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山田 泰司(やまだ・やすじ)

ノンフィクションライター

山田 泰司

1988~90年中国山西大学・北京大学留学。1992年東洋大学文学部中国哲学文学科中退。1992~2000年香港で邦字紙記者、1997年の香港返還はもとより、香港市民の暮らしに焦点を当てた取材を重ねた。2001年の上海在住後は、中国国営雑誌「美化生活」編集記者、月刊誌「CHAI」編集長などを経てフリーに。この間、カルチャー、経済を中心に中国に生きる人・モノの取材を続けてきた。2010年からは、EMS(電子機器受託製造サービス)企業・市場に特化した情報サービスを提供するEMSOneのニュースサイト編集を担当、編集長も務め現在に至る。NHKラジオ海外リポーターは1998年から。

◇主な著書
食いつめものブルース 3億人の中国農民工』(日経BP) 2017

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

中国生活「モノ」がたり~速写中国制造

中国の大工はなぜイレズミを隠したのか

2018年6月21日(木)

現在開催されているワールドカップの1次リーグ・アルゼンチン対アイスランド戦で、アイスランドのラグナル・シグルドソン(白いユニフォーム)と争うアルゼンチンのリオネル・メッシ(紺のユニフォーム)。両選手にタトゥーが確認できる〔写真:IJMPA代表撮影(福地和男)

 サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会のテレビ観戦で連日寝不足という人も多いことだろう。中国はアジア予選で敗れてしまい本戦出場は叶わなかったのだが、中国のSNS「微信(ウィエポー)」を見ると、特に男性の投稿はここ数日W杯一色と言ってもいいほどである。中国の内陸に住んでいる、見るからに運動音痴の仕事仲間がSNSで「あー歳には敵わない。眠い。スペイン対ポルトガルは録画で見る。無念」とつぶやいて寝落ちしたりしている。サッカーに特に興味が無い私はテレビでJリーグをやっていても5分と観ていられないが、W杯となると、いくらハリルホジッチ監督の解任に納得がいかなくとも、格上のコロンビアとの一戦で香川がPKを決めた際には心の中で小さくガッツポーズをしたし、セルビア対コスタリカといった縁もゆかりもない国同士の試合でもなんとなく最後まで観てしまう。これが一流の持つ魅力ということなのだろう。

 しかし今回、W杯を観て改めて認識したのが、タトゥーを入れている選手の多さだ。アルゼンチンのメッシをはじめ、タトゥーをしている選手はもはやまったく珍しくない。

 一方で、W杯出場を逃した中国のサッカー界で、最近もっとも大きな話題になったのもタトゥーなのだ。

タトゥー選手は代表戦に参加できず

タトゥーをしていることで有名な中国のサッカー選手・張琳芃(黄色いユニフォーム、2018年5月に開催されたアジアチャンピオンズリーグから)。中国代表として出場した試合は60を超える。対する赤いユニフォームの選手は、ブラジルの代表経験を持つアレシャンドレ・パト。イタリア、イングランド、スペインのリーグでプレーした経験も持ち、現在は中国の天津権健所属。彼の腕にもやはりタトゥーが見られる(写真:Imaginechina/アフロ)

 中国は3月末、ウェールズ、ウルグアイ、チェコを招いてチャイナカップという国際親善試合を開いたのだが、この際、複数の中国選手がスリープやサポーターでタトゥーを隠して試合に臨んだことが話題になった。また、タトゥーをしている中国のサッカー選手と言って真っ先に名前の挙がる張琳芃はいずれの試合も欠場した。複数の中国メディアによると、中国サッカー協会が選手らに、代表戦でタトゥーを見せるのを禁じたのだという。理由は、中国共産党の道徳と価値観に反するからなのだそうだ。

 中国でも長い間、イレズミは負のイメージを持つものとして捉えられて来た。中国版ウィキペディアの「百度百科」によると、刑罰として顔にイレズミを入れる「黥刑」は、秦(BC778~BC206)代から始まり、途中消えたり復活したりを繰り返しながら清代(1616~1912)まで続いた。中国共産党が支配する中華人民共和国(1949~)の時代に入ると、一般的には、黒社会、すなわち暴力団や反社会的勢力の代名詞として捉えられてきた。この流れは日本とほぼ同じである。

 ちなみに、『イレズミと日本人』(平凡社新書)で山本芳美氏が、日本では昭和のヤクザ映画が「イレズミ=暴力団」というイメージをことさら強調することに一役買っており、やはりイレズミをしている鳶や火消しの古老たちにイレズミと言うと嫌がられ彫り物と言ってくれと注文を付けられる、と書いているように、中国でも、90年代に香港、中国、台湾で大流行した『古惑仔』等の香港のヤクザ映画で主人公たちが龍や虎のイレズミをしていたことが、「イレズミ=黒社会」のイメージを市民に定着させた部分がある。

今まで誰も描くことのなかった中国版ヒルビリー・エレジー
3億人の中国農民工 食いつめものブルース

この連載「中国生活「モノ」がたり~速写中国制造」が『3億人の中国農民工 食いつめものブルース』として単行本になりました。各界の著名人からレビューをいただきました。

●私はこの例外的に「間合いの近い」取材方法を成り立たせるために著者が費やした時間と労力を多とする。長い時間をかけて、息づかいが感じられるほど取材対象の間近に迫るというスタイルは現代ジャーナリズムが失いかけているものである。
(哲学者 内田樹氏によるレビュー「感情の出費を節約する中国貧困層のリアリズム」より)

●「ブルース」という単語に何とも(やや古びた)哀愁があり、そしてカバーの写真の農民工の写真には、記念写真では決して撮れない、私自身が感情移入して泣いてしまいそうなリアリティがある。
(中国問題の研究家 遠藤誉氏によるレビュー「執念の定点観測で切り取った、中国農民工の心」より)

●だが、最近の日本のソーシャルメディアでは、「親の時代はラッキーだった」、「親の世代より、子の世代のほうが悪くなる」といった悲観的な意見が目立つ。中国においても、農民工の楽観性や忍耐がそろそろ尽きようとしているようだ。
(米国在住のエッセイスト 渡辺由佳里氏によるレビュー「繁栄に取り残される中国の『ヒルビリー』とは?」より)

●同書で描かれるのは、時代と国家に翻弄される個人たちだ。歴史的背景や、共産党政権の独自性うんぬんといった衒学的な解説はさておき、目の前で苦悶している、もっと距離の近い苦痛の言葉だ。
(調達・購買コンサルタント/講演家 坂口孝則氏によるレビュー「年収3万の農民に未婚の母、中国貧民の向かう先」より)

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私自身もブラックベリーとともに育った人間。そんな会社がそのまま消滅するのを見たくなかった。

ジョン・チェン カナダ・ブラックベリーCEO