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深尾 葉子(ふかお・ようこ)

大阪大学大学院経済学研究科准教授

深尾 葉子

1987年、大阪市立大学大学院前期博士課程東洋史専攻修了。中国内陸農村部における環境問題の社会的歴史的分析などを手がける。著書に『魂の脱植民地化とは何か』(青灯社)など。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

タガメとカエルの男女関係学

タガメとカエルが築いた偽装の王国の罪

2014年5月16日(金)

 いよいよこの連載も最終回を迎えた。これまで「タガメ・カエル構造」が高度経済成長の中で強化され、日本の戦後の「標準家庭」像を構成してきたこと、その後バブル崩壊や終身雇用の揺らぎのなかで、タガメ・カエル家庭を支えてきた財政的基盤、人口構成、人々のライフスタイルや意識に変化が生じ、極端とも言える少子化、非婚化、晩婚化を招くとともに、タガメ予備軍によるカエル争奪戦が激化している様子を紹介した。

 しかし、当のタガメ・カエル族も、時代の変化に伴って様々な変容を強いられ、思った通りにいかずに苦戦しているのが現実だ。

環境変化で苦戦するタガメ女たち

 まず、首尾よくカエルを捕まえたと思って結婚するも、夫の収入だけではやってゆけず、やむを得ずパートに出て働かされる

 「働かされタガメ」。

 子供の教育費や住宅ローンの補助にと積極的にパートに出る人もいる一方で、専業主婦を夢見て医者と結婚したのに、夫から突然「開業するから資金を貯めるためにお前も働いて欲しい」と言われ、なぜ自分が働かなければいけないのか納得がゆかず憤懣やるかたない、という例もある。

 ほかには、スペックの良い男性だと思って結婚したら、突如脱サラをして田舎暮らしを始めると言われ、現状についてゆけず、かと言って体裁が悪いので離婚もできず、両親などに世話になってなんとか生活をやりくりするケースのように、そもそも理想のタガメ生活を実現できない相手と思わず結婚してしまった、

 「間違えタガメ」。

 同じく、スペックの良い男性だと思いきや、実は芸術家肌の自由人で、あまり美味しくもなかったため、さっさと慰謝料を請求して出てゆく、

 「喰い損ないタガメ」。

 など、様々な亜種が周囲の人々から報告されている。

 さらに、東京の高級マンションで、精神的に追い詰められた女性がワインボトルで夫を殴り殺し、死体をゴミ袋に入れて遺棄した上、友人や周囲に対しては夫を殺害された被害者を演じたという有名な事件も起こった。バブル崩壊やリーマンショックとともに現れた、

 「破滅しタガメ」である。

 ある女性は外資系のコンサルティング会社に勤務するエリート社員と結婚し、年収数千万円の生活を存分に味わっていたが、ある日コンサル会社の日本からの撤退に遭って夫が失業。再就職するも、年収は日本の一般的サラリーマン水準の700万円に下がってしまった。しかし都心の高級マンションを借り、毎月100万円に及ぶ生活費を使っていた状況がどうしても変えられない。もっと家賃の安いところに引っ越ししようという夫の言葉にも耳を貸さず、かつてのブランドショップでの買い物や友達同士の付き合いなどを維持しようとした。あっという間に家計は破綻、ついにはカードローンにも手を出して離婚となり、元も子もなくなった。

 タガメ的消費の弱点の一つに、状況に応じて臨機応変に戦略を変更するのが苦手であることが挙げられるが、それまでの生活スタイルを変えられずに崩壊と破綻に向かうケースは、実はかなり多く見られた。他者に依存し、リスクと状況に応じたフィードバックを断ち切って生きてきたツケとも言える。

 このように、自分自身で経済的に自立して生きてゆくことを放棄し、結婚により身分の安定を望むという「タガメ願望」も、このご時世では極めてリスクの高い選択となりつつある。

 大抵、こうした女性たちは大卒もしくは短大卒で、企業などで一定期間働いた経験を持っている。しかし、結婚を機に敢えて寿退社を選び、専業主婦の道に入る。そもそも夫婦二人のうちの一人だけの収入で生活を支えることは家計としては非常に不安定な構造なのだが、戦後日本はそれが「安定」であると履き違えることによってモーレツサラリーマン家庭を実現してきたのである。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官