人は過去からどれだけ学べるか…

 内外の政治・経済情勢は激動の兆しを見せています。安倍晋三首相の突然の辞意表明は衆参両院のねじれの中で、与党再編を呼ぶ政局入りの号砲です。米国の低所得者向け住宅ローンの焦げつきに端を発した世界の金融・証券市場の動揺は続き、「リスクの全体像が分からない」不安が実体経済に影を落とす。大統領選を控え「貧富の差」をただす米民主党には追い風です。
 「北京五輪まで世界経済は盤石」と楽観してきた企業経営者にとって、不透明要因は増す一方。舵取りの巧拙が今後の命運を左右するでしょう。羅針盤役を目指す本誌は10月に創刊38周年を迎えます。激動の今、創刊記念号を待たずに「活路を拓く」をテーマに重点特集を始めます。第1弾は「出でよ!骨太社員」。小器用な秀才型では難局を突破できない。秀逸なビジネスモデルは偏屈な社員が編み出すかもしれない。そんなメッセージを込めます。
 新連載としてお届けする「世界共震」の最初のシリーズは「危機に備えはあるか」。ブラックマンデーから20年、アジア通貨危機から10年。人は過去からどれだけ学べるか・・・。

(編集長)

■特集

 「若い時の苦労は買ってでもしろ」。30代も後半に入った今、その言葉の意味を噛み締めています。どんな嫌な仕事でもそこから得られることはある。歯を食いしばって耐えた経験が次の仕事につながる。そう確信できるからこそ、会社を転々とする若い世代に小言の1つでも言いたくなります。「石の上にも3年」だよと。
 特集の取材班では、会社の求心力と遠心力について議論を重ねました。まともに育てずに成果ばかりを求めれば、“薄っぺらな”社員が増殖する。そんな会社の求心力が落ちるのは当たり前で、むしろやる気のある人材から遠心力が働くのは無理もありません。
 「今どきの若者は…」などと嘆く前にリーダーは自らの言動を顧みる必要があるのではないでしょうか。成長を実感できなければ、人は主体的に働くことはできません。

(坂田 亮太郎)

■第2特集

 大分県・姫島の朝8時。漁を終えた船が小さな港に戻ってきました。下りてきたのは老夫婦。どれほどの漁だったかを尋ねると、奥さんは笑顔で「これ!」と手に持った青いバケツを差し出しました。
 中に入っていたのは体を反らせて銀色に輝くアジ3尾。早朝海に出て、「2人で食べるしこ(分)釣ってきたと」と言うのです。夫婦は船をもやうと、自転車にまたがり、仲良く並んで家路に就きました。
 離島が置かれた状況は厳しいものです。「今年のお盆は帰らんじゃった」。都会に住む娘や息子たちを思って、島のおばあさんはこぼします。それでも、朝釣ったアジを夕食の膳に並べる島の暮らしには、都会にはない豊かさを感じます。東京のスーパーで魚を買う者の羨望です。

(飯村 かおり)

 2007年9月24日号より

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