吉田 忠則

吉田 忠則

日本経済新聞社編集委員

ニッポン農業生き残りのヒント 韓国に脅かされ、米国の背中がみえない日本農業

危機打開に必要なのは国家戦略

  • 2017年06月23日(金)

 日本の農業技術は国際的にみてどんな水準にあるのか――。それを考えるため、カゴメがオランダのノウハウを学び、生鮮トマトの生産に本格参入したころのことを前回紹介した(6月16日「日本農業は20年前のオランダに追いつけたのか?」)。

 浮き彫りになった日本とオランダの違いは2点ある。まず、オランダは1980年ごろから環境制御の機械を使い、データを駆使した農業に挑戦してきた。いまも「勘と経験」に頼る日本の農業との最大の違いだ。もう1つは、オランダは栽培と販売の両面で優れた経営しか生き残れない競争環境が以前からあり、それがノウハウの向上を促してきたという点だ。

 今回はその続編。施設園芸のコンサルティングを手がける久枝和昇氏へのインタビューを通し、日本の農業を国際競争に立ち向かえるものにするための条件をさぐってみたい。

お金を払って指導を受けた

カゴメのトマト農場にいたとき、コンサルティングの大切さを感じたそうですね。

久枝:カゴメと共同で、広島県で2000年に世羅菜園を立ち上げました。栽培指導を受けたのは、オランダのグロダンという会社です。ロックウールの培地メーカーですが、この会社は商品を売るだけではなく、トマトの作り方のアドバイスもしています。

 1年目は自分たちの力でやってみました。2年目はグロダンの指導を受けたことで、収量が20%ぐらい増えました。当然、売り上げも増えました。ものすごくもうかるようになったので、農場の規模も拡大しました。

 彼らの持っているノウハウは、明らかに当時の我々よりも高いものがありました。そういう会社からサービスを受けることによって、どれだけ収益が増えるかを判断するのが経営です。世羅菜園は企業的な経営をしていたので、お金を払って指導を受けたんです。

 世羅菜園を立ち上げたとき、最初からグロダンの指導を受けたいと思っていました。ただ、カゴメの当時の判断は「1年目は自分たちで苦労してやるべきだ」というものでした。自分たちで試行錯誤をしながら現場を作るという経験はよかったと思います。自分たちでできることには限界があり、スピードを速めるためには外部の力を借りるべきだということがわかりました。グロダンの指導を入れたのは2年目からです。

日本の施設園芸の現状に警鐘を鳴らす久枝和昇氏(オランダのトマトの試験圃場で)

    著者プロフィール

    吉田 忠則

    吉田 忠則(よしだ・ただのり)

    日本経済新聞社編集委員

    1989年京大卒、同年日本経済新聞社入社。流通、農政、行政改革、保険会社、中国経済などの取材を経て2007年より現職。2003年に「生保予定利率下げ問題」の一連の報道で新聞協会賞受賞。

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