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北尾 早霧(きたお・さぎり)

米ニューヨーク市立大学ハンター校兼大学院センター准教授

北尾 早霧

1996年早稲田大学政経学部卒業、米ハーバード大学ケネディスクール修士課程修了、米ニューヨーク大学からPh.D.取得(経済学)。米ゴールドマン・サックス証券、米南カリフォルニア大学助教授、米ニューヨーク連邦準備銀行シニアエコノミストなどを経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

「気鋭の論点」

年金財政の破綻を回避する4つの選択肢

2014年8月18日(月)

 高齢化の進展で、年金制度がこのままでは維持できないことは明らかだ。筆者は米国における年金財政を均衡させる4つの具体的な政策案を提示し、それぞれの政策が引き起こす経済への影響及び厚生効果を分析した。

 筆者は論文「Sustainable Social Security: Four Options」(2014 年中に、学術誌「Review of Economic Dynamics」に掲載予定)において、米国における年金財政を均衡させる4つの具体的な政策オプションを提示し、それぞれの政策によって引き起こされる経済への影響、および厚生効果を分析した。

保険料収入を増やすか、支給額を引き下げるか

 それぞれの4つの政策が目指すところは皆同じである。すなわち、高齢化による人口構造の変化を踏まえた上で、長期的視野に基づいた持続可能な年金システムの構築をすることだ。いずれの政策オプションにおいても、必要条件は年金支出と収入を一致させることである。1つ目のオプションは所得にかかる保険料率を引き上げて収入を増やす政策であり、残りの3つは、異なる方法により年金平均支給額を引き下げて総支出を減らす政策である。

 いずれのオプションを取るにしても、小手先の調節では年金財政のサステナビリティという大問題の抜本的な解決策にはならない。当然のことながら、どの政策が実施されるかによって、我々1人ひとりの行動も変化する。個人の行動が変われば、資本、国内総生産、金利、賃金といったいわゆるマクロ変数も変動する。マクロ変数が変われば当然、我々の行動もそれに反応する。

 年金額が変動したり、増税により手取り賃金が大きく変化したりすれば、個人の消費、貯蓄、労働に関するインセンティブや人生計画に大きな影響を与える。

 例えば、年金の大幅削減が決定されれば、日々の支出を減らして老後に向けた貯蓄に回す人が増えるかもしれない。貯蓄が大幅に増えて銀行の預金残高が増えれば、企業が投資に使うことのできる資産が潤沢になり、金利が低下するかもしれない。

 企業が借り入れを増やし生産高が伸びれば人手が足りなくなり、求人倍率が上がって賃金が上昇するかもしれない。収入が増えて仕事のオプションが増えれば、引退を遅らせてもう1年長く働いたり、残業を増やしたりする人が増えるかもしれない。より多くの資本や労働力が生産活動に向けられれば、さらに多くのモノやサービスが生まれ、経済成長が促進されるだろう。

 年金改革に限らず、税制改革や一般的な社会保障制度改革など、大きな政策の変化による影響を分析するには、個人や企業のミクロ主体とマクロ経済とがどう相互作用するかを考慮に入れることが重要である。このような分析を実現するフレームワークを、マクロ経済学では「動学的一般均衡」と呼んでいる。

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