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阿部 修人(あべ・なおひと)

一橋大学経済研究所教授

阿部 修人

1993年、一橋大学経済学部卒業。95年、一橋大学経済学研究科修士課程修了。2000年、米エール大学経済学博士(Ph.D)。1999年7月-2000年5月 米ブルッキングス研究所研究員、2000年一橋大学経済研究所専任講師などを経て、2011年4月 から現職。専門はマクロ経済学、応用ミクロ計量経済学。(写真:陶山勉)

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

「気鋭の論点」

小売りのビッグデータから分かったマクロ経済の真実

2013年9月27日(金)

 マクロ経済学は、世の中で最も論争の多い学問分野ではなかろうか。特に、経済政策に関わる意見の対立は、経済学の枠を超え、マスコミや国会を巻き込んだ激しいものになることが多い。近年でも、財政・金融政策や税制改革等に関する論争が、連日マスコミやネットを賑わせている。

 マクロ経済学では黎明期から市場経済を重視する新古典派と、積極的な政府介入を支持するケインズ派の2つの間で激しい論争が繰り広げられてきた。思い切って単純化すると、景気後退は生産力(供給)の低下と考えるのが新古典派であり、需要不足、と捉えるのがケインズ的なアプローチである。近年、これら2つのマクロ経済理論は技術的に急速に進歩し、多くの共通点を持つようになってきている。

 しかし、いまだ、景気循環がなぜ生じるか、政策として何が可能か、という問題に関しては、この2つの対立軸のどちらにどれだけ重心をおくかにより、大きな意見の違いが生まれてしまう。新古典派の立場からは、大規模なマクロ経済政策はリーマンショックや震災のような深刻な危機の時のみに正当化され、ケインズ派では、より頻繁に政府が介入するべき、ということになる。

 最近の「異次元の金融緩和」に関する論争には、多くの対立軸があり複雑になっているが、純粋な新古典派に従えば、急激な預金引き出しにより多くの銀行が倒産するような、信用危機でもない限り、大規模な金融政策を行う理由はない。

商品の価格は変化するのか?

 ケインズ派の流れを汲むマクロモデルによると、景気後退期に需要不足となる理由は、商品価格が需給を均衡させるように調整されず、変化しにくい、すなわち粘着(硬直)的であることが主な原因である。市場メカニズムが機能していないのである。需給バランスにショックがあり、しかし価格が動かない場合、調整はもっぱら数量でなされ、総生産の変動が大きくなり、時に需要不足となる。

 一方、もしも商品価格が市場を均衡させるように調整されれば、多くのケインズ型モデルは新古典派に近くなり、財政・金融政策の役割はほとんどなくなってしまう。商品価格の粘着性の有無、およびその重要性に関する認識の違いがケインズ派と新古典派の背後にある。無論、価格粘着性以外の要素にケインズ経済学の特徴を求める立場も存在するが、近年の多くのケインズ派モデルは、商品価格が自由に動くならば、景気循環や財政・金融政策の効果に関して新古典派とほぼ同じ結果となる。

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