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北方 雅人(ほっぽう・まさと)

日経トップリーダー編集長

北方 雅人

1991年一橋大学社会学部卒業後、日経BP社に入社。日経ベンチャー(現日経トップリーダー)、日経レストランなど経営誌の編集部を経て、2010年より日経トップリーダー副編集長。17年1月より現職。中小企業経営のスペシャリスト。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

ベンチャー最前線

営業に「売るな」と教育する社長

2017年10月12日(木)

 「教育化」という新しい動きが中小企業の中から出ている。教育化というと、学習塾などの教育産業を思い浮かべるかもしれないが、そうではない。「企業が顧客に何かを教える」という意味だ。「企業が顧客に何かを気づかせる」というニュアンスでもある。

 知らなかったことを教えてもらう。気づいていないことを気づかせてもらう。そうした企業の行為に対し、顧客は売買の関係を超えて感謝する。感謝の度合いが高ければ極端な話、金額のことはあまり気にならなくなる。教育化した事業は付加価値が高い。

 今回紹介する「ワコン」は、保冷箱などを販売する会社だが、「箱を売る」のではなく「温度を売る」ことで最適な運送方法を顧客に教えることで売り上げを伸ばす。商品を売ろうとせず、運送のソリューションを提供する姿勢が顧客の信頼に結びついている。

「売らなくていいの?」

 ワコン(和歌山県紀の川市)は段ボールや保冷箱など、主に梱包材の製造販売を手掛けている。こうした会社の営業担当者は、普通なら「箱を売る」のが仕事だ。

 しかし西田耕平社長は、営業担当者に「箱を売らずに、温度を売れ」と指導する。医薬品や食品など、保冷輸送が必要なものについて、どうしたら適切な温度管理ができるかを教えることを優先しなさいという意味だ。

ワコンでは右のような保冷箱を販売するが、西田社長(左)は「箱を売れ」とは言わない

 「お客様は自社製品を運ぶに当たり、最適な保冷輸送の方法が分からないまま、『この保冷箱を買えば大丈夫だろう』と注文してくることがよくある」と西田社長。顧客の言う通りに箱を売ったとしても、顧客のニーズに応えられるとは限らないのだ。

 例えば、ある企業から保冷箱の注文が入ったとする。しかし聞けば、既にその会社では保冷車を所有していることが珍しくない。保冷車があるのに、保冷箱が欲しいというのは何か理由がある。こんな場合は、顧客の本当のニーズは何かと細かく確かめる。

 保冷車は扉の開閉の度に、中の温度が上がる。特に真夏の炎天下では、庫内温度を一定に保つことが難しい。庫内温度が下がりきる前に、次の配達先に到着し、保冷車の扉を開かなければならないことがしょっちゅうあるからだ。

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