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中村 伊知哉(なかむら・いちや)

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授

中村 伊知哉

1961年生まれ。京都大学経済学部卒。慶應義塾大学で博士号取得(政策・メディア)。1984年、ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て郵政省入省。通信・放送融合政策、インターネット政策を政府で最初に担当するが、橋本行革で省庁再編に携わったのを最後に退官し渡米。1998年 MITメディアラボ客員教授。2002年 スタンフォード日本センター研究所長。2006年より慶應義塾大学教授。内閣官房知的財産戦略本部コンテンツ強化専門調査会会長、文化審議会著作権分科会専門委員などの委員を務める。
社団法人融合研究所所長、デジタルサイネージコンソーシアム理事長、デジタル教科書教材協議会事務局長、NPO「CANVAS」副理事長、社団法人ソーシャルゲーム協会事務局長、ミクシィ社外取締役などを兼務。

◇主な著書
中村伊知哉の「新世紀ITビジネス進化論」』(ディスカバリートゥエンティワン) 2011
デジタル教科書革命』(ソフトバンククリエティブ、共著) 2010
デジタルサイネージ戦略 電子看板最前線』(アスキー・メディアワークス、共著) 2010

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

中村伊知哉のデジタル政策の未来像

コンテンツ政策、国でわざわざやることです

2013年7月17日(水)

 本日より、「デジタル政策の未来像」と題した新コラムを開始します。アナログからデジタルへの移行により、IT(情報技術)やコンテンツがビジネス、文化、社会の全般に与える影響は強まるばかり。かつてないほど大きな産業構造の変化が起こっています。この流れにどう対応していくべきか。政策的な観点をベースに、デジタルにまつわるあれこれについて書いていきます。

 第1回のテーマとして取り上げるのは、筆者自身も深くかかわっている日本のコンテンツ政策。日本の競争力強化に向けてどう動いているのか。策定されたばかりの「知財ビジョン」に加えて、最近、何かと話題になっている「クールジャパン」政策と合わせて紹介しよう。

 1カ月ほど前となる6月7日、日本政府の知的財産戦略本部(知財本部)で「知的財産政策ビジョン」(知財ビジョン)が策定された。筆者自身、ワーキンググループの共同座長として同ビジョンの策定に大きくかかわった1人だ。

 読者の皆様にとっては、知財本部という名称の馴染みが薄いかもしれない。同本部は、2003年5月に内閣に設置された機関。紹介ページの文言を拝借すると「内外の社会経済情勢の変化に伴い、我が国産業の国際競争力の強化を図ることの必要性が増大している状況にかんがみ、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を集中的かつ計画的に推進するため」に設置されたと書かれている。簡単に言ってしまえば、知財を武器に世界市場での競争力を高めるために設置された機関だ。

 こんな知財本部の設立から丸10年。日本政府として取り組んできた知財戦略を総括し、今後10年の戦略を立てるために策定されたのが知財ビジョンだ。筆者自身、策定に携わった1人として、今後の知財戦略を進めていくうえでの大きな指針が示せたのではないかと感じている。

 具体的な知財ビジョンの内容だが、大きく2つの柱から成る。産業競争力強化策とコンテンツ強化策だ。前者は世界中で適用できる知財システムの構築策や中小・ベンチャー企業の知財マネジメント強化支援策として、職務発明制度や紛争処理機能などの施策が盛り込まれている。

 一方、後者はコンテンツ産業の活性化と対外的な発信の強化策が盛り込まれている。筆者は、後者のコンテンツ強化策を担当した。興味がある方は下記のページを参照願いたい(リンクはこちら)。

 日本政府がなぜ知財ビジョンを策定するのか。理由は明快だ。資源も安価な労働力もない日本が、世界での発信力を維持し続けるためには、知財の創造と活用以外に道がないからだ。

 知財戦略は、国防や教育と並ぶ国政の柱だと思う。産業政策の面で見ても、農業や工業、商業の政策よりも重要になりつつある。もちろん、政府への報告の中ではそこまでは記載できないが、個人的には知財政策がすべての政策の中で最も重要だと考えている。話題となっている環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉においても、未来を担う分野として優先してほしいくらいだ。

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