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TPPなしでは韓国に負ける

第7回 石川幸一・亜細亜大学アジア研究所教授

  • 市村 孝二巳

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2011年11月15日(火)

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 円高・ウォン安の流れに加え、韓国が米国、EU(欧州連合)とのFTA(自由貿易協定)を結んだことで、米欧市場における日本企業の競争条件は韓国企業に大きく劣後することになった。ヒュンダイ、サムスン電子などに奪われつつある市場を取り戻すためには、日本のTPP(環太平洋経済連携協定)参加は必要不可欠であると主張するのが、石川幸一・亜細亜大学アジア研究所教授だ。

 TPP反対派は安い外国製品が流入してくることの脅威ばかりを強調するが、将来アジア太平洋全域に広がる「ドミノ効果」が期待されるTPPに入れば、アジアの成長市場の参入障壁を下げる効果は大きいと指摘する。

石川 幸一(いしかわ・こういち)
東京外国語大学外国語学部卒。日本貿易振興機構主任調査研究員などを経て、2005年から現職。日本貿易振興機構客員研究員、国際貿易投資研究所客員研究員などを兼務。専門はASEAN(東南アジア諸国連合)の経済発展、東アジアの地域統合。主な著書は、『東アジアの地域協力と経済・通貨統合』、『日本通商政策論』(いずれも共著)など。
(写真:清水盟貴)

 日本のFTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)戦略で問題なのは、EU(欧州連合)、米国とFTAを結んだ韓国に大きく劣後しているということだ。日本の自動車、電機産業にとってヒュンダイ、サムスン電子のような韓国企業は最大のライバルである。円高・ウォン安の影響も大きく、日本企業は韓国との競争に負けつつある。そこでさらにFTAでも負けてしまうのは問題だ。

 当面の課題として、米国、EUという大きな市場で、日韓の競争力の差をなくし、日本製品が韓国製品に負けないようにする政策が必要だ。TPP反対論者は、TPPに入っても輸出は伸びないと主張しているが、もしTPPに入らなければ、韓国に奪われてしまう市場を奪われないようにすることが必要だ。


EU、中国、韓国も日本との交渉に積極的

 TPP(環太平洋経済連携協定)に日本が取り組んでいくことで、EU(欧州連合)、中国、韓国が日本とのEPA交渉に積極的になってきたという副次的な効果も出てきている。TPP交渉に参加することが、これまでなかなか進まなかった他のFTA、EPAを推進する要因にもなるのだ。

 TPP交渉と平行して、日・EU、日中韓のEPA交渉にも臨むことだ。特に中国のような新興国、途上国では、知的財産権や投資を保護するルールが十分整っていない場合が多い。中国の国営企業との競争条件が不利にならないようにすることなど、重要な項目はたくさんある。

 輸出面ではプラスになる。米国、オーストラリアと日本はEPAを結んでいない。ASEAN(東南アジア諸国連合)とのEPAでは例外品目が多く、自由化率は80%台にとどまっている。日本はコメなど農産品、相手国は鉄鋼など工業製品を例外としており、関税がなくなれば当然輸出は伸びる。

 反対論者は、日本に外国企業や外国製品が入ってくることばかり考えているが、TPPに入れば、日本からの輸出のアクセスが良くなる。日本から農産品を輸出しようとしても、東南アジアの新興国には意外と高い関税障壁が残っている。中国・ASEANのFTAでは、タイはコメを関税撤廃の例外品目としている。慶應義塾大学の渡邊頼純教授によると、タイのスーパーでも日本のイチゴを売っているそうだ。アジアの新興国市場の開拓余地は大きい。

 さらにWTO(世界貿易機関)の政府調達協定(GPA)に加盟しているのは、TPP交渉参加9カ国のうち、米国とシンガポールだけだ。他の7カ国でのインフラ事業などの政府調達に日本企業が入札できる機会が増える。金融、通信、小売などのサービス分野でも、日本企業の参入機会が広がるだろう。

 反対派はTPPではなく、2国間のFTAを推進すべきだと主張するが、日米FTAのほうが日本にとっては厳しい交渉になるだろう。9カ国を相手とするTPP交渉なら出てこない2国間だけの問題、例えば保険や郵便貯金の問題を出してくる可能性はある。

 しかし、米国にも弱みがある。米国の内国海運は、1920年商船法(ジョーンズ法)によって、(1)米国内の造船所で建造された、(2)米国籍の、(3)米国民所有で、(4)米国人船員の乗り組む船舶――にしか認められていない。これが外国船舶の輸入、参入障壁になっている。韓国はFTA交渉でこの点を突いて、米国にコメの例外措置を認めさせたようだ。日本政府にもこうしたしたたかな交渉戦術が求められる。

 貿易救済措置も日本に有利な面が大きい。米韓FTAには、反ダンピング(不当廉売)関税の事前通知・協議制度の規定が入っている。これをTPPにも入れれば、米国が反ダンピング関税を乱発することを牽制するのにも役立つ。

TPPはFTAAPに発展する

 TPPは、FTAAP(アジア太平洋自由貿易協定)に発展していくと思う。カナダは一旦交渉参加を断られたが、ラオス、台湾、フィリピンは参加に前向きだ。既に米韓FTAを結んだ韓国も、その気になればすぐ入れる。参加国が増えると、ドミノ効果が働いて次々に参加国が広がっていくだろう。

 中国も真剣に考えている。現時点では知的財産権や投資などの交渉分野を中心に、中国にとってハードルは高いが、絶対に中国が入らないとは言えない。中国は「君子豹変」の国。1972年、当時のリチャード・ニクソン米大統領が北京を電撃訪問し、毛沢東主席との間で国交を樹立したことを思い出せばいい。中国参加は想定外、とばかり考えていると、何が起きるかは分からない。日本では、中国とASEANのFTAなど絶対ないという見方が大半の中、2001年11月に中国とASEAN首脳はFTA創設で合意し、日本政府に衝撃を与えた。中国は戦略的な 思考と決定ができる国だ。

 日本がTPPに入らず、アジア太平洋の参加国が広がってFTAAPになり、それから入るのでは、日本にとって不利になる。その頃には協定の枠組みがすでに固まっていて、交渉の余地はない。

 今後はアジアの新興国やオーストラリアのような資源国が世界経済を牽引していくのは確実だ。そうした国々の活力を活用していくためには、日本はこれまでよりも、もっと緊密に連携していく必要がある。

 TPPはアジア太平洋のルール作りだ。これができれば、WTOにも取り込まれて世界のルールに発展する可能性もある。だからいま交渉に加わり、日本にとってプラスになるような仕組みを入れさせたり、日本から見てマイナスになるような要素は入れさせないことが重要だ。

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