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村田 吉弘(むらた・よしひろ)

「菊乃井」三代目

村田 吉弘

1951年、京都・祇園の老舗料亭「菊乃井」二代目の長男として生まれる。立命館大学在学中、フランス料理修行のため渡仏。大学卒業後、名古屋の料亭「加茂免」で修行を積む。1976年実家に戻り、「菊乃井木屋町店」を開店。93年菊の井代表取締役に就任。2012年「現代の名工」「京都府産業功労者」、13年「京都府文化功労賞」を受賞。現在、NPO法人日本料理アカデミー理事長。自身のライフワークとして、「日本料理を正しく世界に発信する」「公利のために料理を作る」

◇主な著書
儲かる料理経営学』(日経BP) 2014

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

最近のトピックス

 2013年12月、和食がユネスコの無形文化遺産として登録されました。まだ途上ではありますが、日本料理が世界の中で着実に浸透しつつあることの現れでしょう。文化遺産ですから、当然、その国の文化としてきちんとした形で継承されていかなければなりません。その一環で、2016年を目標に、京都府立大学に和食の学部が新設される運びとなりました。私自身も、これまでなかった日本料理の体系的な書物の制作に取り掛かっています。

 これまででも菊乃井の仕事以外、“村田個人”として、機内食での京懐石の提供や他店のプロデュース、日本料理アカデミー(特定非営利活動法人)による食育、若手料理人の研鑽活動など、日本料理を世に広める活動を続けてきました。これらも、若くして抱いた志の実現のためです。多くの方に助けられながら、少しずつ輪が広がっていったのではないかと思います。

 振り返れば、手探りで多くのパズルを手掛けてきて、その実績が今、ピタっとはまって結実し、ようやく長年の思いが成就できたような感覚を得ています。志を一度も変えず「思い続けてきた」からこその結果だと信じています。

 諦めずに続けていけば、思いはいつか実現するのです。今、そしてこれから日本料理を担う者は、ぜひ、自分の志や夢を持ち続けてほしいと願ってやみません。

日本料理を世界に広げる 料理人の経営学

発想の転換で食のスタイルは変えられる

2014年7月16日(水)

 「利他の精神」から、40代からは菊乃井だけでなく“村田個人”の仕事も受けるようになりました。食に関するプロデュースもその一環です。

 1998年に、東京でアークヒルズの回転寿司店をプロデュースしました。「ここで飲食をやりたいけど、何をしたらいいか」とアークヒルズの開発業者から依頼があって受けた仕事です。寿司はもともとファストフードから始まりましたから、回転はしていてもいい。でも、「ただ安いだけ」だけでなく、楽しんでもらえる店にしたいと考えました。

 店のコンセプトは「女性一人で入れる店」を意識しました。大理石で前面ガラス張り。寿司は、まがいものでなく上等な素材を出すようにしました。1皿マグロ2貫で400円。巷の回転寿司より値段は少々高いけど、「ちゃんとしたものをちゃんと出せば」いけると踏んだのです。

村田吉弘(むらた・よしひろ)
京都・祇園の老舗料亭「菊乃井」3代目。1993年、菊の井代表取締役に就任。現在、NPO法人日本料理アカデミー理事長。自身のライフワークとして、「日本料理を正しく世界に発信する」「公利のために料理を作る」(写真:菊池一郎)

 当時、アークヒルズの回転寿司店はずいぶん話題になり、ここから高級回転寿司が世に広まったのではないかと思っています。今では“高級”という言い方はしなくなりましたけどね。

 なぜ“高級”な回転寿司を思い付いたのか。それは以前に、回転寿司で考えさせられたことがあったからです。当時、幼稚園に行っていた娘に「誕生日にどこでも連れていってやる。どこがいい」と聞くと、「回っている寿司屋へ行きたい。プリンもメロンも回ってるんだって。友だちが行って良かったと言ってた」

 「いやあ、お父さん、そこは行けへんな」と言うと、「子供に、嘘ついたらあかん」と家内が言うので、サングラスに帽子をかぶって行くことなりました。

 店に入ってみると、客はにこりともせず流れてくる回転寿司に向かって黙々と食べている。鳥小屋の鳥みたいです。「これはおかしい。根本的に間違っている」と直感的に感じましたね。支払いでは、家内に財布を渡してこそこそと退散したのですが、なぜ、こそこそしなければならなかったのか。

 それは、休みの日に家族連れで行くには少々恥ずかしいと思うからでしょう。中に知り合いでもいたらたまらない。それなら、堂々と行っても恥ずかしくない回転寿司店を作ろうという発想で取り組んだのです。

 アークヒルズの店は、その後十数年して閉店してしまいましたが、新しい発想によって業界に風穴は空けられたと思います。

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