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竹原 均(たけはら・ひとし)

早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授

竹原 均

1989年筑波大学博士課程社会工学研究科単位取得退学。93年、博士(経営工学)(筑波大学)。 エムティービーインベストメントテクノロジー研究所 (現三菱UFJトラスト投資工学研究所) 研究員、筑波大学システム情報工学研究科助教授を経て、 2006年4月より現職。専門は資産価格モデルに関する実証分析。 2010年6月から日本ファイナンス学会会長。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

ノーベル経済学賞2013

「実証ファイナンス」の偉大なイノベーター、ファーマ教授

2013年10月21日(月)

 2013年度のノーベル経済学賞(正確にはアルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞)が、ユージン・ファーマ、ラース・ピーター・ハンセン、ロバート・シラーの3教授に授与された。正直なところ「えっ、この3人の組み合わせで?」というのが最初の印象であったが、その後に「いや、 選考委員会は良く考えているのかも」と思い直した。

 個人的に、これまでもファーマ教授の「効率的市場仮説」とシラー教授の「行動ファイナンス」について、実証ファイナンスを専門とする研究者としての意見を求められることが多かった。そしてほとんどの場合に、筆者はファーマ信奉者、現代ポートフォリオ理論支持、行動ファイナンス否定派と色が付けられていて「市場は効率的だ」と熱く主張することを求められていたように思う。

 しかし、天動説と地動説のように効率的市場と行動ファイナンスとの関係を捉えるのは誤りであり、効率的市場も行動ファイナンスも、共にファイナンス論におけるパラダイムではあり得ない。ファーマvs.シラーを真偽、新旧という二値的視点から捉えることはほとんど無意味である。

弁証法の視点から見たファーマとシラーの立ち位置

 これまで活字にすることは避けていたのだが、効率的市場仮説と行動ファイナンスの関係は、ヘーゲルの意味での弁証法の枠組みによって整理すべきではないかとここ10年ほど筆者は考えている。つまりはファーマの「効率的市場」がテーゼ、それを否定するアンチテーゼがシラーによる「行動ファイナンス」であり、新たなファイナンスの基礎理論としての「ジンテーゼ」に到達するためのアウフヘーベンに必須となるのがハンセンらによる一連の研究であったのではないだろうか。

 ファーマの想定した投資家の合理性は、本来的に矛盾を内包しており、現実の市場では成立し得ない。一方、効率的市場仮説への実証的な挑戦からシラーは投資家の非合理性により資本市場の振る舞いを説明する行動ファイナンスへと至った。しかし行動ファイナンスは21世紀の‘new finance’ではあり得なかったし、実際のところ効率的市場と行動ファイナンスは互いを否定することによってこそ、共に存続している。しかし、例えばマクロ経済と資本市場とのリンケージが分析可能となれば、現実の資本市場を説明可能な資産価格モデルが存在する可能性は十分に残されている。そのために必要だったのが、ハンセン教授の一般化モーメント法 (Generalized Method of Moments, GMM)である。

 残念ながら「合理的で、同時に非合理的であるような暗黙裡に矛盾した資本市場」を説明し、資本市場の将来を予測可能なジンテーゼにしたファイナンス研究者はいまだにいない。しかしこのような筋道で整理すれば、3教授の同時受賞を筆者自身は納得できるのである。

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