吉田 忠則

吉田 忠則

日本経済新聞社編集委員

ニッポン農業生き残りのヒント イオンが挑む有機農業という難題

企業参入の意義を再考する

  • 2017年07月28日(金)
イオン農場が有機栽培で育てたズッキーニ(埼玉県日高市)

 今回は少し難しいテーマだ。イオンが自社農場で有機栽培に挑戦し始めた。企業の農業参入が一般の期待とは裏腹に栽培や販売でつまずくことが多い中、イオンは例外的に健闘しているほうだ。だが、ただでさえ農業は効率化が難しいのに、農薬と化学肥料を使わない有機栽培は難度がいっそう高まる。イオンはなぜ有機栽培を始めたのか。

品質、収量は慣行農法と変わらず

 イオンは農業子会社のイオンアグリ創造を2009年に設立した。北海道から九州まで全国21カ所で合計350ヘクタールの農場を運営している。野菜を中心とした農業法人としてはすでに国内最大級だ。

 有機栽培は埼玉県日高市の農場の一角で2016年9月に始めた。最初はキャベツや白菜、大根、カブなどいろんな種類の野菜を栽培してみた。「オーガニックで作れるものは、みんな作ってみよう」というノリだった。

 栽培がうまくいった品目もあれば、そうでないものもあった。キャベツや白菜は虫が出てしまった。まだテスト栽培という位置づけなので、面積は0.13ヘクタールしかない。狭い面積でいきなりたくさんの品目を作っても利益を出すのは難しいと考え、その後品目を絞り込んだ。

 日高農場を訪ねた7月上旬は、ナスとズッキーニを作っていた。畑を見たときの最初の印象は「雑草が多い」だった。農薬を使っていないことはわかったが、一方で有機農業にも雑草の繁茂を抑制する技術はある。だが、有機栽培を始めたばかりの取材でそこにフォーカスするのは酷というものだろう。

 注目すべきは、品質や収量が農薬や化学肥料を使う「慣行農法」とほとんど変わらなかったことだ。担当者は「収量は8掛けぐらいになると思っていましたが、今のところうまくできてます」と話す。あるいは、ビギナーズラックなのかもしれない。だが、心配していたほど有機農業で収量が落ちないことがわかったのは「収穫」だった。

    著者プロフィール

    吉田 忠則

    吉田 忠則(よしだ・ただのり)

    日本経済新聞社編集委員

    1989年京大卒、同年日本経済新聞社入社。流通、農政、行政改革、保険会社、中国経済などの取材を経て2007年より現職。2003年に「生保予定利率下げ問題」の一連の報道で新聞協会賞受賞。

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