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辻山 仁志(つじやま・ひとし)

ゲーテ大学フランクフルト助教授

辻山 仁志

2005年東京大学経済学部卒業。2007年、同修士課程終了。2013年、ミネソタ大学より経済学博士号取得。2013年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

「気鋭の論点」

米国、医療保険制度改革の教訓

2014年10月8日(水)

 社会保障のあり方がさかんに議論されている。社会保障は本来、広く社会保険や社会福祉一般を指すものであり、制度の総体として捉えられる。日本でも昨今、財政健全化や再分配といった観点から「社会保障と税の一体改革」が注目を集める一方で、最低賃金額の改定や生活保護法の改正が関心を呼んだ。

 医療保険も社会保障の一環であり、実際に日本をはじめ多くの先進国では皆保険制度として公的に運営されている。一方、米国でSocial Security(社会保障と訳される)と言えば、年金制度や障がい者保険を指すことが多い。米国において医療保険は原則個人が自らの責任で取得すべきとの考え方が一般的で、高齢者や貧困者を対象としたものを除き、医療保険そのものを社会保障とみなすことはなかった。

 本稿では、2014年から本格始動した医療保険制度改革、いわゆるオバマケアとその影響について考察する。この改革は、米国有史以来で最も大きな政府介入の1つとされ、これまでの医療保険制度を社会保障の枠組みで捉え直す大きな変革であるといえるだろう。医療保険制度崩壊の可能性が叫ばれる日本についても、ここでの議論が役立つかもしれない。

「パッチワーク」になぞらえられる米国の保険制度

 まず、これまでの米国の医療保険制度を振り返っておこう。米国の保険制度はしばしば「パッチワーク」になぞらえられてきた。これは国民の加入する保険が多岐にわたるからで、ほかの先進国にみられるような公的保険が供与されるのは65歳以上に限られていた(メディケア)。また、貧困層向けのメディケイドという公的保険も用意されており、65歳未満の約15%がカバーされている。

 しかし、メディケイドは所得制限以外にも厳密な加入制限があり、単身世帯や子どものいない世帯は加入できないことが多い(州により異なる)。子どものいる世帯であっても、親への保険付与は母子家庭に限ることが主流となっている。

 公的保険が利用できない人は、民間保険への加入を検討することになる。65歳未満のうち約3分の2は雇用主を通じて保険を購入している。この種の保険の保険料はプランの内容と年齢のみによって決まることが一般的で、審査も簡単な上に保険料の大半が雇用主によって支払われることから、魅力的なオプションになっている。実際、雇用主を通じて保険取得可能な場合の取得率は100%に近い。

米国の保険で起こり得る深刻な「逆選択」

 では公的保険が利用できず、雇用主からも保険が提供されないとしたらどうすればよいのだろう。このような状況は主に、中小企業の従業員やパートタイムの従業員、そして失業者に多く見られる。この場合、自分で民間の保険会社が提供する保険を契約するしかないが、ここでいわゆる「逆選択」が問題となってくる。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官