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吉田 忠則(よしだ・ただのり)

日本経済新聞社編集委員

吉田 忠則

1989年京大卒、同年日本経済新聞社入社。流通、農政、行政改革、保険会社、中国経済などの取材を経て2007年より現職。2003年に「生保予定利率下げ問題」の一連の報道で新聞協会賞受賞。

◇主な著書
見えざる隣人』(日本経済新聞出版社) 2009
農は甦る』(日本経済新聞出版社) 2012

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

ニッポン農業生き残りのヒント

「悪い人」にならなければ改革できない

2018年6月15日(金)

 異色の農協組合長、小田嶋契氏の取り組みを前回紹介した。コメの生産調整(減反)廃止1年目の今年、多くの産地が様子見を決め込む中で、小田嶋氏が率いる秋田ふるさと農業協同組合(横手市)は、主食のコメの大幅な増産に踏み切った。「無謀な増産」と懸念した農水省から真意を問われた小田嶋氏は、卸からスーパーにいたる詳細な販売計画を示し、懸念を払拭した。背景には時間をかけて培った売り先との信頼関係があった。今回はその続編。

「生産振興が農協の任務だ」と話す秋田ふるさと農協の小田嶋契組合長(横手市)

 前回を読まれた読者の中には、小田嶋氏の発言を過激と感じた人もいるかもしれない。そして、ひるまず信念を貫く言動は、相手が政治家でも鈍ることはない。以下は、2016年11月2日に自民党本部で開かれた農林関係議員の会合での発言。当時の部会長は小泉進次郎氏だ。

「先ほどから全農改革の話が出ているが、今までと同じでいいというところはどこにもない」

 小泉氏が主導した農業改革の最大の標的は農協の上部組織、全国農業協同組合連合会(全農)だった。改革派の組合長として知られる小田嶋氏の上の発言は、全農批判に同調するもののように思われた。だが、小田嶋氏はこう続けた。

 「産業振興は行政の大きな役割で、それには協力していくべきだと思っているが、農業をどうすべきかという話をするのであれば、我々民間を変えるよりも、法律や制度を根本的に見直すことが必要ではないか。政治家は法律や制度を作るのが仕事で、民間をいじくりまわすことは仕事ではないと思っている」

 この発言に対し、小泉氏は気色ばんで「ペンをなめて法律をつくるだけが政治家の仕事かと言われれば、そうではない」と反論したという。

 前回の内容に照らせば、全農の肩を持ち、おもねるのが真意でないことがわかる。ふるさと農協は全農と敵対はしていないが、全農に頼り切るような仕事はしていないからだ。当時、小田嶋氏に発言の意図を聞くと、「みんな小泉氏に呼ばれると、うれしくて舞い上がる。そこに違和感を持った」と話した。ちなみに、小田嶋氏は小泉氏のことを肯定的に見て期待を寄せている。それでも場の空気に同調しないのは、小田嶋氏らしいふるまいと言えるだろう。

 小田嶋氏は減反廃止を通し、農政や農協に対して何を感じたのか。今回は少しテーマを広げてインタビューをお届けしたい。

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