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コメの逆襲はTPPから始まる

第8回 本間正義・東京大学大学院農学生命科学研究科教授

  • 市村 孝二巳

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2011年11月16日(水)

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 日本のコメなど農産物の重要品目は高い関税に守られ、グローバル化が遅れ、農業構造改革を怠ってきた。農業の衰退に歯止めをかけるには、今こそTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加を契機に、世界の市場を視野に納めた農業再生、復興を始める時だ、と説くのが、本間正義・東京大学教授だ。
 TPPは、各国がルールや制度を共通化することにより、資源ナショナリズムのように自国の利益だけを追求する行為を抑制し、有限な地球の資源をいかに有効活用していくかを交渉する場にもなり得るという。
本間正義氏略歴
 1974年帯広畜産大学畜産学部卒、1976年東京大学大学院農学系研究科修士課程修了、1982年米アイオワ州立大学大学院経済学研究科博士課程修了(Ph.D)。東京都立大学経済学部助手、小樽商科大学商学部助教授、同教授、成蹊大学経済学部教授を経て、2003年から現職。主な著書は『農業問題の政治経済学』『現代日本農業の政策過程』など。
(写真:的野 弘路)

 農業経済を専門とする立場から、TPP(環太平洋経済連携協定)をどう考えるかをお話ししたい。世の中では、まるでTPPが降ってわいたかような議論のされ方をしているが、決してそうではない。日本はこれまで2国間のFTA(自由貿易協定)ばかり結んできて、なかなか思うような成果が上がっていない。特にこれまでに結んだFTAが例外の多い、言ってみれば質の悪いFTAで、本来のFTAが持つ底力を発揮していないことが根底にある。

TPPの本質は競争条件の共通化

 FTAで関税障壁を撤廃することも必要だが、世界経済は関税を超えて、制度、ルール、規律の共通化にステップアップしていく方向に動いている。TPPかそれ以外の協定か、賛成か反対かという議論だけで終わってしまっては、世界の流れが見えてこない。TPP問題の本質はグローバル化が関税の削減・撤廃にとどまらず、経済活動の競争条件の共通化を目指すところにある。そのために、参加に当たっては農業のみならず、日本経済のあり方そのものが問われている。

 TPPは一般には新しい枠組みの形に見えるかもしれないが、実はそうではなく、FTAの第2段階であり、TPPで止まるわけではなく、その先により大きなグローバル化がある。

 TPPに反対する方々は、ASEAN(東南アジア諸国連合)に日中韓を加えたASEANプラス3ならいい、さらにオーストラリア、ニュージーランド、インドをASEANプラス6ならいい、という。TPPでなければ緩やかな自由化ですむという淡い期待があるようだが、そうではない。TPPであろうが、ASEANプラス3であろうが、プラス6であろうが、最終的に向かうグローバル化の方向は同じだ。いわゆる資源ナショナリズムのように、自国の利益だけを追求するのではなく、ルールや制度の共通化を踏まえて有限な地球の資源をどうやって有効活用していくか。そういう方向付けをする交渉なのだということを強く認識していかなければならない。そういう視点からTPPを捉えるべきだ。

グローバル化の波は繰り返す

 従って、仮にTPP参加を今回回避したとしても、グローバル化への圧力の波は繰り返しやってくる。対症療法ではなく、根本的な問題解決に向けた対策を議論しなければならない。これまで日本の農業は国産品の市場を国内に限定し、関税削減による輸入品の増加が食料自給率の低下をもたらすという悪循環に陥っていた。しかし、今日の農産物の世界市場は同じ種類の商品でも輸入もすれば輸出もできるという機会にあふれている。

 とはいえ、TPP参加のためにクリアしなればならない最大の問題は農業である。言い換えれば、グローバル化の進展が一番遅れている分野が農業であり、これまでの市場開放要求とは異なる対応が迫られている。食料自給率が40%を切る中、我々の食生活は確かにグローバル化が進んでいると見ることもできるが、コメをはじめとする重要品目が高関税に守られ、国内農業はグローバル化対応を遅らせてきた。

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