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乙部 信吾(おとべ・しんご)

開発・設計技術コンサルタント/株式会社O2 マネージャー

乙部 信吾

1977年生。2001年上智大学理工学部機械工学科卒業後、キヤノン株式会社に入社。非球面レンズの精密研磨加工装置の開発・設計に従事。2004年にはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)主導の国プロ「極紫外線(EUV)露光システム開発プロジェクト」に参画し、被加工物を原子単位で除去するIBF加工装置(イオンビーム・フィギュアリング)のメカ設計主担当として、独自のリンク機構を搭載した多軸ステージを開発。2006年から3D-CAD設計インフラ統合の全社推進リーダ。2011年に退職し、株式会社O2に入社。コンサルタントに転じた後は、「モジュール疎結合化」や「機能相関図化」といった独自の方法論を展開し、可視化・形式知化をキーにした各社の開発プロセス改革に取り組んでいる。海外での開発拠点立上げにも造詣が深い。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

「手触り」から考える製造業の未来

“終生、図面を書かなかった” デザイナーに学ぶ

2014年3月11日(火)

 図面なしでモノを作る。多くの技術者が、一度は考えたことのあるテーマだと思う。

 3D(3次元)-CADの活用、CAMとのデータ連携、製造現場での3次元組立図の活用など、各社が推進してきた「ものづくりのデジタル化」は、紆余曲折を経ながら、少しずつ華開き始めているようにも感じる。

ある設計技術者の意見、考える時間の重要性

 「図面を使わないモノづくり」 というスタイルは、でき上がりつつある? 先日、この図面レス推進というテーマで、あるメーカーの設計技術者と話をする機会があった。この会社は、設計の3D移行は完遂しているが、まだ製造工程や顧客対応の図面レス化にはたどり着いていないとのことだった。

 「御社の業務において、図面を無くすことはできますか?」 私は、その技術者に尋ねた。まあ、よくある質問だ。

 「無くせるけど、無くしてはいけない気がする」 その技術者は答えた。これもよくある回答だ。しかし、その理由が面白かった。

 「自分がドラフターで機械製図をしていた時に、自分の中に流れていた思考の時間と、今、3D-CADを駆使してモデリングをしている若手技術者の中に流れている時間が、あまりに違い過ぎる気がしている」

 どういうことですか? 私は続けて、その方に聞いた。

 「自分は、3D-CADを使ったことがないから、分からないだけなのかもしれないが、3D設計では、いきなり形状ができ上がってしまう印象がある。自分達の時代は、線を1本、紙の上に引く間に考える時間があった。考えながら線を引き始め、線を引き終える時に、ちょうどその思考が終わる感じだった。そして、頭の中でまとまった考えと、眼の前に引かれた線を比較し、良否の判断をした」

 そういう設計の仕方が、3D-CADではできる気がしない。その技術者は語った。

 「だから、今の技術者に対しては、うがった見方なのかもしれないが、あまりものを考えずに図面を書いている印象がある。そんな昔話ばかりをしていても仕方がないのは分かっているのだが、とにかく、図面ではないにしても、設計者が物事をきちんと考えるための手段を何かしら残したい。そうしないと、本当にまずいのではないかと思っている」

 私は前職で、設計業務のかたわら、3D導入推進の仕事をしていて、先輩技術者から反対を受けて苦労した経験があるのだが、その時に彼らが語っていた「3D設計では魂がこもらないから」とか「紙でないと構想設計ができないから」というような理由について、実はほとんど理解ができていなかった。自分の慣れ親しんできた道具を変えたくない言い訳くらいにしか、考えていなかった。

 だが、その設計技術者の方が私に語ってくれた 「時間の流れが早過ぎるから」 という意見には、納得できるものがあった。そして、開発設計における【考える時間の在り方】の重要性に、あらためて気付かされたのである。

「他力本願型」設計への着想

 どうやって「モノを作る能力」を企業に残していくか。各社が「開発設計力の強化」を中心に据えた戦略を練っている。

 その中心にあるのは、やはり【きちんと物事を考える時間】であり、それを確保することが、引き続き重要になっている。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師