• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

國井 修(くにい・おさむ)

世界エイズ・結核・マラリア対策基金(通称「グローバルファンド」The Global Fund)戦略・投資・効果局長

國井 修

1988年自治医科大学卒業、公衆衛生学修士(ハーバード大学)、医学博士(東京大学)。内科医として勤務しながら国際緊急援助NGOの副代表として、ソマリア、カンボジア、バングラデシュなどの緊急医療援助に従事。国立国際医療センター、東京大学、外務省、長崎大学、UNICEFニューヨーク本部、同ミャンマー事務所、同ソマリア支援センターなどを経て現職。これまで、110カ国以上で緊急援助、開発事業、調査研究、教育に関わった。

◇主な著書
国家救援医 私は破綻国家の医師になった』(角川書店) 2012
災害時の公衆衛生 私たちにできること』(南山堂) 2012

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

最近のトピックス

ソマリアからスイスのジュネーブに活動拠点が移りました。 世界エイズ・結核・マラリア対策基金戦略・投資・効果局長として新たな課題に取り組んでいます。

終わりなき戦い

アフリカで考えた、虐待の現実と「真の女子力」

2017年11月27日(月)

若い女性たちをエンパワメントする仕組みをいかに構築していくか、強く問われている(写真:AP/アフロ)

 世界では、未成年に対する性的虐待や暴力があとを絶たない。

 今年、日本でもベトナム国籍女児に対する殺人事件が報道されたが、殺人に至らなくとも、性的虐待や暴力が被害者に与える傷跡は大きく、レイプは特に「魂の殺人」と呼ばれることもある。

 被害者は、世間体や将来を考えて黙って泣き寝入りすることが多く、特に、未成年は言いたくても他人に伝えることがなかなかできない。加害者が家族や親戚、知人であればなおさら表沙汰にされず、なかなかその実態を掴むのは困難と言われる。

22か国調査から浮かび上がる実態

 性的虐待・暴行に関する日本初の実態調査として1998年に行われた『子どもと家族の心と健康』調査があるが、その結果を知って心が痛んだ。回答を得られた18歳以上39歳以下の女性1282名、男性299名のうち、なんと39%の女性、10%の男性が18歳までに性的虐待・暴行を受けていたという。しかも、13歳未満(小学校卒業以前)までに被害を受けた割合は、女性16%、男性6%もいるのだ。

 世界でも様々な調査が行われてきたが、中でも2009年に22か国での65調査をメタ分析した論文は国際比較としても有意義である。それによると、18歳未満に性的虐待を受けた人の割合は22か国平均で女性20%、男性8%。なんと女性の5人に1人が若くして性的被害を受けていた。男性も12人に1人の割合で被害を受けている。

 中でも18歳未満に性的虐待・暴行を受けた女性の割合が高い国は、オーストラリア(38%)、イスラエル(31%)、スウェーデン(25%)、アメリカ(25%)、スイス(24%)。これらと比較しても、上述の日本の調査結果は高い値を示している(調査方法が異なるので単純比較はできないが)。

 さらに、この22か国の調査を地域別にみると、18歳未満に性的虐待・暴行を受けた男女の平均値はアフリカが最も高い。中でも南アフリカの女性に対する性的虐待は44%。半数近い女性が被害を受けている。

 もちろん、この値が高くとも低くとも、性的虐待・暴行を受けた被害者の心の傷は深く、なかなか癒されることはない。中にはこの心的外傷で、社会での人間関係も築けず、一生を台無しにされた人もいる。

 さらに、この性的虐待・暴行は、心的外傷のみならず、実際に身体を蝕み、死に至らせる病を導くこともある。その病とは、かつて「殺人ウィルス」とも呼ばれたHIVである。

 以前に比べて報道されなくなったので、HIVはもはや脅威ではないと考えている人が多いと思うが、今でも世界には推計3600万人以上の感染者がおり、毎日平均3000人を死に追いやる病である。最近騒がれていたエボラ出血熱の流行による死亡数(3年間で約1万1000人)と比較すると、HIVの威力は明らかである。

 予防できる病気でありながら、新たに毎日5000人が感染している。うち1000人以上が、本来なら夢や希望で溢れる世代、15-24歳の思春期女子と若い女性である。

 アフリカには、この思春期女性の新規HIV感染率が同世代の男性よりも10倍以上高く、また、国全体の新規HIV感染者のうち80%が若い女性という国もある。HIVに感染していながら、自分が感染していることを知らない女子が8割という国もある。

 その結果、HIVは今でもアフリカ女性の多くを死に追いやり、特に15-44歳の女性の死因のトップであり続けているのである。

続きを読む

著者記事一覧

もっと見る

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

日本の経営者は、経験を積んだ事業なら 失敗しないと思い込む傾向がある。

三品 和広 神戸大学教授