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石黒 千賀子(いしぐろ・ちかこ)

日経ビジネス編集委員

石黒 千賀子

1988年日経BP社入社、日経ビジネス編集に配属され自動車、流通、食品業界などを担当。1994年休職して英LSEに留学し修士取得。日経ビジネス編集に復職し、流通、金融などを担当。その後、日経ナショナルジオグラフィック編集、日経ベンチャー(現トップリーダー)編集を経て、2003年日経ビジネス編集に 編集委員として戻り、現在に至る。主に、本誌の「世界鳥瞰」の欄を担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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イシグロ「何を忘れ、何を忘れまいとするのか」

2017年10月11日(水)

 2017年のノーベル文学賞に決まったカズオ・イシグロ氏は、受賞が決まった10月5日午後5時から、ロンドン市内にある同氏の出版を手がけてきた英出版社フェイバー&フェィバーの本社ビルで会見を開いた。メディア関係者がひしめく小さな白い部屋で、集まった記者との質疑応答が行われた。そのやり取りは、イシグロ氏の姿勢や人柄を随所に感じさせるものだった。

 イシグロ氏は「これから起きることには、作家だけでなく全員に責任がある」と語った。また、「日本人ならものごとをどう見るかという視点で育てられた」ことが作家としての大きな部分になっているとも強調した。ここにその時のやり取りを紹介する。今回は後編。

前編から読む)

今年のノーベル文学賞の受賞が決まり、10月5日当日、記者会見で話すカズオ・イシグロ。記者も左側のメディア関係者の中にまぎれている。(写真:読売新聞/アフロ)

あなたは『忘れられた巨人』でもそうでしたが、国や人間は「何を忘れて」「何を忘れまいとするか」を常にテーマの一つにしてきました。その観点から今の世界をご覧になってどう思いますか。

カズオ・イシグロ氏(以下、イシグロ):これは国家にとっては答を出すのが最も難しい問の一つでしょう。私は作家生活を続ける中で、こうした暗い過去を捨て去る個人というものに多くの時間を投じてきました。私たちが、どちらかと言えば「忘れ去りたい」と思っているものとどう対峙するかについて書いてきました。しかし、本当に過去と向き合えるようになった時、人は楽になるものだと思います。

 このことは国や様々な社会にもあてはまると思います。世界中に、恐らくどの国にも「埋めてしまって、なきものとしている暗い過去」があるでしょう。そして、自分たちにとって都合のよいバージョンの歴史を作り、その中で生きていこうとしている。現在、直面している多くの問題は、ここに原因があると考えています。ですから、私は作家として、どういう時には「忘れた方がいい」のか、そしてどういう時には「忘れない方がいい」のか、この問題を非常に興味深い問題としてとらえています。

「誰もが世界に貢献できるはず」

「ノーベル賞の精神」みたいなものがあると思いますか。もしあった場合、自分の作品はその精神を反映していると思いますか。

イシグロ:作家にとって、ノーベル賞精神なるものがあるのかどうかは分かりません。ただ、ノーベル平和賞は常に世界平和を願って与えられている賞だと思います。私はほんの数時間前までノーベル賞の歴史について注意を払ったことはなかったので、間違っていたらお許しいただきたいですが、私の母には、ノーベル賞は(アルフレッド・)ノーベルが世界で起きている暴力を何とかしようと考えて創設した賞だと聞かされました。

 世界平和あるいは人間性を進化させるというのは、どんな背景を持った人でも、世界中の誰にでも貢献できることです。私にとっては、それがノーベル賞の精神だと思います。

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