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「TPPに乗り遅れれば二度とチャンスは来ない」

第4回 浦田秀次郎・早稲田大学大学院教授

2011年11月10日(木)

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日本のFTA(自由貿易協定)戦略の遅れに警鐘を鳴らし続けてきた早稲田大学大学院の浦田秀次郎教授。日本がTPP(環太平洋経済連携協定)参加を決断できなければ、「アジア太平洋地域の活力を取り込みつつ、この地域のキーマンとして振る舞うことができるという絶好のチャンスは二度と巡ってこない」と訴える。

――TPP参加を巡る議論はちょうど1年前にも沸騰した。

浦田:菅直人・前首相が昨年10月の所信表明演説でTPP参加を打ち上げ、「第3の開国を実現する」と意気込んだが、東日本大震災の発生もあり、今年6月としていた交渉参加の判断時期を先送りした。

 それ以降、政府の対応がストップしたままだったのに、またAPEC(アジア太平洋経済協力会議)が近づいたからと、大慌てで議論を進めようとし、産業界や農業界などを巻き込んで大騒動になっている。

 震災対応や首相交代など内政面に注力せざるを得ない面もあったのは確かだろう。が、それにしても、もっと計画的に調整作業や対策を進めることはできなかったのだろうか。失望を禁じ得ない。

――いまだに、TPP参加のメリット、デメリットを巡る論争が続いている。

浦田 秀次郎(うらた・しゅうじろう)
1950年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。スタンフォード大学で経済学博士号取得後、ブルッキングズ研究所研究員、世界銀行エコノミストを経て1994年から早稲田大学社会科学部教授。2005年より早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授。専門は国際経済学、開発経済学。
(写真:都築雅人)

浦田:経済規模からみて、実質的に日米FTAのようなもの、という指摘はある意味で正しい。従来のFTAで重視してきた関税撤廃・削減という観点からは、米国の関税率は既に低いため、日本からの輸出増という利益は少ないことが予想される。

 しかし、TPPはモノの貿易だけでなく、投資や人の移動など幅広い分野を含む協定になる。世界貿易機関(WTO)で定めたルールよりハイレベルな制度構築を進め、それがアジア太平洋地域の自由貿易圏構想であるFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)、そして、より広い世界的な経済制度の構築につなげていくという視点が重要だ。

 世界のビジネス環境をより好ましいものにしていくプロセスであり、自由貿易の恩恵を最も享受してきた日本がその作業に積極的に加わり、応分の責任を果たしていくのは当然だろう。

 また、米国がTPPを推進している大きな目的の1つが、中国対策だ。アジア太平洋地域での主導権争いという意味合いももちろんあるが、ビジネス面に関して言えば、将来の中国のTPP参加や、FTAAPへのプロセスをにらみ、このアジア太平洋地域に透明で公正な市場を作り上げ、中国企業にそれに適合した行動を取るよう求めるという狙いがある。これは当然、日本企業にとっても大きなメリットとなる。

 目先の損得勘定だけでなく、こうした大きな絵を、日本政府が打ち出していくべきなのだが…。

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「「TPPに乗り遅れれば二度とチャンスは来ない」」の著者

安藤 毅

安藤 毅(あんどう・たけし)

日経ビジネス編集委員

日本経済新聞社で経済部、政治部などを経て2010年4月から日経ビジネス記者。2012年4月から現職。政治、経済政策を中心に執筆している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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