• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

森田 朗(もりた・あきら)

国立社会保障・人口問題研究所所長

森田 朗

1951年、兵庫県生まれ。76年、東京大学法学部卒。行政学、公共政策の研究者として、東京大学大学院法学政治学研究科教授、東京大学公共政策大学院教授、同大学院院長、総長特任補佐、東京大学政策ビジョン研究センター長、学習院大学法学部教授などを歴任。東京大学名誉教授、前厚生労働省中央社会保険医療協議会会長。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

人口減少時代のウソ/ホント

「撤退戦だが、負けない」新たなプランが必要だ

2016年12月27日(火)

 論客5人による「賢人会議」、その後編をお届けする。「少子化」「超高齢化」時代における「社会保障」「地域再生」はいかにあるべきか。日本労働組合総連合会会長の神津里季生氏、東京大学 政策ビジョン研究センター特任研究員の藤田正美氏、一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事の木下斉氏、個人投資家で作家の山本一郎氏が、森田朗所長率いる国立社会保障・人口問題研究所に集い、現実を直視しながら、「次の一手」を探る。

(写真=鈴木愛子、以下同)

前回から読む)

崖っぷちまで追い詰められないと、組織は変わらない?

山本:木下さんは1982年生まれで、今回集まったメンバーのなかでは一番若いですよね。その点で、社会に対する認識が我々とは違うのではと思ったのですが、そのあたりはいかがでしょうか。

木下:私が小学校に入学したのが、1989年。1991年から経済の安定成長が終わり、失われた10年が20年に延びて、まあ物心ついてから失われ続けているわけです(笑)。自分たちの世代が社会のマジョリティではない、ということも自覚しています。頼りにしていた会社がつぶれ、システムが崩壊して、親が大変な目にあった友人もたくさんいる。企業とか社会に対する信頼感は希薄ですね。同時に危機感を強く抱いていて、自分でどうにかしないといけないと考えています。

木下 斉(きのした・ひとし)一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事

山本:そういう感覚は、世代で共有しているものですか?

木下:そうですね。社会を変えようと思っている同世代は民間企業にも役所にもたくさんいて、集まって飲んだときにそういう話になります。でも自分たちも34歳、つまり30半ばになって、課長職につく人も出てきた。管理される側からする側に回った時に、現行のシステムに組み込まれないためにどうするかというのが、今の関心事です。論理的には正しいことがわかっていても、それが短期的に自分の評価につながらないことはよくありますからね。

山本一郎(やまもと・いちろう)個人投資家・作家

山本:上の世代と同じことをしないために、どうすればいいか、と。確かに学校も家庭も職場も、自分に成功したり安定のための知恵を授けてくれないとしたら、誰を頼ったらよいのか分かりませんしね。

木下:そのなかでも、「今いる組織を変えていこう」という人と、「いったんすべてゼロにしてしまえ」という人で意見が分かれます。過激派じゃないですけど、日本はいったんつぶれないと変わらない、と考えている人も一定数いますね。それ、私もわからなくはないんです。本当に行き詰まった時にやっと状況が変わる、というのは、地方でも実感しています。

山本:なるほど、やはりそういう感じですか。例えばどんな例がありますか?

すべての橋は残せない

木下:林業で、外国産の木材が入ってきてダメになるといわれていたときは、まだ助成金が出ていたし、特に変化が起きなかったんです。でも予算が底をついて、森林組合も超高齢化して、世代交代も難しいとなったときに、やっと関係者は重い腰を上げた。国の予算でつくったものの、使っていなかった工場も、民間で使ってくれる企業があったらそこに貸そうとか、外国産木材とは違うDIYでできる床材市場に打って出ようとか、そういう発想になっていくんです。従来のシステムが本当に崩れた時に、ようやく新陳代謝が生まれる。決定的破綻までいく手前で変革が起きる、というのはけっこうよく見る光景です。

藤田:地銀革命やりましょうよ。地銀が変わったら、けっこう全体的に地方は大きく変わると思います。

藤田正美(ふじた・まさよし)東京大学 政策ビジョン研究センター 特任研究員

木下:そこは大きいですね。あと、アメリカの「地域再投資法<注>」のような制度を取り入れるかどうかという議論はずっとされていて、いよいよそのときかなと思っています。地元で集めた預金をしっかり地元に投融資することが、地方の発展に必要です。例えば、都市圏の公共施設整備をするときも、民間施設と公共施設をセットにして、民間施設の収益と固定資産税の収入で公共施設をまわしていくようにすれば、持続可能ですよね。都市機能を集約するときに、セットで支援制度をガラッと変えられると、地方で余っている預貸できていない資金が地域のなかでまわり始めるはずです。

<注> 低所得者層などが住む地域への、金融機関の融資差別をなくすためにつくられた法律。銀行などの預金を扱う金融機関に対し、低所得者や中小企業を含め、営業地域の金融ニーズの充足に貢献する責任があることを明らかにし、その評価基準を満たしているかどうかで銀行の合併や支店の開設などの可否が判断される。

森田:公共施設はかなり老朽化してきていて、更新の時期がきていますよね。人口が減ってきている地域では、すべてを更新する予算がない。するとどうするか。例えば村に3つの橋があったら、1つはしっかり建て直して、2つは落とすという決断をしなければいけないわけです。3つとも残そうとすると……。

木下:少ない予算を3分の1ずつ配分して、結果全部の橋が落ちることになりますね。前回お話しした北九州市は、まさにそういう状況です。10年前に比べて施設整備、維持予算がほぼ半減以下。そうすると、老朽化したものをそのままにしていて天井が落ちるなど、実際にいろんな問題が出てきています。

森田:毛沢東が「何事かをなすためには、金がないこと、無名であること、若いことが必要」という名言を残しているそうです。まあ、これは当時そういう人がたくさんいたから、できるだけ多くの人をエンカレッジするにはいい台詞だったのでしょう(笑)。でも真理だと思いますね。このなかでも「若い」というのは、ある限られた時期しかない。今の選挙制度だと都市部のお年寄りの票が一番大きい力を持ちますが、若者の力をもっと生かさないと革命は起こらないですよね。若者を支援する政策をもっと推進していく必要があると思います。

森田 朗(もりた・あきら)国立社会保障・人口問題研究所 所長

続きを読む

著者記事一覧

もっと見る

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

企業や官公庁の幹部のメールボックスの内容が、まるごと数十万〜数百万円で売られている事例もある。

名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官