株式を公開する意義とは・・・

 米国の自動車大手3社「ビッグスリー」の救済策を巡る米議会の紛糾が世界の株式市場の動揺を招いています。金融問題から実体経済に危機が及びつつあるのを如実に表す格好ですが、救済策には米国内で支持がなかなか高まってこない。強力な全米自動車労働組合(UAW)の長年の実績である高い賃金水準や社会保障に対し、国民の中には「税金で彼らを救う必要はない」といった厳しい視線が根強いようです。
 570億ドルもの債務超過にあえぐゼネラル・モーターズ(GM)は、2000年前後に90ドル台をつけた株価が今や1〜2ドル台。株式市場から退出を迫られている。誰もおいしいとこ取りはできない。株式市場から潤沢な資金を調達できた企業も、冷徹な市場の評価の下で、新たな資金調達はままならない。株式上場企業は崩落のツケも甘んじて受けなければならないのです。
 株式を公開する意義とは・・・。利点だけを享受できると思った企業は今、逆風の中で、「真の企業統治」の姿を自問させられます。

(編集長 佐藤 吉哉)

■特集

 欧州で何代も続く家族企業や個人銀行のオーナーに会いました。最も印象的だったのは、異口同音に「一族の資産の大半は株式投資に回す」と言っていたことです。短期の利益狙いではなく成長株を選んで長期に持つのです。そのリスクは喜んで取ると言います。資本主義を通じて産業を興し財を成した、「起業家一族の気概」のようなものをそこに感じました。投資を通じて後進の起業家を育てることに強い責任感を抱いているのです。
 彼ら全員が、証券化商品とは一切無縁だったのもうなずけます。カネがカネを生むだけの投資は、産業を担ってきた彼らの哲学とは相容れません。
 金融危機で株式市場は壊滅状態です。これでは新産業の育成など望むべくもありません。こんな時こそ「起業家の気概」を持つ新しい資金の出し手が求められています。

(磯山 友幸)

■連載

 連載「消費退国 ニッポンの流通」のタイトルカットにある年代もののレジスターはダイエー創業者、中内氏が収集し、現在は同氏が設立した流通科学大学に展示しています。中内氏がレジの響きを好きだったことは有名な話です。日本経済の発展と重なり合って成長したダイエー。店内に響くレジの音は、庶民が豊かさを実感する喜びの声に聞こえたに違いありません。
 連載1回目に登場した鹿児島のマキオのレジからは膨大な品揃えゆえに地域住民の生活の息吹と、少子・高齢化が急速に進む足音が聞こえてきます。
 1億総中流の時代から多彩な消費活動を行う成熟社会へと移り変わった今、レジから読み取るべき音は交錯し、共振します。これから一つひとつの音を拾い上げてニッポンの新しい流通の姿をお伝えしようと思います。

(田中 陽)

 2008年12月1日号より

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