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柴山 千里(しばやま・ちさと )

小樽商科大学教授

柴山 千里

1993年学習院大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学、日本学術振興会特別研究員を経て、94年小樽商科大学商学部助教授。専門は国際貿易論。とくにアンチダンピング政策を研究している。近著「アンチダンピングと保護主義」(馬田啓一・木村福成編著『国際経済の論点』文眞堂2012)。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

ニュースを斬る

日本企業が忘れている切り札、「アンチダンピング」

2013年7月17日(水)

 日本は7月からTPPの交渉に参加する。また、それに先立ち6月には日中韓自由貿易協定(FTA)の準備会合が持たれ、日EU間の経済連携交渉も6月下旬から7月上旬に開かれるなど、日本はFTAへの道に本腰を入れようとしている。

 しかし、そこで問題となるのが日本のFTAの質の低さだ。昨年の通商白書によると、日本の締結した経済連携協定(EPA)に基づく貿易自由化率は、品目別ベースで見ると86~87%であり、他の先進国の95%以上に比べると立ち後れが目立つ。自由化が原則のEPAでありながら、日本が多くの例外品目を要求することが原因だ。このため、相手国からも自由化を強く引き出せないのである。

 中途半端なFTAをいくら積み上げたところで、質の良いFTAを結んだ国々との格差が広がるだけだ。これは、日本の輸出企業にとっては命取りになりかねないものがあり、ひいては日本経済全体の弱体化を招く恐れがある。

日本の貿易政策に対する感覚は19世紀

 しかし、強硬な保護主義圧力に配慮しなければそもそもFTA自体が結べないという問題がある。例えば、私の勤務する小樽商科大学のある北海道では、TPPに関し、農業団体だけでなく北海道市長会の決議でも「米、小麦、でん粉、砂糖、牛肉乳製品等の重要品目を関税撤廃の対象から除外すること」とし、場合によっては「交渉から撤退」を要求している。

 しかし、ニュージーランドのティム・グローサー貿易相が「どの分野も自由化から完全に除外すべきでない」と牽制するなど、世界の目は厳しい。また、現在難航している世界貿易機関(WTO)の農業交渉では、高関税品ほど関税率を大幅削減し、その例外扱いできる重要品目は有税品の4~6%と合意されている。日本の有税品は1000品目もあるため、米関連17品目と乳製品47品目で既に例外枠60は一杯になってしまう。つまり、日本の重要品目は数が多すぎ、現在のような保護水準を将来にわたり維持し続けることは、国際通商交渉の流れから見てどだい無理なのである。

 日本は重要品目を死守し世界の自由貿易の流れから取り残されて行くのか、保護主義圧力を押しのけ自由貿易の舵を切るのか?!….という二者択一の設問は、19世紀的とも言えるような古い感覚だ。20世紀初頭には、このような解決策をとらなくていい方法が編み出されている。それは世界の常識でありながら、日本ではあまりになじみがなかった。その方法とは、「貿易救済措置」である。

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