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松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家/科学技術ジャーナリスト

松浦 晋也

宇宙作家クラブ会員。1962年東京都出身。慶應義塾大学理工学部機械工学科卒、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。日経BP社記者として、1988年~1992年に宇宙開発の取材に従事。その他メカニカル・エンジニアリング、パソコン、通信・放送分野などの取材経験を経た後、独立。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

◇主な著書
のりもの進化論』(太田出版) 2012
小惑星探査機はやぶさ大図鑑(共著)』(偕成社) 2012
飛べ!「はやぶさ」小惑星探査機60億キロ奇跡の大冒険』(学習研究社) 2011

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

最近のトピックス

 宇宙開発を取材してそろそろ四半世紀。同じ科学技術庁マターだったが、関わることはあるまいと思っていた原子力も、福島第1原発事故後に始めたPC Onlineの連載(http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20080312/296077/)でどっぷり漬かることになってしまった。宇宙開発と原子力には共に科技庁の管轄だったという以上に共通点がある。それは一度方針を定めた巨大技術開発が方針転換する困難さだ。

 研究も技術開発も未踏領域であればあるほど、柔軟な態度で臨む必要がある。が、宇宙と原子力は先行する海外をキャッチアップする形で始まったこともあり、これまで柔軟性について顧慮されることは少なかった。しかし、これからはそうはいかないだろう。しなやかに、したたかに技術開発を進める体制を作らねば、技術は停滞し、ついには失われることにもなりかねない。

「飛べないMRJ」から考える日本の航空産業史

オスプレイの設計は見事、そして鳥人間の罠

2018年5月10日(木)

 物理的な原理原則が分かると、今まで見えていたものと全く違う世界が見えてくる――過去30年以上、航空機開発一筋できた四戸哲氏にかかると、今まで漫然と理解した気分になっていた飛行機のあれこれが、まったく違った方向から光を当てられる。取材の中で出た本筋以外の話題をまとめ、四戸氏の了解を得てここに掲載する。

※上の写真は前回などで触れた、米国の「自作飛行機好きのコミケ」的なイベント、EAA AirVenture Oshkosh(オシコシ、オシュコシュ)。主催のEAA(EXPERIMENTAL AIRCRAFT ASSOCIATION)へのリンクはこちら。写真提供は八谷和彦氏(こちら

松浦:ついでにといっては申し訳ないのですが、せっかく四戸さんから話をお聞きするチャンスなので、MRJや日本の航空産業から離れたテーマについても、質問してしまいましょう。

 私には、空を飛ぶ道具がものすごい変革期に来ているんじゃないかという気がするんです。具体的には電動モーターとバッテリー、そして制御です。

 ドローンは、今や実用に使われるようになりつつあります。4つから8つのプロペラを上に向けて飛ぶことが、電動モーターと制御の技術でできるようになったからです。

四戸:マルチコプターというやつですね。プロペラ4つならクワッドコプター、8つならオクタコプター……。

松浦:そこで世界中を見渡してみると、人が乗れる電動のマルチコプターを作って飛ぼうとする計画がどんどん出ています。YouTubeを見ると彼らの動画がたくさんあります。それこそ、搭乗者の腰のあたりでプロペラを回すような危ない機体もあって、「ひとつ間違ったら胴体切断だから止めろ」と思ったりもしますが。あれ、四戸さんはどのように見ておられますか。

バッテリーと制御技術が飛行機械を変革する

四戸:おっしゃる通りだと思います。きっかけはまずバッテリーの進歩ですね。バッテリーのエネルギー密度が高くなって、より軽く、より大容量になりました。この結果、電動で空を飛ぶことが現実的になってきたわけです。

松浦:30年前にラジコンの模型飛行機で起きたことと同じパターンですよね。それまでエンジン機だったところに、バッテリーの進歩で電動モーターが使えるようになり、はるかに扱いやすいものだから、ラジコン機の電動化が一気に進みました。

 今回はバッテリーに加えて、もう一つの技術要素があります。制御です。制御技術の進歩でクルマの自動運転が出てきたわけですが、自動運転は、実は地上よりも空の方がはるかにやりやすい。

四戸:障害物がないですからね。自動運転の無人航空機は区分けされた空域、つまり3次元のブロックの中を、厳密に外れることなく飛行できます。

松浦:今や、ドバイでは警察用に有人マルチコプターを試験的に導入しようとしているじゃないですか。ひょっとしたら電動モーターと自動運転を組み合わせた飛行機械は、人間のモビリティ、動くための道具の革命になるんじゃないでしょうか。飛行機という機械の概念自体がひっくり返るかもしれない。

四戸:そうですね。ただし、2乗3乗の法則を皆さん失念されています。

編集Y:なんでしたっけ……。

松浦:面積は寸法の2乗に比例して大きくなるけれども、重量は3乗に比例して大きくなるという法則ですよね。マルチコプターも人が乗るほど大きくなると、成立しにくくなるということですか。

四戸:今話題になっている、無人で宅配便を配達するとか、上空から無人で交通違反車両を監視するといった用途に使おうとしているマルチコプターは、みな小さいですよね。積むのは比較的軽いカメラとか宅配の荷物などで、人間という重い荷物を積む必要はありません。マルチコプターはプロペラの推進力で浮上します。人を積むために大型化すると2乗3乗則でどんどん重くなりますから、大きくて重い機体ほど高出力のモーターと大容量のバッテリーが必要になります。

 では、なぜドローンでマルチコプターがここまで流行したかというと、松浦さんの言う通り電動モーターの制御が容易になったからです。

ドローン:無人航空機の総称。英語のdroneはハチの羽音のことで、ブンブンと音を立てて飛ぶことから無人航空機もドローンと呼ぶようになった。

マルチコプター:複数、通常は4つ以上のプロペラを上に向け、下方に吹き付ける空気の流れで浮上する航空機の総称。

回転翼とプロペラ、そしてサイクリックピッチコントロール

Y:人間の移動手段として使うには、2乗3乗則があるからモーターとバッテリーでは力不足、ということなんでしょうか。

四戸:現状ではその通りなんですが、もう一つ大きな問題があります。マルチコプターはプロペラを上に向けて浮上していますよね。マルチコプターとヘリコプターの違いって分かりますか。

Y:プロペラの数ですか。

四戸:ヘリコプターの上についているのはプロペラではないです。回転翼です。ヘリのことは日本語で回転翼機というじゃないですか。もっと具体的に言うとプロペラは連続的にねじれていますよね。ヘリの回転翼はねじれていません。あれは回っている翼なんです。

Y:……そういえば、そうですね。じゃ、マルチコプターは回転翼じゃなくて、プロペラなんですか。

プロペラ(左、カーチスP40戦闘機)はねじれているが、ヘリコプターの回転翼(陸上自衛隊のAH-64攻撃ヘリ)はねじれていない(写真:松浦晋也)

四戸:ヘリコプターもマルチコプターも回転面に平行に飛びます。ところがマルチコプターの場合は、この飛び方は非常に非効率的なんです。

Y:水平飛行が苦手、なぜでしょう。

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