日経ヴェリタスが実施した第23回「債券・為替アナリスト エコノミスト人気調査」で、エコノミスト部門で3年連続の首位になった。

◇主な著書
トップエコノミストが教える 金融の授業』(かんき出版) 2015
トップエコノミストの経済サキ読み術』(日本経済新聞出版社) 2015
No.1エコノミストが書いた世界一わかりやすい株式の本』(かんき出版) 2013

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

上野泰也のエコノミック・ソナー

銀行や信用金庫は「好景気とは無縁?」

2018年5月22日(火)

金融機関の業況にも注目してみよう(写真:=ロイター/アフロ)

 日本の企業向けサーベイの代表格であり、欧米でも“TANKAN”と言えば通じることが多い日銀短観(全国企業短期経済観測調査)には、金融機関の業況判断DI(回答比率「良い」-「悪い」)などのデータも掲載されている。ところが、たとえ「全規模合計・全産業」という最も広いカテゴリーであっても、マスコミが通常報じる普通の業況判断DI には、金融機関は含まれない扱いになっている。

 「全国短観を補完する目的で、金融機関に対しても調査を行っている」というのが日銀の説明である。一般事業法人の景況感や売上・収益・設備投資などの計数から金融政策運営の参考になる経済データを入手しようとしているわけであって、経済において特殊な存在である金融機関(しかもそのうちかなりの数が日銀の当座預金取引先)は、いわば「枠外」という位置付けになっているわけだ。

 とはいえ、戦後2番目の長さになっている現在の景気拡張局面にもかかわらず、経済の「血液」であるマネーの循環をつかさどる金融機関の景況感が、さえないどころか部分的には悪化に向かっているとなると、短期的にも中長期的にも安閑としてはいられない。

7四半期ぶりの低水準

 4月2日に概要が発表された日銀短観3月調査で、金融機関の業況判断DIを確認しておきたい。ここでは「銀行業」と、信用金庫や農協といった「協同組織金融業」(この時の調査から「信用金庫・系統金融機関等」を名称変更)を取り上げたい<図1>。

図1:金融機関の業況判断DI 「銀行業」「協同組織金融業」
注:直近は18年3月調査における6月予測
(出所)日銀

 「銀行業」の業況判断DIは+7(前期比+2 ポイント)。17年6月調査で+3まで低下していたが、そこからは持ち直した。先行き(6月予測)は+5。後述するように利ざやが圧迫され続けているものの、小幅プラスでなんとか必死に持ちこたえている印象である。

 一方、「協同組織金融業」は±0(前期比▲2ポイント)で、7四半期ぶりの低水準になった。先行き(6月予測)は▲3 。先行きがマイナス圏に沈んだのは17年3 月(▲2)以来のことだが、マイナス幅は今回の方が大きい。それより前までさかのぼると、「リーマンショック」が発生して景気が大きく落ち込んだ局面の09年6月に記録した▲17以来の低い数字ということになる。

 メガバンクや大手地銀を含む「銀行業」は、海外関連のビジネスで展開可能な業務範囲が「協同組織金融業」よりも広いため、収益多角化によって国内貸出業務のマージン縮小をカバーできる余地が、相対的には大きい。そのあたりが日銀短観の業況判断DI における足元でのベクトルの違いに反映されていると考えられる。

 1つ前の調査(17年12月)で、「信用金庫・系統金融機関等」(現在の「協同組織金融業」)の業況判断DIの先行き(3月予測)は+2 だったのだが、上記の通り、3月調査の実績では下振れて±0になった。次回6月調査でこのDIがマイナス圏に沈む場合は、09年9月(▲6)以来の実績ベースでのマイナスということになる。重苦しい話である。

 一部には、銀行などの金融機関が企業や個人向けに貸し出しを行う姿勢の過度の慎重さが国内景気の回復の広がりを妨げている原因ではないか、といった見方もある。だが筆者の見るところ、そうしたストーリーは無理筋である。

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