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五十嵐 洋介(いがらし・ようすけ)

英エクセター大学経営大学院経済学講師

五十嵐 洋介

東京大学経済学部卒業、同大学院修士課程修了。2012年、米ペンシルバニア州立大学でPh.D.取得。専攻はマクロ経済学、ファイナンス。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

「気鋭の論点」

「コネ採用」は制限されるべきか?

2015年6月17日(水)

 経済学者が創造する架空の世界を「モデル」という。実際の経済で政策をあれこれ実験すると国民に迷惑がかかるので、政策担当者はモデルといういわば「実験室」で税率を変えたり、規制を変えたりして、政策の効果をシミュレーションする。経済学者はモデルの予測力を上げるためにデータを用いてその妥当性を検証し、必要あれば改良する。

 モデルの中には、現実を模してたくさんの消費者や企業が存在する。政策が変わると彼らも自分の得になるように行動を変え、その結果異なる均衡状態が生じる。政策担当者は少なくともモデルの中において最も効果的な政策が何か見極められるというわけだ。

 筆者の最近の研究もやはり政策の効果を簡単なモデルを使ってシミュレートするものだ。政策の標的はずばり「コネ」。親戚や大学の先輩を頼って企業に就職したというような話を読者の方も聞くことがあるだろう。そういったコネの存在が格差社会の温存の一因になっているという議論は米国でも以前からある。筆者の研究の問いは、「コネを通じた採用を禁止/制限すれば、コネを持たない人の厚生は向上するか」どうか、である。

コネ禁止政策が、コネなし組にもデメリット

 結論は、コネの禁止政策がコネのない人に常にプラスになるとは限らず、場合によってはマイナスになる可能性がある、というものだ。そんなバカな、と思う人がいるかもしれない。例えば毎年10人雇う企業があったとして、この企業はうち5人を現従業員の友達や学校の後輩など、いわゆる「コネ」で採用し、残りの5人だけを正規のルートで採用しているとしよう。

 ある日「コネ」採用を制限する法律が実施されたとする(例えば企業は採用に際して最低1カ月間は求人情報をおおやけにしなければならない、求人1件当たり最低4人は時間をかけて面接しなければならない、人種、出身地、出身校などに関してバランスよく採用しなければならない、コネ採用の疑いがある場合は訴えることができる、など)。

 そのような法律ができれば、企業にとってコネ採用のうま味が減り、代わりに正規ルートによる採用が促進され、コネを持たない人の道が広がる、というように感じるかもしれない。

 そのように感じるのは、10個なら10個という決まった数の仕事の口があって、コネのある人とない人がそれを取り合いしている、というイメージがあるからだ。しかし話はそう単純ではなく、実際の経済では他にも様々な要因が絡み合っているから、コネ採用禁止後もこの企業が毎年10人雇えるとは限らない。

 つまり、労働市場の様々な要因を同時に考慮して政策の総合的な影響を予測する必要がある。そのための強力な経済学モデルが、近年マクロ的労働経済学の基本的な枠組みになっているサーチ・モデル(Search Model)だ。

 サーチ・モデルは、 新古典派のモデルと一線を画し、単純な賃金調整によって労働の需給が均衡するとは仮定しない。むしろ均衡においてすら 労働の過需要(求人)と過供給(失業)が併存し続けると考える。理由は「労働者」や「企業」とひとことに言ってもその中身は千差万別であり、しかもお互いの中身が見えにくいため、両者がベスト・パートナーを見つけてマッチングするのには多分に時間がかかるからだ。これを労働市場の摩擦(Friction)という。

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牛島 信 弁護士