吉田 忠則

吉田 忠則

日本経済新聞社編集委員

ニッポン農業生き残りのヒント 中国で挑む農業、ブランド価値は「日本人」

有機認証を超える安心感

  • 2018年02月23日(金)

 政府が農産物輸出の旗を振っている。ずっと貿易自由化に身構えるばかりだった日本の農業を、輸出で振興しようとする攻めの姿勢は評価すべきだろう。ただ、「日本のコメはおいしいから、輸出をすれば増産できる」といったたぐいの短絡は戒めたほうがいい。

 牛肉や日本酒など、味ではっきりと差が出るものはまだいい。だが、批判を覚悟で言えば、日本のコメは本当にそんなにおいしいだろうか。プロの目利きからさえ、疑問の声が出ているのは、この連載で見てきたとおりだ(2017年2月3日「危うい幻想『日本のコメは世界一』」)。味で大差がないならば、競争のポイントは当然、値段になる。そして、日本の多くの農産物は価格競争力が低い。

 このことは、国際的な「和食ブーム」とは切り離して考えるべきものだ。すし店やラーメン店など、日本の外食チェーンの海外進出には目を見張るべきものがある。第3次産業でこれほど世界で通用するモデルを築いた国は、マクドナルドやスターバックスを擁する米国以外に前例がないだろう。だが、日系企業が現地で使っている食材は必ずしも日本のものではない。

農産物ではなく、人が

 日本の農業を批判したくて、こんなことを書いているわけではない。日本の農家の「もの作り」の努力には、リスペクトすべきものがある。だが、人件費や輸送費のことを考えると、農産物を輸出するのはそう簡単ではない。

 ならばいっそ、農産物ではなく、人が国境を越えればいいというのが今回のテーマだ。ブランドを支えるのは日本産ではなく、「日本人」。そして、その価値を思う存分発揮できる巨大なマーケットがある。中国だ。

 ブランド名は「ベジタベ」。中国語では、発音が近い漢字を当てて、「倍吉他胚」と書く。中国で200店を超すスーパーやホテル、レストランで農薬を使わずに育てたベジタベの野菜が販売されており、現地に住む日本人にとってはわりと身近なブランドだ。だが特筆すべきなのは、顧客のほとんどが中国人だという点にある。

    著者プロフィール

    吉田 忠則

    吉田 忠則(よしだ・ただのり)

    日本経済新聞社編集委員

    1989年京大卒、同年日本経済新聞社入社。流通、農政、行政改革、保険会社、中国経済などの取材を経て2007年より現職。2003年に「生保予定利率下げ問題」の一連の報道で新聞協会賞受賞。

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