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上武 康亮(うえたけ・こうすけ)

米エール大学経営大学院助教授

上武 康亮

1982年東京生まれ。東京大学大学院経済学研究科修士課程卒業後、米ノースウェスタン大学より経済学博士号(Ph.D.)取得。2013年から現職。専門は計量マーケティングと産業と組織の経済学(産業組織論)。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

「気鋭の論点」

混雑時に売れ筋以外を「オススメ」すると売り上げが落ちる?

2015年4月8日(水)

 「ビッグデータ」や「データサイエンス」という言葉がちまたにあふれるようになり早数年がたつ。読者の多くも、ビッグデータやデータサイエンスをテーマにした雑誌や書物を一度は手にした、または購入した経験があるのではないだろうか。

 筆者は米国のビジネススクールでMBA(経営学修士)の学生たちにマーケティングマネジャーのためのデータサイエンス入門を教えているが、学生たちの間でも、マーケティングの分野で生きていくにはデータサイエンスを理解することは必須の条件となっている。

 彼らは必ずしも、高度な統計技術を駆使するデータサイエンティストになるわけではないが、データサイエンティストたちときちんと意思疎通ができ、有効にビジネスのために活用する能力はこれからの企業のマーケティングマネジャーたちにとって欠かせない能力になってくるであろう。

パターン思考が間違った結論につながる恐れも

 ビッグデータが重要なトレンドであることに疑いの余地はないが、ちまたのビッグデータに関する言説を見ていると、若干の不安を感じることも事実である。テレビやネットに流れるビッグデータに関する記事を読むと、何百万という消費者行動のデータから機械学習などの統計的テクニックがデータに隠された秘密のパターン(風が吹けば桶屋が儲かる、といった)を浮かび上がらせる、というような話が多いように思われるが、それはビッグデータの持つ可能性のほんの一部でしかない。

 もちろん、新たなパターンを見つけることはとても重要だが、それと同等かそれ以上に、その背後にある理由、因果関係を理解することが、実際に意思決定をするマネジャーにとって重要である。しかし、たくさんのデータを集め、そのようなパターンに統計的な意味があるのかないのか判別できるようにはなっても、一概にはその背後にある理由までは明らかにしてはくれない。極端な場合、そのようなパターンに基づいた意思決定が間違った結論を導いてしまう可能性もあるのである。

ビッグデータはフィールド実験をより容易にする

 そのようなデータの背後にある因果関係を特定するための有効な手段の一つが、フィールド実験と呼ばれる手法である。

 実験と言うと少し大げさに聞こえるが、簡単に言えば、消費者を適切にいくつかのグループに分け(例えば誕生日が偶数日の消費者と奇数日の消費者)、1つのグループにはあるマーケティング戦略を実行し、別のグループにはしないことで、2つのグループの差がその戦略の本当の有効性について教えてくれる、といった手法である。適切な方法で消費者をグループに分けることで、本当に知りたい因果関係以外の説明を排除することができるのである。

 そのような実験を効果的に行うことは(たくさんの消費者を必要とするため)、実施するための費用がかかり過ぎることや実験デザインの不完全さにより長い間難しかったが、ビッグデータのもたらす大規模データと統計ソフトの普及、また経済学におけるフィールド実験デザインに関する研究の進歩によって、問題は劇的に改善されつつある。

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