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久米 泰介(くめ・たいすけ)

翻訳家 マスキュリスト(男性人権論者)

久米 泰介

1986年、愛知県生まれ。関西大学社会学部卒、ウィスコンシンスタウト大学人間発達家族学MS(修士)取得。専門は社会心理学、男性のジェンダー、父親の育児。翻訳書にワレン・ファレル著『男性権力の神話』

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

見えない男性差別 ~生きづらさの理由

母系社会がはらむ、語られない男性差別

2015年7月3日(金)

 パトリアキー、マトリアキーという言葉を聞いたことがあるだろうか。

 パトリアキーの日本語訳は「家父長制」だが、この訳では言葉の持つ相対的な意味が掴み取れない。patriarchy という言葉はmatriachyの対義語であり、相対的な概念である。

 簡単に言えば、パトリアキーは名の通り父親が権力を持つ社会、マトリアキーは母親が権力を持つ社会を表す。父親は男性なので男性支配、マトリアキーは母親が女性なので女性支配という意味に訳されることもある。

 このパトリアキーは、フェミニズム側が「社会は男性が権力を握っており、被害者は女性で男性は加害者」という絶対的根拠にしているものだ。patri-archy matri-archyで“archy”は「支配体制」である。

パパ(papa)⇔ママ(mama)
パタニティ<父性>(paternity)⇔マタニティ<母性>(maternity)
パトリアキー(patriarchy)⇔マトリアキー(matriarchy)
<家父長制、父権制、男性支配、父系社会>⇔<家母長制、母権制、女性支配、母系社会>

 という相対的な概念である。

 パトリアキーとマトリアキーを対称的にとらえないと、すべての性差別が「女性差別」の言説に組み込まれ、「男性差別」が存在しないということが起こる。言葉というのは認識するためにきわめて重要である。

 マスキュリズムは、過去のすべての社会がパトリアキー(父親が家庭、社会において権力を持っていた)であったということに疑問を提示するところから始まっている。というのは、どんな社会においても、戦争に行って死ぬのは男性であり、一方、子育てにおいて子どもへの影響力は母親の方が強いからだ。男性は被害者として認識されにくく、その声も聞かれづらく、男性は女性を保護するために使い捨てられる。

 さらに不思議なのは、人文系の中の定説になっているマトリアキー優位理論だ。過去、人類社会は母系社会、母性支配でユートピアだった。しかし、文明が確立するにつれて父系社会に変貌して、男性が有利な女性差別社会になった。今こそ、母系優位社会を取り戻そう、という言説である。

 ここで語られないのは、父系社会が女性差別的なら、母系社会は男性差別的なのではないのか、ということである。

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