環境問題でつまづいた街を環境で再生

 今年は例年になく大量の黄砂が中国から飛んできたとのこと。中国では工場からの排出物質によるスモッグや飲料用水の汚染など公害問題が深刻になっています。その中国が注目するのが公害の街から蘇った「水俣」です。
 日本人は高度経済成長時代と聞くと「明日は今日より豊かになる」といった希望やノスタルジーを抱くと同時に、「水俣」に代表される公害などへの原罪意識が頭をもたげます。いきおい、報道もその発想から抜け出せず、今の水俣の真実を十分に描き切れていない。バラバラになった地域の紐帯を築き直し、汚れた海を元に戻し環境都市として生まれ変わり、未来の地球人に自信を持ってその地を返す。水俣発・地球再生計画――。血のにじむような奮闘を追ったのが今号の特集です。

 ゴールデンウイークを迎える中でお届けする今号のコンセプトは「緑陰思索」。比較文明論者の梅棹忠夫さんのインタビューを含め、読者の皆さんが来し方、行く末に思いを馳せる材料にしていただければ幸いです。おくつろぎ中の自宅で、あるいは旅行先で…。どうぞ、お楽しみください。

(編集長)

■特集

 「水俣に何かあるの?」。この数カ月、出張から帰ってくると決まって、同僚や知人にこう尋ねられました。多くの人にとって、水俣病と水俣は歴史の教科書の中の終わった話。今さら何を書くのか、と思ったのでしょう。かく言う私も、数カ月前までは同じように考えていましたけど。

 ところが、実際に訪れて見たのは現在進行形の水俣でした。

 患者への補償や認定基準の見直しなど、解決されていない課題は山積しています。患者や支援団体に対する反発も残っており、市民すべてが一枚岩になっているとは言えません。ただ、環境やコミュニティーの再生に取り組む水俣は日本の未来図。「負の遺産をコンテンツに」というコンセプトで動く吉永利夫氏らの活動に、私は水俣の未来を見ました。

(篠原 匡)

■第2特集

 日本の生体認証の技術は、世界的に見ても高いレベルにあります。例えば、松下電器産業や沖電気工業の虹彩認証装置は海外の製品に比べてかなり小型化されています。静脈認証の技術を持つメーカーは、世界でも富士通と日立製作所以外には数えるほどしかありません。これらの背景には、生体認証の精度を左右するパターン照合技術や光学技術を、日本のメーカーが長年かけて培ってきたことがあります。

 にもかかわらず、日本は他の先進国に比べて生体認証の普及が遅れ気味です。生体情報の取り扱いに関する社会的な基盤が整っていないからです。生体認証は世界的にも、社会インフラとして定着し始めています。生体情報はセキュリティーを守る鍵になるのと同時に、機微な個人情報でもあるため、国が主体となって利用環境を整えていく必要があると考えます。

(中島 募)

 2007年4月30日号より

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