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山本 一郎(やまもと・いちろう)

個人投資家、作家

山本 一郎

1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

パラシュート無き落下の日本学 首都圏の今後

不幸の連鎖、男性の3人に1人「生涯未婚」時代

2017年4月4日(火)

 結婚相手の紹介に関する諸政策については、自治体や道府県が主体となって進められている事業が中心である。東京都では都が主催する「TOKYO 縁結日2017」が行われたが、あくまでイベントであって婚活・結婚支援サービスは市区町村レベルでの対応が主になっている。もちろん、政策で奨励し「結婚しなさい」「ハードルを下げなさい」と言い、結婚するカップルに助成金を出す仕組みを取ったところで、人生の一大事である結婚に数十万円程度のお祝い金を動機にするほうがおかしい。数十万もらえるから結婚しようという男女がいるだろうか。必然的に、政策面での後押しよりも、結婚しやすい社会環境を心理的にどのように醸成するかが求められている。そしてそれは、もっとも政策を考える議員や公務員の方々が苦手とする分野であることに相違はなく、必然的に、人生の将来に危機意識を持つような後押しを世論として形成する以外ないのだろう。

都市も老いる…その未来に対する壮絶な絶望

 一方、事後(アフター)の問題は切実なものになる。今後、2030年に向けて1,800万人の未婚男女が社会的に孤立し、首都圏だけで500万人前後が独居老人になっていく予測となるならば、大きな社会変動の受け皿として公共や地域が受け持たなければならない役割は重大になっていく。つまり、人間と同じように都市も「老いる」。老い対策のために、若い人の活力をといっても、増え続ける高齢者の社会保障費を若い世代に担わせておきながら、さらに活力を持て、夫婦共働きで頑張れ、子供はたくさん生めといってもなかなか上手くはいかないだろう。

 必然的に、独居かどうかは別として高齢者は高齢者同士集住し、お互いを支えあう形での政策的アプローチを採用していくしか方法はないが、基本的に高齢者の意向を聞くとどの調査でも過半は「いま住んでいる居宅に住み続けたい」という傾向が大多数を占める。他方、東京都の場合は持ち家比率は50%前後と全国平均よりも低く借家住まいが多いうえに、今後10年ほどで30万人ほど増えるであろう現在40代から50代の独身男女は、徐々に親世代の死去とともに独居世帯になって、60代を迎え始める。その過半は引き続き働き続けるものの、すでに所得のピークは過ぎており、現状の地価水準では暮らせなくなる低所得者から順に家賃の安い郊外へと転居をしていく可能性がある。2030年に向けての日本人の独身の理由は「結婚資金が乏しく経済的に不安」「相応しい相手が見つからない」である以上、形を変えた貧困問題であるだけでなく、未来に対する壮絶な不安感、絶望が横たわっているといっても過言ではないのだ。

積極的な都市開発ではなく、縮小前提の政策を

 そうなると、東京都では湾岸地域を中心に都内のファミリー世帯が流入し激増する一方、低所得の独身世帯が郊外へとシフトしていくことになる。東京都は、これから稼ぐ若者世帯の集積化に対応しなければならない一方、充分に暮らせない高齢者対策を同時に行うという難易度の高い都市開発を行っていかなければならないことを意味する。また、埼玉、神奈川、千葉の三県は、東京都をドーナツの中心としたベッドタウン、郊外型経済が縮小すると、過疎化し猛烈に地価の下落に見舞われる外縁部の再編を余儀なくされるであろう。

 今後増えていく独身世帯を抑えきれなければ、独身世帯の高齢化がもたらす社会事情に対して政策的に解決していかなければならない。そうなると、むしろ必要となるのは積極的な都市開発ではなく、この地域には居住すると不利になるという地域を指定して、住むことに適した地域に安定した縮小前提の政策を考えるほかない。

 この人口の急激な減少と日本の社会システムの抜本的な見直しが必要な件については、首都圏が抱える構造的な問題と、それに伴う「東京一極集中批判」が論議の中心となっている。未来の首都圏を見据えるうえで重要なこの議論について、次回は首都圏の人口未来図から読み解く政策論を考えたい。

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