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崎谷 実穂(さきや・みほ)

ライター/編集者

崎谷 実穂

北海道札幌市生まれ。人材ベンチャーの制作部でコピーライティングを経験した後、広告制作会社に転職。新聞広告の仕事を専属で担当し、100名近くの著名人・タレントなどに取材。2012年に独立。現在はビジネス系の記事、書籍のライティング・編集を中心に活動。構成協力に『振り切る勇気 メガネを変えるJINSの挑戦』『ニコニコ哲学』など。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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「ああ松島や」と「まじやばい」が重なる未来

2017年5月11日(木)

Twitter カンバセーション・マーケティング ビジネスを成功に導く"会話"の正体』の解説者であり、マーケティング、イノベーション研究を専門とする鷲田祐一先生と、『ツイッターの心理学:情報環境と利用者行動』共著者であり、コミュニケーション、ソーシャルメディア研究を専門とする佐々木裕一先生の対談シリーズは、今回が最終回です。多くの人がサービス提供者に飼いならされてクリエイティビティのある面が削り取られていく可能性があると悲観的な予想をする佐々木先生に対し、日本人の利他性をもとに楽観的な主張を展開する鷲田先生。これからの情報社会は、どうなっていくのでしょうか。

利他的欲求が強いことが、日本社会の底力に

鷲田祐一(以下、鷲田):佐々木さんは前回、「自分はペシミストだ」とおっしゃっていましたが、僕はわりと楽観主義者なんですよ(笑)。人の善良さを信じているというか。というのも僕は、日本でアメリカよりもユーザーイノベーションが起こりやすいのは一種の利他性があるからだと考えているんです。例えば、ネットでわからないことについてヘルプを出すと、詳しい人が集まってきて解決してくれるとか。『電車男』でも、その力が発揮されていましたよね。

佐々木裕一(以下、佐々木):古き良きウェブ、という感じもしますが、今でもそういう現象がなくはないですね。

佐々木裕一(ささき・ゆういち)
1968年生まれ。92年、一橋大学社会学部卒業後、電通に入社。その後、アーサー・D・リトル・ジャパン、NTTデータ経営研究所に勤務。2009年、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程修了(政策・メディア博士)。現在、東京経済大学コミュニケーション学部教授。ソーシャルメディアとネット広告、情報サービス産業などの研究に取り組む。ソーシャルメディアの収益モデル史・社会史に関する15年以上にわたる調査を継続中。

鷲田:近親者やコミュニティに対する利他的な貢献欲求って、製品の開発現場でもよく見られるんです。例えば、なにか新しい製品について社内でプレゼンする。そういうときに、日本企業の開発者って開発理由などについて「妻がこういう悩みを抱えていて……」「うちの子に見せたらすごく喜んでいて……」みたいな話をするんですよ。それで、経営陣も「だったらニーズがあるな」とか「この製品は大丈夫だな」という判断を下す。こういうことがまかり通るって不思議じゃないですか?

佐々木:MBAホルダーの多いアメリカ企業ではありえないでしょうね。

鷲田祐一(わしだ・ゆういち)
1968年生まれ。91年、一橋大学商学部卒業後、博報堂に入社。生活総合研究所、イノベーション・ラボで消費者研究、技術普及研究に従事。2008年、東京大学大学院総合文化研究科博士後期過程を修了 (学術博士)。2011年、一橋大学大学院商学研究科准教授、2015年、同教授。ミクロ視点での普及学、グローバルマーケティング、ユーザーイノベーション論、未来洞察手法、デザインとイノベーションの関係などを研究している。

鷲田:直感の働く場所が違うんですよね。アメリカでは、主観はまず排除する。そしてデータで客観的な根拠を示す。そのほうが説得力あるんです。もし、主観をもとに説明するなら、自分がいかに社会的に優れているかということから入る。でも、日本の場合は直感的に良しとされるのが「家族の幸せ」なんですよね。そこが根源にあるなら大丈夫だ、と判断する。そしてこれはけっこう正しくて、利他的な貢献欲求があったからこそ、日本企業の「カイゼン」はうまくいったのだと思います。

佐々木:利他的欲求が、社会全体の強みになっていると。

鷲田:日本では家族に何かしてあげたい、という動機でパソコンに詳しくなったり、ものづくりを始めたりした人ってけっこう多いと思うんですよ。アメリカでもそういうことはなくはないけれど、イノベーターと言われる人はそういう動機では動いていないですよね。新しいものへの開拓精神、上昇志向、権力志向といったものを強く持っている人が多いという印象です。

佐々木:利他性への配慮は確かに日本の底力になっているかもしれませんね。それは雇用関係においてもそうで、アメリカの場合はジョブディスクリプションで書かれている業務しか基本的にはやらない。でも、日本では会社のために、チームのために能力を発揮するという場合が多いでしょう。ただし客観的なデータではなく、感情で判断するということが、マイナスに働く場合もありますよね。「おもしろければいい」という感情で人のコンテンツをパクったり、ヘイトスピーチ的なものを拡散したりするのも、感情が優位だからなのかなと。

鷲田:そうですね。そこはたしかに注意すべき点だと思います。ただ、僕はユーザーイノベーションという点においては、これからも日本人の利他性がうまく働くと思っているんです。むしろそこをないがしろにして技術開発偏重になっていることが問題だと思っています。

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